水蒸気砲
「ど、どうするの?船がかじられている!」
どうしょうかな。ここで助けておけば、恩を売れてイシリス王国とつながりを持てるかもしれない。だけどこっちは戦闘力が未知の慣れない船だ。おまけに乗っているのは美味しそうな女の子ばかり。
「ドライ!これを使おう!」
この船で武器担当のメイが指差したのは、船首についている巨大な筒だった。
「これは?」
「アリルの「水蒸気機関」を応用したの。筒の中で水を一気に気化させて、その空気圧で鉄の玉を吐き出す武器よ」
メイが自信満々に語るが、そんな武器聞いたことないぞ。
「大丈夫なのか?」
「いいから。魔法をこめて!」
メイに怒られた俺は慌てて筒の後ろに取り付けられた魔石に気化魔法をこめる。
メイは筒の内部を水で満たすと、蓋を閉めて密封した。
「発射!」
ジュワーという音と共に一瞬で水が蒸発する。ドーンという音が響き渡り、筒から鉄の塊が発射される。
その弾は、前方を行くイシリス船を掠めて海面に落ち、大きな水柱を立てた。
「なにやっているんだ?当てるのは船じゃなくてギガントタートルだろ?」
「だまっていて!角度の調整が難しいのよ。何回か試射してコツをつかまないと!」
メイは必死に筒を操作している。
「よし。次こそあたれ!。発射!」
筒から放たれた弾は、今度はギガントタートルの甲羅にあたり、穴を開けた。
「ギュイイイ!」
ギガントタートルは、叫び声をあげて暴れる。
「よし。どんどんいけ!」
「簡単に言わないで!」
メイは苦情を言いながら打つが、ギガントタートルが暴れまわるので当てることができなかった。
そうしているうちに、タートルはこちらに狙いを定めてくる。
大きなトカゲのような首をもたげて、すごいスピードで襲い掛かってきた。
「きゃあーー!」
「怖い!」
ウンディーネ族の少女たちが悲鳴を上げる。ギガントタートルはその巨体でウネビ号に体当たりをした。
「きゃあ!」
衝撃でメイが跳ね飛ばされる。
「危ない」
俺はとっさにメイの体に飛びつくが、再び衝撃を受けて二人の体が宙に浮く。
ギガントタートルは大きな口を開け、俺たちを飲み込んでしまった。




