カカオ
「金貨……ですか?それはなんですか?」
「えっ?」
意外な言葉を聴いて、俺は二の句がつげなくなる。
「えっと……金貨とは、なんにでも交換できる物の価値の基準となるものです」
「ああ、あれのことですか」
ロッテは納得した顔になって、控えていた侍女に何事かつぶやく。
しばらくして戻ってきた侍女が下げていた籠には、茶色い植物の種みたいなものがたくさん入っていた。
「これは?」
「カカオというものです。これを煎じて飲めば、たちまち元気になれる効果があります。我がガーナでは、これを物々交換の基準物にしております」
ロッテはそういって、茶色のスープみたいな液体がはいった器を差し出した。
「一杯どうぞ」
「どうぞって……」
まさか毒じゃないだろうな。不安に思って隣にいたウードさんを見たら、魔法で鑑定してくれた。
「鑑定魔法『水鏡』えっと……ポリフェノールという血圧をさげる効果がある成分とか、ストレスを下げて精神的・肉体的に元気になる効果があるみたいね。少なくとも毒じゃないわよ」
「ふーん」
それを聞いて、俺は飲んでみる。苦い!だけど体の中から元気が沸いてきた気がする。なんだかムラムラするぞ。
「うふふ。媚薬効果もあるみたいね。どうする?鎮めてあげようか?」
ウードさんが色っぽく笑いかけてくる。ぜひお願いします。
「いたっ!」
それを見ていたメイにつねられてしまった。
「ドライ!」
「ご、ごめん。だけどこれは売れるかもしれないな」
「そうかなぁ。ボクには合わないみたい。苦すぎるよ」
同じようにカカオを飲んだアリルがしかめっ面していた。
「ふふ。お子様には合わないのかもね」
「なにおう!」
ウードさんにからかわれ、アリルはプンスカと怒ると、持っていた袋から砂糖を取り出した。
「いいもん。ボクは砂糖で割って飲むから。よし。たっぷりと入れて……なにこれ?すごく合う!」
アリルは砂糖を入れたカカオスープを喜んで飲み干している。
「砂糖……ですか?それはどういったものなのでしょう」
ロッテさんが首をかしげるので、俺は説明した。
「なんと。植物から作り出した甘くなる粉なのですか。北にはそのようなものが……」
興味を持ったロッテさんが砂糖入りカカオスープを飲むと、ふにゃりと表情がほころんだ。
「これはいいですね。こんな飲み方があるなんて始めて知りました」
ロッテと侍女たちは、俺たちが提供した砂糖を入れたカカオスープのおいしさにメロメロになっている。
しかし、一人だけ苦手そんな顔をしている少女がいた。
「そうかな。なんか私には合わないみたい。甘ったるいドロドロのスープがぬるぬるしていて、気持ち悪い」
そう顔をしかめていたメイは、何かに気づいたように俺の袖を引く。
「そうだ。このぬるぬるをどうにかしたら美味しくなるかも。ドライ、
気化魔法を使って水分を飛ばしてみて!」
メイがあまりにも必死に頼み込むので、俺もやってみる。
「えい。『気化』」
カカオスープが入った器に気化魔法をかけたら、茶色い塊ができた。
「おいしそう」
メイはスプーンですくって口に入れてみる。
「おいしい。クリームが口の中で溶けて、甘さを引き立てている。お菓子に最高!」
こうして、ガーナに特産品ができるのだった。




