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16話 国王は、眠れる虎を観察する

 僕の幼馴染たちは、桁違いの頭脳を持っている。

 二人とも、宰相として、身近に置いておきたいほどに。


 だが、今の我が国の情勢では、難しい。

 人間以外の種族を排除しようとする、うつけ者が、権力の中枢に入り込んでいる。




 ヘンリー宰相からの通達で、臣下たちを謁見室に集めた。

 人外の種族である、猫耳の幼馴染は、王家の微笑みを浮かべて主張する。


「チャールズ国王、うちの娘のために、騎士団を動かして欲しいんだけど」

「簡単には、動かせん。騎士団を動かすとなれば、国民に説明が必要だ」

「えー、親友の頼みだよ?」

「親友としては、騎士団を動かしてやりたい。

だが、国王としては、私利私欲のために、騎士団を動かすわけにはいかぬ。ダニエル法務長官、分かって欲しい」

「んー、そっか。人間って、大義名分や建前がないと、動けないもんね。

獣人と違って、大変だね」


 文官や武官たちの集まる謁見室で、堂々と要求する猫耳の幼馴染。

 君も隣国の王子の肩書きを持っているのだから、僕の気持ちをくんで欲しい。


「じゃあ、今回は、私の知り合いや部下を動かす許可は、出してもらえる?

それから、フォーサイス国内を、その人たちが自由に捜索できる許可もね。

んで、誘拐犯たちは、私が裁く許可も欲しいんだけど」

「それくらいならば、親友のよしみで許可をしよう」

「おー、ありがとう! 持つべきものは頼れる親友だよね。

すぐに白猫族の契約書を作るから、署名してもらっていいかな?

ここに揃っている帯剣貴族と法服貴族全員にも、契約書を確認……」

「陛下、人間以外の種族を、この国に入れるつもりですか?

この者は、獣人。獣人王国の者を寄越すに決まっています」


 進言してきたのは、近衛兵長か。頭薄い年齢のくせに、居座りを頑張るからな。


「獣人王国の?」

「そうだ。獣人の軍勢を我が国にねじ込み、魔法で探すと言ってエルフ国の者を、人海戦術だと言ってドワーフ連合国の者も連れてくる。獣人王国との同盟を盾にな。

そして、我が国をしらみ潰しに探し、居場所を特定すれば、自分が裁くなどと言って、私刑に処すのだ!」

「おー、近衛兵長殿、頭いいね。そんな方法があったんだ!」

「ダニエル法務長官、気づいてなかったのか?」

「全然。四十才ちかくにもなったら、獣人王国のおじいさまを頼るなんて考え、浮かばないよ」


 これは、心の底から近衛兵長の案を、喜んでいるな。

 僕と話すときは、死んだように動かなかったしっぽが、舞いおどっているんだから。


 王宮勤めの者は、ダニエルの猫耳やしっぽの動きで、感情を把握できるらしい。

 獣人は単純だから分かりやすいと、近衛兵長がバカにしていた。


 違う。ダニエルは、猫獣人なんだ。猫かぶりが得意なんだ。

 見抜けぬような、うつけ者は、我が国には必要ない。


 しかし、今回は、本当に気づいてなかったようだ。


「私は法務省の部下たちと、魔法協会の知り合いの魔法使いに頼るつもりだったんだ。

それに私は法務長官として、法廷送りにする予定だったんだけどね」

「なんだと?」

「いやー、いい方法を聞いたよ♪

チャールズ国王、契約書に署名してよ。せっかくだから、近衛兵長の案を採用したい!」

「うむ、署名しよう。近衛兵長の案なら、早く解決できそうだな。

なんと言っても、騎士団第三位の出した案だ、他の者たちも異論はあるまい」


 近衛兵長は、騎士団長、副騎士団長に次ぐ地位。

 その者が出した案なのだ、誰も口出しできまい。


 ダニエルは切れ者のようで、大いに抜けている。

 名誉挽回の仕方が、型破りと言うか、人間離れしているだけだ。

 ……人間じゃないから、当然だが。


 着々と進む、白猫族の契約書の作成。

 獣人嫌いの他の武官が、近衛兵長を睨んでいるし、文官たちはあきれている。


 近衛兵長への風当たりは、しばらく強くなりそうだ。ピカピカ頭も、目前か。

 後進の騎士ためにも、さっさと、毛髪共々引退してくれ。

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