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12話 男爵令嬢は、色々と観察する 1

 元騎士団長の裁判は続きますの。内乱罪(ないらんざい)という、罪が追加になりましたわ。


 ですが、セーラ、眠たいのですわ。

 詳しい説明は、午後の元筆頭宮廷魔導師の裁判のときに、聞くことにしますの。


 眠たいのに、父上の大きな声がきこえますわ。


「裁判官たちに問う。今回の元騎士団長殿と元筆頭宮廷魔導師殿の行為をどう、お考えか?

世界中にフォーサイス王国の悪名が広がれば、現在から未来における損失は、いかほどになるとお考えか?

今回は分かりやすく、観光事業悪化や、王宮の騎士が辞職した場合の国益の損失についてと、仮定するが」


 父上によると、人の噂は早いから、観光事業に響いたり、騎士団長を恐れて王宮から良質な騎士が辞めてしまったりする可能性があると言うことらしいですの。


 父上は検察官として、裁判に挑んでいるようですの。

 ……今回は被害者ですわよね? 原告ですわよね?


「ほう? ずいぶんと甘い見通しだな」

「法務長官、今は原告ですよ。部下に仕事をさせてください」

「おっと、そうだった」

「検察官側には、今後五十年に渡る、見積もり額を提示する用意がある。フォーサイスの国王と宰相が試算した、資料をご覧いただこう」


 父上は、また部下に注意されましたの。カッコ良いけど、カッコ悪いですわ。


「兄上、観光事業悪化は、そんなに問題なのですか?

騎士が辞めてしまうのは、問題だと思いますが」

「ジャンヌ、説明しようか? まず観光事業が減れば、国家収入に影響が出る。 

国家収入が減れば、国王が国民へ還元すべき資金も減る。だから、大きな問題だ」


 シャルル王子さまとジャンヌお姫さまは、王族ですの。国の損失となれば、黙っていれないようですわ。

 でも、ジャンヌお姫さまの理解力を越えていたようで、悩んでおりますの。

 いつものように、セーラと兄上がお教えしますわ。

 きちんとお勉強を、済ませてから、お昼寝しますの。


「あにゃー、あにゃー、おひめちゃま、こまってまちゅの」

「うん? ジャンヌが? 目に見えない国益は難しいからな。

極論だが、例え話をあげようか?」

「ええ、お願いします」

「例えば、流行り病が出て、その原料を隣国から輸入しなければならないとしようか。資金がなければ、原料はたくさん輸入できない」

「ゆにゅーできなくては、やまいでたくさんのひとがちぬかのせーがありますのよ?

ゆにゅーするために、おねがいちても、ねだんをつりあげられれば、ししゅつがたくさんになって、もっとおかねがなくなりまちゅわ」

「セーラは、『原料が輸入できなくては、病でたくさんの人が亡くなる可能性がでる。

原料を買いたいとお願いしても、利益を求める隣国が値段を吊り上げれば、支出が増える』と言っている」

「益々国民へ還元すべき資金が無くなり、悪循環を生むのですね?」

「そーでちゅわ、おひめちゃま」


 お姫さまに、ご理解いただけたようですわね♪


「さすが、猫を被った虎の子供たちだ。まだ幼いのに、そこまで推測できるとは、末恐ろしいな」

「父様、白猫族は本当に頭が良いのですね」


 ひそひそ話が聞こえますわ。

 声がした方向を見れば、新しい騎士団長ですの。

 お隣に、ジャンヌ王女より年上の女の子がおりますわ。


「にゃ?」


 セーラが顔を向けると、思いっきり女の子と視線が合いましたわ。

 微笑んでくれたので、セーラも笑い返しましたの。


「本当に、子猫ちゃんはかわいいですね♪ 父様、私もあの子のように、かわいい妹が欲しいです!」

「イザベル、宰相の息子のようなことを言わないでくれ。さすがに、無理だ」

「わかっています、言ってみただけです。父様は頭の頂点の髪が無くなるくらい、年を取りましたから」

「イザベル、父様の心をえぐらないで欲しい」


 にゃ? 女の子と会話する途中で、騎士団長が胸を押さえましたわ。

 きっと、ご病気ですのね、母上に知らせませんと。


「はーえ、はーえ、びょうにんでちゅわ!」

「病人? マイケル騎士団長、胸が痛むのですか?」

「いえいえ、娘の言葉が心に突き刺さりまして」

「……子供は、ときに残酷ですからね。夫も、娘の言葉に反応して、同じことをしていますよ」

「ダニエル王子が? そうですか……王子も仲間なのですね」


 母上が話しかけると、騎士団長は治ったように見えますわ。

 でも、父上を見ておりますので、後で診察希望をしていますのね。


「騎士団長、そちらはご息女ですか?」

「はい、イザベルと言います。もうすぐ十五になるので、忠誠の儀を控えております。

今は、騎士見習いになるために、自分がつれ歩き、勉強をさせている途中です。イザベル、お目通りを」

「はい。獣人王国の王子妃殿下、イザベル・ワードと申します。お目にかかれて、光栄です」

「イザベル、この方はだな……」

「騎士団長、私は今はベイリー男爵家の者です。わかっていますね?」

「御意。出すぎた真似をして、申し訳ありません」

「イザベル嬢、私は『アニエス・ベイリー』です。

本日、あなたと知り合えたことを、聖獣様に感謝しましょう」


 母上は、そういって優雅に微笑みましたわ。セーラも、母上と一緒に笑いますの。

 王族足るもの、国民には笑顔で応えなさいと、母上はいつも言っておりますものね。


 ……結局セーラは、イザベル嬢のお膝をお借りして、お昼寝しましたの。

 午後の裁判傍聴は、頑張りますわよ!

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