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133話 封印作業とそれぞれの休暇

 新しく発見されたダンジョンに調査が入り、調査の結果、正式にA級ダンジョンだと認められた。


 その後、冒険者組合からA級ダンジョンの入口を封印する為の緊急クエストが発令された。

 この緊急クエストは多くの冒険者や特殊なスキル持ちが高賃金で駆り出される。

 緊急クエストに参加すれば短期間でそれなりの大金が手に入る。

 その為、毎回募集人数よりも多くの冒険者が参加を希望するので、参加者は抽選で決められていた。

 ちなみにA級ダンジョンは一年に一度の割合で出現している。

 封印工事はA級以上のダンジョンが出現するたびに実施されるので、作業に慣れている冒険者も多い。

 また、経験がある冒険者は賃金が優遇されていたりもするので、リピーターが多いのも特徴だった。

 そこまで優遇される理由として、もし繁殖期までに完成しなかった場合、繁殖期が過ぎ去った後、街一つが地図から消滅している可能性もあるからだ。

 多くの人命がかかっているので、冒険者組合や作業に従事する冒険者達も真剣に仕事に取組んでいた。

 そんな理由で、冒険者がA級ダンジョンにアタックを行えるのは封印が終わった後からだ。

 


◇ ◇ ◇



 オラトリオのギルドホームにメンバー全員が集められていた。

 A級ダンジョンが出現した情報はメンバー全員が知っているだろう。

 しかし俺の口からはまだ話していない。

 俺はA級ダンジョンが出現した事と、オラトリオがA級ダンジョン攻略に挑戦する事をメンバーに伝えた。


「いよいよA級ダンジョンか~ 楽しみだぜ」


「ダン君、いよいよって言いますが、オラトリオが結成して一年位しか経っていないのですよ。何年たってもA級ダンジョンへ挑戦出来ないギルドも多いと言うのに、これはもの凄い偉業って解っていますか?」


「だって俺、オラトリオ以外のギルドなんて殆ど知らないし」


「お前達、俺の話はまだ話は終わっていないぞ。その話は俺の話が終わった後で頼む」


 ダンとリンドバーグの会話はまだまだ続きそうだったが、強制的に中断させる。


「全員よく聞いてくれ! A級ダンジョンの封印工事が終わるまでは休暇とする! 何処のダンジョンにも潜らないから自由に過ごしてくれ」


「えっ、休暇ですか!?」


 流石のリンドバーグも驚いた様子だ。

 A級ダンジョンに挑む場合、備品や食料などを大量に用意する必要がある。

 なので予想と違って、突然休暇と言われて面を食らった感じだった。

 しかし俺はアイテムや素材を日々管理しており、在庫は十分残っているのでアイテム購入などの準備時間は必要ない。


「そうだ。A級ダンジョンのアタックが始まれば長期間ダンジョンに潜る事となる。だから今のうちにゆっくり休んで英気を養って欲しいんだ」


 俺やアリスそれにリンドバーグも大丈夫だと思うが、若い二人は経験も乏しく、長期間ダンジョンに潜る事になれていない。

 一応、B級ダンジョンを攻略した時、二週間はダンジョンに潜り続けたがA級ダンジョンの場合だと、最低一カ月間はダンジョンに潜る事となるだろう。

 それだけ長い期間ダンジョンの中に居るとやはりストレスが溜まり、不調を訴える冒険者も出たりもする。

 なので今の内にストレスを発散してもらい、俺は全員を万全な状態にしておきたかった。


「急に休みが出来たけど、別にやる事ね~んだけど」


 ダンが面白く無さそうに愚痴をこぼしていた。


「私はどうしよう。それじゃ、エリーナちゃんと買い物でも行こうかな?」


「リオンちゃんは買い物か~ 私はどうしようかな~ 私も買いたい物があるけど、一緒に買い物に行ってくれる人も居ないし……」


 アリスがチラチラとこちらを見てくる。


(もしかして俺に付いてきて欲しいとか? 確かに買い物なら穴場も知っているから、それなりのアドバイスも出来るけど…… 悪い! 今回は駄目なんだ)


 俺は視線に気づきながら、窓の方に視線を向けた。


「アリスねーちゃん、買い物行きたいの? 俺が付いて行ってやろうか?」


「いい! 一人でいく。ダンくんを連れまわしてたら私が保護者になっちゃうもん」


 アリスはガックリと肩を落としていた。


「それでは私はA級ダンジョンの準備でもしておきましょうか。気になるアイテムを見つけたので!」


「ほぅ、新アイテムか!? どんなアイテムか興味があるな」


「それはまだ秘密です。実はA級ダンジョンには何度か挑んでいるのですが、力及ばず攻略するまでには至っていません。このメンバーとなら攻略出来る可能性は高いと思いますので、やる気も出ますね」


 冷静沈着が売りのリンドバーグが、珍しい事にやる気を見せている。

 金、名誉、レア素材など、ダンジョンに挑めば手に入る物も多い。

 それに高難易度のダンジョンにアタックを仕掛ける事は、冒険者にとって心躍るものでもあった。


「それでラベルさんは休暇中、何するの?」


 ダンが俺の予定を聞いてきた。

 俺にも予定がある。

 特に隠すつもりもないし、別に話しても構わないだろう。


「俺はダンジョンの封印の手伝いで、冒険者組合から呼ばれているんだよ」


「はぁ~ ダンジョンの封印の手伝い?」


「実はダンジョンの封印工事は昔から毎回参加していてだな。冒険者組合からも管理者枠で参加するように指名依頼が入っているんだよ」


「ラベルさんって、本当に何処にでも顔を出すよな?」


「ぶっ!!」


 ダンの突っ込みにリンドバーグが噴き出している。


「仕方ないだろ? 若いころは生活費が欲しかったから、金目的で参加してただけだ。それで毎年やってたらいつの間にか一番経験が長くなってしまってだな…… とにかくだ! 俺はダンジョンの封印作業に行くから、みんなはちゃんと休めよ」


「へーい。でも本当に俺どうしようかな?」


「うん、それじゃ私はエリーナちゃんの所に顔を出そうかな」


「わかりました」


「はい……」


 こうしてそれぞれの休暇が始まった。

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