退治
さて、なんとかするといったが、これからどうするか。
とりあえず、懐柔してみようか。
「カカオスープが入った樽を用意してくれ」
たちまちスープで満たされた樽が用意され、俺はこぼれないように慎重に紐をつかって城壁の外に降ろす。
『ゴブリンたちよ。カカオをやるから、おとなしく帰れ」
「プギャー!」
俺が交渉しようとすると、ゴブリンたちは聞く耳を持たずに奇声を上げてカカオスープに群がる。それは俺たちに話しかけてきたボスゴブリンも同様だった。
「まったく。これじゃあ交渉もできないな」
「所詮はモンスターですから」
俺たちが呆れながら見ていると、スープを飲んだゴブリンたちは酔っ払ったみたいにフラフラしはじめた。
「なにやっているんだ?」
「ゴブリンたちにとってはカカオは酒のような効果があるのです。それを飲んだので、ああなったのでは?」
ロッテの言葉を聴いた俺は、ゴブリンを効果的に殲滅できる方法を思いついた。
「そうか。なら、もっとカカオスープの樽を用意してくれ」
俺の命令により、10個の樽が用意された。
「ドライ。これからどうするの?」
俺の隣では、メイが不安そうにしている。
『大丈夫だ。この樽に、「気化魔法」をこめた魔石をいれて」
弱い気化魔法を掛けた石を入れると、ジュワーという音とともに樽かせ茶色い霧が吹き上がる。
「よし。風向きを計算して、城壁の外に降ろせ」
慎重に降ろされた樽に、ゴブリンたちが歓喜の声をあげながら群がる。
樽から噴出した茶色い霧は、あっという間にゴブリンたちの群れを覆っていった。
『フニャー」
茶色い霧に取り巻かれたゴブリンたちは、情けない声をあげてその場にへたりこむ。
「よし、今だ!」
俺の命令により城門が開かれ、100本のカットラスを装備したロッテの配下の戦士たちがゴブリンたちに襲い掛かる。
酔っ払ったゴブリンたちは、ろくに抵抗できず倒されていき、城壁の外はゴブリンたちの死体で埋まるのだった。
「ギギ……ウンバ……」
仲間を殺されたボスゴブリンが、真っ赤な顔で巨大な棍棒を振っている。
戦士たちは当たるのを恐れて、攻めあぐねていた。
「よし。最後は俺に任せろ」
俺はおいしい所をもっていこうと、前に出てその大きく開いた口に魔石を放り込んだ。
「スチームエクスプロージョン!」
次の瞬間、ボスゴブリンの体が何倍にも膨れ上がって、ついには破裂してしまう。
「ボスゴブリンを倒した!勇者だ!」
俺はここでも勇者として祭り上げられてしまうのだった。




