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ブラッドツインズ〜薔薇の印に捧ぐセレナーデ〜  作者: キイロ 林檎
第一楽章✣双子のシンフォニー
10/11

♪ 01 新たな出会い

『ブラッドツインズ〜薔薇の印に捧ぐセレナーデ〜』を訪問頂きありがとうございます




お待たせいたしました。いよいよ物語が動き出す第一楽章の開演です!!


新キャラも登場いたします




引き続きお付き合い頂ければ幸いでございます

春の暖かな陽気に包まれて褐色の石造りの建物は太陽の光で照らされている。


集まった男女は皆、色鮮やかなスーツやワンピースを身に纏い、胸には薔薇の形を象った白い造花のブローチが輝いていた。


私もこの日の為に誂えた袖の部分がレースの黒いワンピースを身に纏い、茶色がかかった髪はアップにしている。


私は左胸に輝く白い薔薇のブローチを見ると口元が緩みそうになるのをぐっと堪えた。


リリーお婆さんが通った憧れの音楽大学に今日から私も通うのだ。


憧れの大学で学べる事に、嬉しい半面、信じられない気持ちもまだ半分ある。


この大学の為に全てを掛けて来たのだ。現実であって欲しい。







「……痛い」







私は、夢では無い事を確かめようと、こっそり自分の頬をつねってみた。


それに薔薇の形を象った白い造花のブローチは夢が叶った何よりの証だ。


夢に見た大学の構内に私のアドレナリンは最高潮に達していた。


玄関ホールは繊細な細工が施されたステンドグラスに囲まれ、上階へと続く階段の手すりにはランタンが等間隔に並んでいる。






色とりどりにおめかしした人々の波を掻き分けながら玄関ホールの奥に続く廊下へと歩を進めば同じくステンドグラスのはめ込まれた壁が続いている。



ステンドグラスの続く壁の反対側に視線を移すと芝生の生い茂る広大な中庭が広がっていた。


中庭の中央には太陽の光を受けて煌めく噴水がある。


トランペットを持った天使の象が立つ中央の噴水には何やら人集りが出来ていた。






「おっと…… ソーーリーー」






中庭の人集りに気を取られていると誰かの背中に当たってしまったらしく日本語の混ざった謝罪の言葉が耳を翳めた。


日本人留学生なのだろうかと声のした方を振り向いてみたが声の主は既に人混みの中に消えてしまったようだった。


声の主を探すのは諦めて中庭へと足を一歩踏み入れようとしたが、足下に何やら白い物が落ちている事に気が付き足を止めた。


危うく踏みそうになった白い物を拾い、持ち上げてみる。


白い物の正体は自身が左胸に付けているのと同じ造花のブローチだった。


先程ぶつかった時の衝撃で落ちてしまったのだろう。


白い造花のブローチを身に着けていたという事は、日本人留学生らしき声の主は私と同じ新入生と言うことか……


新入生の印であるブローチが無ければ困るのではないのではないだろうか。


もしかしたらまだ近くにいるかもしれないと思い、中庭の芝生へと足を1歩踏み入れる。


中庭に集まる人混みの中からブローチの落とし主を探すのは大変だった。


それでも私はブローチを落として困っている新入生はいないかと中庭を見渡してみる。


人集りの出来た中央の噴水に視線を移すと噴水の前で数人の男女が、噴水の前に集まった白薔薇のブローチを身に着けた人々にビラを配っていた。


噴水前で配っているビラに興味を持った新入生達が人集りをつくっていたのだ。


ビラ配りをしている背の高いモデル体型の女性が日本人留学生らしきベージュのスーツの小柄な女性となにやら会話しているのが聞こえてきた。







風鈴(かりん)。ブローチはどうしたの?」






ビラを配っていた女性はベージュのスーツの女性の胸のあたりを視線で指し示しながら日本語で伝えた。







「あっ……あれ? 」







ベージュのスーツの女性はビラ配りの女性に指摘されてからブローチが無い事に気がつき慌てふためいた。



ブローチを落としたのはこの女性だろうか?








「あの…… 」









「貴方もオーディションに興味があるのかな? 」







ビラ配りの女性は恐る恐る声を掛けた私の方を振り向くと微笑んでビラを1枚渡そうとした。







「オーディション!? ……じゃなくて……その…… 」








ビラ配りの女性の言うオーディションに一瞬、気を取られたが、直ぐにブローチを落とし主に届けに来た事を思い出す。

私は、ビラを受け取る代わりにブローチを握っていた左手を開いて、ベージュのスーツの女性に見えるように女性が落としたであろう白薔薇のブローチを見せた。







「私のブローチ!! 拾ってくれたの? ありがとう」







ベージュのスーツの女性は私の左手に乗った白薔薇のブローチを見るとお礼を伝えてにっこりしてみせた。








「わざわざブローチを届けに来てくれたのね。ありがとう」







ビラ配りの女性も左手のブローチを見るとお礼の言葉を述べた。








「君も新入生なんだ。あたしは、城乃風鈴(しろのかりん)。同じく新入生だよ。よろしく」








ベージュのスーツの女性は私の左胸の白薔薇のブローチに気がつくと明るくフランクな自己紹介をした。







「私は……二ノ瀬茉里(にのせまり)です。よろしくお願います」







城乃さんのフランクな自己紹介に戸惑いながらも私はなるべく丁寧な自己紹介を返した。





第一楽章(1)に最後までお付き合い頂きありがとうございます



茉里の大学生活が始まりました


これから先、大学生活でいったいどんな出会いが待っているのでしょうか





第一楽章も引き続きお付き合いいただければ幸いでございます






※音大の作者独自のイメージや、設定によるもので実在のウィーンの音楽大とはなんら関係ありません


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