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ブラッドツインズ〜薔薇の印に捧ぐセレナーデ〜  作者: キイロ 林檎
序曲✣始まりの狂想曲
6/11

♪ 05 突然の来客

『ブラッドツインズ〜薔薇の印に捧ぐセレナーデ〜』を訪問頂きありがとうございます



やっと…序曲後半に突入いたします


長い背景説明にお付き合い頂いた方はありがとうございます

引き続きお付き合いいただければ嬉しいです


ヒロインの過去の話もいよいよ大詰めでございます

双子のうちの1人が登場いたしますのでよければキースとヒースのどちらか予想してみてください



祖母の姉が遺した楽譜ノートを誕生日プレゼントに祖母に貰ってからというもの私は、祖母の姉が残した情熱的でありながら切なさの入り交じる狂想曲に魅了された。


一刻も早く弾けるようになりたくて毎日、学校とピアノ教室以外は殆ど一日中邸のロビーの白いグランドピアノに噛り付いて何とか習得しようと躍起になっていた。


楽譜を追いながら1音ずつ情景を思い描きながら奏でる。


激しい転調を繰り返す情熱と切なさが絶妙に入り交じる狂想曲の世界を表現するのは困難で、満足のいく演奏が出来るようになるのには今まで以上に時間が掛かった。











「ローズが弾いてるのかと思ったよ…… ありえないのは分かっているのに」







邸のロビーでいつものように、何とか形になった狂想曲の世界を表現しようと演奏に夢中になっていると、背後から低く呟く様な知らない声がした。


不意打ちの来客に狂想曲の世界から現実に引き戻された私は頭が真っ白になり、続きを演奏する事が出来ずに鍵盤を奏でる指が止まった。


ローズとは祖母の姉の事だろうか。


祖母から貰った楽譜ノートの表紙裏の端には“ローズ”と金文字で名前が彫られていた。







「折角魅力的な旋律だったのに止めてしまうなんて勿体ないなぁ」






呑気な間延びした声が、深呼吸をして何とか集中を取り戻そうとする私の神経を乱す。


それでも何とか演奏を再開させようと鍵盤へと指を伸ばそうとする。


狂想曲の世界に意識を戻したくても魅力的な旋律だと言われた事で

背後に立つ客人の事を余計に意識してしまい、鍵盤に触れる事が出来ない






「邪魔してしまったのなら謝るよ」






ピアノの前で固まっている私は、情けない事に背後に立ち困ったような声音でバチの悪そうに謝る客人の方に振り向く事も、返事を返す事も出来ずにいた。







「マリーやすまないね」








祖母はピアノの前で固まる私と、困ったように立ち尽くす客人を交互に見て状況を察したのか申し訳なそうに謝った。







「近いうちに訪ねるとは聞いていたのだけど…… まさか…… 今日来るとは思わなくてね」








「リリーお婆さんの知り合いなの? 」









母が祖母の事をリリーと呼ぶのを聞いてから、尊敬と親しみを込めてリリーお婆さんと呼ぶようになった私は、客人が知り合いの様な言い方をするリリーお婆さんに尋ねた。







「ギルバート氏だよ。姉の知り合いだったらしくてその縁でね」







リリーお婆さんは私の問いにギルバート氏と呼ぶ客人の方を視線で示しながらそう答えた。


私は始めてピアノの鍵盤から背後に立つ客人へと視線を移した。


視線の先には蒼白い肌のすらっとした背の高い、黒いパーカーを着た男が立っていた。



パーカーのフードからはクセのあるシルバーブロンドの猫っ毛が覗いていた。


歳の頃は18から19だろうか。


フードを被っていても、成年とも青年ともつかない目鼻立ちの整った容姿からは色気が漂い、それでいてどこか、陰を感じさせる。






「孫のマリーだよ」





ラピスラズリの様な瑠璃色の瞳を見開くギルバート氏に、リリーお婆さんは私の事を紹介した。



瑠璃色の瞳に見つめられ、頬が染まるのを感じた私は、恥ずかしさから楽譜へと視線を逸らした。







「間の悪い時に来てしまったね。また日を改めて…… 」










「なに気にする事はないさマリーは少しシャイなところがあってね。それに、ピアノを弾いていたところに急にギルバート殿が現れたものだからね…… 」








気まずそうに玄関扉へと向かおうとするギルバート氏に、リリーお婆さんは、私がピアノを弾いている時だったのでタイミングが少しばかり悪かっただけだと微笑んだ。

序曲(5)を最後までお読み頂いた方はありがとうございます







想定ではヒロインの背景を語る過去の話は2~3話のつもりだったのですが

書いているうちにどんどん膨らんでしまったため次回まで続きますが

引き続きお付き合い頂ければ嬉しいです


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