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20話 王女は、虹色魔法を目撃する

 父上のもとへ、魔道具が届けられました。

 王宮の入口に、丸い魔道具が空から降ってきて、「白猫族へ、告ぐ」と文字が刻まれていたそうです。


 しばらくすると、魔道具から、一方的な音声が送られてきました。


「白猫族は、西の地から出ていけ。出ていかない場合は、子猫がどうなっても知らない。

そして、次の管理人に、エステ公爵家を指名すること」


 聞き終えた白猫族たち、イーブとイーブの父上は顔を見合わせました。


「イーブ、セーラがどこに居るか想像つく?」

「高い確率で南のあそこだと思います、父上」

「そうだね、私も同意見。私はエルフ国に連絡するから、イーブは後でドワーフ西国に」

「了解しました」


 いきなり、そんな事を言い出すのです。もう、セーラの居場所が分かったように見えました。


 二人が不思議な言葉を口にすると、空中に虹色の光の輪が描かれました。

 輪の中に虹色の模様が走って、すぐに光は砕け散りました。

 砕け散った虹色のかけらはキラキラ光ります。とても綺麗でした。虹のかけらは集まって、薄いお皿のような形をとっていきます。

 光が収まるとイーブの手のひらくらいの大きさで、金属のようなものが現れました。鏡のようです。

 鏡を手にしたイーブの父上は、鏡に向かって話しかけます。


「エルフ国へ、フォーサイスのダニエルが通信する」

「これは、ダニエル王子? 緊急通信とは、如何しました?」

「獣人王国との同盟に従い、魔法を要請。フォーサイス王国南部、ルワール地方へ大規模閉鎖結界を展開してくれる?

フォーサイス国王の許可は貰ってるから。誘拐された娘が、そこに居るんだよね」

「セーラ王女が誘拐? 分かりました。

通信は聞いたな? 魔法の発動は? ……ご苦労。

結界を敷きました、ご武運を」

「ありがとう、恩に着るよ♪」


 え? セーラがルワール地方に居る?

 なんでそんなことが分かるのでしょう。

 わたくしが疑問に思っている間に、イーブの父上とエルフ国の通信は切れてしまいました。


「イーブ、こっちは完了。そっちも通信して」

「はい。ドワーフ西国の親分に、フォーサイスのイーブが通信する」

「お? どうした、白猫の坊主。緊急通信なんて、珍しいな」

「妹が連れ去られ、命の危機にさらされています。力を貸してください。

フォーサイス国王の許可は出ています」

「お嬢が!? 野郎共、箱舟に乗り込め!

聖獣の代理人を連れ去った悪党が居る。お嬢を取り戻すんだ!」

「親分、場所はフォーサイス南部ルワール地方です。エルフの閉鎖結界があるので、近くで待機しておいてください」

「任せておけ、一時間以内に着く。坊主、遅れるなよ!」

「……切れた。父上、さすがに一時間では、到着できないと思うのですが」

「ドワーフの最新式の箱舟なら、可能だよ。獣人王国からフォーサイスの王都まで、三十分で来れるみたいだしね。

もうすぐおじいさま……あー、獣人王国の先代国王の精鋭部隊が来るから、出発の準備しておこうか」

「ひいおじいさまが? 了解しました」


 わたくしが鏡を見ていると、鏡は虹色の光の粒に戻り、消えていきました。

 不思議に思っていると、父上が声を荒げました。


「ダニエル! 先代国王とは、どういうことだ!?」

「だって、セーラは獣人王国の王女だよ? めったに会えないから、おじいさまは猫可愛がりしてるもん。

王宮の全部隊動かすっていうから、少数精鋭でって言い含めるの、大変だったんだからね」

「それに今の声は、エルフ国の国王や、ドワーフ西国の国王だろう? なぜ、国王たちが動く!」

「エルフ国の王族は、白猫族の祖先のエルフの出里だよ? エルフの王族は、白猫族の親戚ね。

それからドワーフ西国の親分は、獣人王国の第二王女を娶ってるよ。つまり私のおじ上ね。

ドワーフたちは義理堅いから、困ったことがあれば、いつでも頼れって言ってくれたもん」

「君というやつは……そこまで、なりふり構わずするか?」

「うーん、これでも今回は協力要請を控えた方だよ。かなり気をつかったくらい。

その気になれば、エルフ国の魔法使いの半分や、魔法協会の知り合いたちを他の大陸から呼び寄せることもできるよ?

それに、ドワーフ連合国すべてへ、箱舟部隊の応援要請をすることも可能だしね。ね、抑えたでしょう?」

「あー、もう! ダニエル法務長官。人間の常識からすると、今回の君の協力要請は、考えにくい範囲だ!」

「あれ、そうなの?」

「三方の国王が動いたのだぞ? 我が国内のことなのに、フォーサイス国王の僕が動かないわけにはいかないだろう!」

「別にチャールズ国王は、動かなくていいよ。負担をかけないように、うちの親戚にしか協力要請してないし。

それにこの案は、近衛兵長殿の発案だったよね。発案の通り、行動したんだけど。これくらい想定してたんでしょう?」

「そうだったな、近衛兵長の案だったな。騎士団第三位の者の進言だ。無下にもできまい!」


 イーブの父上が、近衛兵長を振り返ります。父上も、緋色の瞳で、近衛兵長を睨んだようですわ。

 二人と視線の合った近衛兵長は、顔を青ざめさせ、思いっきり顔を横に振りました。


 わたくし、ここまで大事おおごとになるとは、思っておりませんでした。

 兄上を見ると、片目を閉じて見返してきます。それだけで、兄上の言いたいことがわかりました。


 猫は気まぐれで、何をしでかすかわからない。イーブもそうだけど、イーブの父上はもっとスケールがでかいな。


 兄上の意見に、わたくしも賛成です。

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