宝
俺たちは「ウネビ号」の中に入っていった。
「しかし、みれば見るほど変わった船だな。中も鉄でできているぞ」
俺は壁を叩いて確認する。普通船といえば木でできているのに、この船は何を考えて鉄なんかでつくったんだろう。
そんなことを思いながら手分けして調べてみると「資料室」と書かれた部屋があった。
「ここはボクに任せて。本の山だぁ。やったあ」
アリルは嬉々として本を開く。
中には、たくさんの本が棚に納められており、端にある机の上には、一冊の日記があり、「航海日誌」と書かれている。
「読んでみよう」
その中には、驚くべきことが書いてあった。
どうやら、この船「ウネビ-畝傍」号は異世界のフランスという国で作られた軍艦らしい。日本という国への引渡しの途中、台風に巻き込まれて気がついたらこの世界に来ていたと書かれていた。
「ふーん。艦長のピエール・カルダンとその配下の日本人はその後商人になって、世界を又に駆けて活躍したんだな」
俺は膨大な取引記録を確認する。帆がなくても進める「水蒸気機関」というものを搭載したこの船は世界中を旅し、各地と取引した。それは地内海だけにとどまらず、今ではまったく交流が途絶えている東方のムガル国や和漢国、西方の幻の大陸についても詳細な地図と共に特産品が載せられていた。
「これはとんでもないお宝だぞ。その情報だけでどれだけ商売が有利になるかわからない。でも、俺たちに動かせるんだろうか」
そう不安になっていると、アリルが船の設計図を見つけた。
「ドライ兄。どうやらこれに詳しく動かし方が書いているみたい」
アリルによると、「水蒸気機関」とは水を蒸発させるときに発生する蒸気の力をオールをこぐ力に転換するようなものらしい。
「わかるか?」
「うーん。なんとか理解できるんだけど、問題は燃料となる石炭だね。この島にはそんなものはないからね」
それを聞いて俺はがっかりする。
「まあ、なんとか探してみるよ」
落ち込む俺を、アリルは肩を叩いて慰めてくれた。
「ここは任せるよ」
俺はアリルに言い置いて、ほかの部屋を回ってみる。
すると、船倉からブツブツとつぶやく声が聞こえてきた。
「うふふ……武器がいっぱい」
危ない発言をしているのは、メイだった。その部屋は武器庫らしく、先に剣がついた筒みたいなものでいっぱいだった。
「なんだこりゃ。剣の一種なのか?でも持ちにくいな。これをもって振り回しても敵は倒せないだろう」
俺がそう漏らすと、メイはちょっと威張っていった。
「ふふん。何も知らないのね。これは「銃」っていうのよ。先についている剣はオマケ」
「銃って?」
そんな武器聞いたことないぞ。
「村には住み着いたヤポン人がもっていた銃が一丁だけ伝わっているわ。危ないからここぞと言う時以外つかっちゃだめっていわれているけどね」
メイはそういいながら、説明してくれた。
「この「弾薬」をこめて引き金を引いたら、筒から玉が出て敵をやっつけるの。弓の何倍も威力があるのよ」
そういいながら筒を構えて俺に向ける。
「おい。危ないだろ」
「平気よ。弾を入れてないから。でも幸せ!村には弾薬があとちょっとしか残ってないからって、打たせてもらえなかったの。でもここにはこんなにあるー!」
そういって幸せそうにあたりを見渡す。部屋には銃という筒だけではなく、弾が入った箱が何十箱もあった。
「そ、そうか」
俺は危ない目をするメイがこわくなり、そそくさと退散するのだった。
「うーん。情報と武器かぁ。確かに大事なもんなんだけど、もっと商売の元手になるようなものがあると思っていたんだがな。金貨とか財宝とか」
キャプテン・ピエールは莫大な財宝をもっていたと聞くけど、銅貨一枚も見当たらない。
財宝を探してうろついていると、船倉部屋にたどりついた。
「わあ!すごい。こんな宝があったなんて!」
中からそんな声が聞こえてくる。
俺が期待をもって部屋に入ると、白い透明な石をもってニコニコしているウードさんがいた。
「それってなんですか?」
「魔力をためておける「魔石」ね」
魔石だって?そんなの聞いたこともないぞ?
「なんでも西方にある幻の大陸に住む、闇の一族が特別な方法でつくりだす石みたいよ。魔力さえこめておけば魔法を継続して使うことができるし、何度も繰り返し使えるから貴重なものなの。うちの村では井戸水の浄化とかに使っているわ」
マジか?それ本当にお宝じゃん。
「じゃあ、それを売り飛ばせば」
「ええ、高値で売れるでしょうね」
ウードさんはそういって、にっこりと笑った。