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NO MAKE!

 断章一〇〇記念!! 掟破りの番外編!!

『一人を愛すると言うことは、一人を殺すことと同じくらい残酷だ』

『愛は地球なんか救えない』『螻蛄だって水黽だって、みんなみんな死んでいく』

 二階堂千恵は自由ヶ丘利人をかく語りき!!

 

 募金活動と聴くと、私には思い出す光景がある。

 あの日がもう何年前だったかは正確には覚えていないのだけれど、詰襟の制服を着た自由ヶ丘利人が、私の編んだマフラーを首に巻いていたのだから高校生の冬だったのは間違いがない。十年一昔と言うやつだろか? つい昨日の様でいて、凄く昔のことにも思える。

 自分で作っておいてなんだけど、あんな真っ赤な正義の味方みたいな色をしたマフラーを、利人は文句も言わずに良く巻いてくれた物だ。『格好に無頓着なだけだ』と興味無さそうに答える彼の仏頂面が自然と浮かんでくる。アレで、利人は利人なりに優しいオトコノコだったのだろうと、思わなくもない。

 お話しをする前に、自由ヶ丘利人と言う人間の人となりを説明する必要があるのか? と自問すれば、絶対に必要だと自答するべきだろう。勿論、利人と言う人間の解釈はそれぞれ個人によって大なり小なり変わってしまうので、彼を聖人と説明するのも、反逆者と説明するのも、突き詰めてしまえば意味がない。だけど初めて食べる料理を前に『これって美味しいの? どんな味?』と思わず質問してしまう子に答えるように、世間一般の平均的な人間の感覚で答えておくのは決して無駄なことではないと思う。

 そんなことを言ったら、『平均って残酷だよな。普通の基準なのに半数はそこにすら届かない』なんて利人は言うだろう。つまり、利人はそんな人間だ。達観していると言うか、厭世していると言うか、諦観しているというか、世間一般と言う視点とは違う価値観を持っており、それを愛しているのだ。そこに他人の介入する余地はなく、善悪の決着も必要ない。天上天下唯我独創なんて言うのはどうだろうか? 思いつきの割には中々に上手いことを言えていると思う。思わない?

 まあ、要するに利人の人格は控えめに表現するならば『ユニーク』だ。他人に迎合しないそのスタンスは真の意味で個性的で、故に利人を理解するのは難しい。多分、生まれる時代が違っていたら、反逆罪で即縛り首だったと思う。自由と平等の二十一世紀日本に生まれたことを、利人はもっと感謝するべきだろう。

 きっと、私の意見に利人は、ニーチェの言葉を引用してこう返す。

「『狂気は個人にあっては稀なことである。しかし集団・民族・時代にあっては通例である』」

 利人は、自分が間違っているとは決して思わない。

 もし仮に利人が間違っていたとしても、利人は更に続けてこう言うだろう。

「『私は間違っているが、世間はもっと間違っている』」

 と。これはヒトラーだったっけ? うーん。自信がない。

 さて。私に利人のことを語らせたら、右に出る者はそうそういないと自負をしている。従って、まだまだまだまだ利人のことは語り足りないし、この程度のことで利人のことを理解できたと思われるのは大変に遺憾ではあるのだけれども、前置きとしてはこの程度で十分だろう。

 テレビの画面では、芸能人が募金箱を持って煩いことを叫んでいる。興味のないテレビ番組から意識を切り離して、私はあの時のことを思い出す。




 私の記憶が確かであるのならば、あの日は土曜日の午後だったはずだ。午前中で授業は終わり、午後からの自由時間を利人との制服デートに費やしたのだから、ほぼほぼ間違いはないだろう。

 当時の私は私立の女子高生で、同い年の利人は有名な進学校の男子高校生をやっていた。二人はいわゆる幼馴染の間柄で、一緒にいるのが当たり前で、特に疑問もなく私達は男女交際をしていたように思う。告白とかした覚えもされた覚えもないと言うと、大抵の友達は首を傾げていたっけ。

 同じ市内に私の通う女子高も、利人の通う進学校もあったのだけれど、その位置は結構離れていて、私達が放課後に待ち合わせをする場合、大抵は最寄りの駅が集合場所になっていた。別に中間地点と言うわけではなかったけど、家に帰るにせよ、何処かに寄るにせよ電車を使わないということはありえないので、無難な集合地点だ。

 もっとも、利人の学校からは徒歩で一〇分もかからない距離にあるのに対して、女子高はバスで三〇分もかかるのだから、優れた集合場所と言うわけでもなかった。授業終了の時刻や、移動の時間を考えると、利人は最低でも二〇分は駅前で私を待つ必要があるのだ。

 利人はいつも、駅前のカフェのオープンテラス(あくまで風のテラスで、ガラスの壁で囲われているので普通に空調が効いている)でコーヒーを啜りながら私を待っていて、真っ赤なマフラーはバスに乗っていても遠くから良く目立った。

 その日も、利人は文庫本を読みながらテラスで私を待っていた。私を探すようなことはせず、ただじっと、私が声をかけるのを待つ利人の姿は訓練されたドーベルマンを想像させる。訓練されたドーベルマンなんて、私は未だに見たことがないけれど。

「うっす! 待った?」

 テラスに乗り込み、殆ど利人の特等席みたいなテーブルに合い席する。ちなみに、利人の外観はドーベルマンと言う比喩が割と当て嵌まっているだろう。整っているには整っているのだが、見た目に近づき難い鋭さがある。『ああ、きっとこいつは簡単に人を制圧することが出来る暴力を秘めているんだな』と、一目で感じさせる。

 ドーベルマンと言うより、猟犬なのかな? まあ、猟犬も見たことはないけれども。

「ん? 千恵か」

 文庫本から視線だけを外して私を一瞥すると、溜息を吐きながら利人は本を閉じた。そして通学用の鞄に本をしまうと、肩を竦めて「『時無駄にするなと時計怒らん』」とシェイクスピアを引用した。何故だか、本の表紙をよく覚えている。黒色に浮かびあがるような白色の不気味な絵の表紙。ラヴクラフト全集だ。利人は良く本を読んでいたけど、小説を読んでいるのは割と珍しい。

「取りあえず、何か頼めよ」

 本の事を話題にするよりも早く、利人は机の上のメニューを広げた。広げるまでもなく、私はレディースセットで、利人は本日のパスタセットを選ぶことは殆ど決定事項なのだけど、このやり取りも恒例だった。

 私達はやっぱりいつもと同じメニューを店員に告げると、料理が運ばれて来るまでの間、適当なお喋りに興じた。大抵は私が何かを話して、それに対して利人が意見をすると言う形の会話だったけど、極稀に利人が読んでいる本に対する意見や、最近起きた事件や社会情勢の事について説明をしてくれた。

 この日は――そうだ、どうして宇宙が広がっていることに気がつけたのかを説明して貰った気がする。科学の授業中に先生が『宇宙は広がり続けている。裕次郎が強くなり続けるように』と言い始めて、誰かが『どうしてそんなことがわかったんです?』と訊ねた結果、先生が答えられなかったからだ。

 利人は当然のように発見した人が誰であって、どのような理論がそこにあったのかを簡単な言葉で説明してくれたが、もう少しも覚えていない。だって、どうでもいいし。

 さて。利人が光の波長がどうのこうのと説明するのを聞きながら、私は店の外が騒々しくなっていることに気がついた。元々駅前と言うこともあって人通りは割と激しかったのだが、その流れが若干滞っていたのだ。

 少し観察してみれば、その正体と言うか原因はすぐにわかった。テラスの前の通りに四人の人間が並びながら何かを叫んでいるのだ。四十代と思われる男女二組は両手で箱を持って、ノボリを背負って何かを必死に主張している。

 なんだろう? と、私が更に注意を向けると、

「おい。聞いてる?」

 利人が面倒臭そうに訊ねた。

「っと。ごめんごめん。でもさ――」

「いや。『でも』じゃなくてお前が訊ねて来たんだからな?」

「ごめんって。でもさ、外。なんだか騒がしくない?」

「ん? ああ。そうだな」

 私の視線の先を、利人は興味なさそうに追った。そしてノボリに書かれた文字を呟く。

「『募金』」

「へ?」

「肺の病気の赤ん坊の移植に必要なアメリカでの手術代を、あいつらは募っているんだ」

 目を凝らせば、確かに募金の文字が読み取れた。年中本を読んだり勉強したりしている癖に、利人は私よりもずっと目が良かった。遺伝だろうか?

 それにしても、ノボリには肺の病気ともアメリカで手術を行うとも書かれてはいないのに、どうしてそこまでわかるんだろうか?

「あの子供の名前に覚えがある。三ヶ月くらい前にテレビで少しやっていた」

 どうして三か月前に少しテレビで見た程度の子供の名前を覚えているのだろうか? 正直、利人の記憶力は気持ちが悪い。過去の年月日を言うと、利人は三秒も待たずにその日が何曜日だったかを言えると言う特技があるのだが、私の友達とのカラオケでそれを披露してドン引きされていた。だって、関ヶ原の合戦の曜日を言えるって、ありえないでしょ。って言うか、戦国時代に曜日とかあったの? 金曜日とか言ってたけど、本当かよ。

「へえ。何円位必要なわけ?」

「約一億、だそうだ」

「円だよね?」

「一億ドルの手術って何をするんだよ。震災地でも復興させるつもりかよ」

「いや、一億円も震災地の復興レベルの規模だと思うけど」

 テラスにいた他のお客達も募金活動に気がついたようで、静かなカフェが少しざわつく。と、言うのもこのカフェは高校生でなくとも利用するにはお高い値段のお店で、いわゆる贅沢に値する雰囲気がある。

 女子高生如きが二三〇〇円のレディースセットを喰う金があったら、赤ん坊の命の為に金を出せよ! と言う無言の圧力を感じてしまうのは私が小心者だろうか? 勿論。店の前の通路に立っているだけであって、メインは道を歩く人達に呼び掛けているに違いない。だが、一度そう思ってしまうと、そうとしか思えなくなるのが人情だ。

 上品な雰囲気のマダムや、エリートそうなカップル達がひそひそと募金をするべきか相談している声が聞こえてくるので、そう思っているのは私だけでないのは確かだけど。

「しかし図々しい話だよな」

 そして勿論、私の利人はそんな圧力は感じない。頬杖を突いて空になったコーヒーカップのふちを指先でなぞりながらとんでもないことを言い始めた。

「金持っている奴は、不幸で恵まれない人間に寄付すべきとでも言いたいのか? それの何処が平等なんだ? 何が公平なんだ? 嗚呼。飯が不味くなる」

 うん。平常運転で安心する。利人はこう言う奴なのだ。

 物事を一般的な善悪で考えない。自分の幸福であるか否かが、利人にとっての善悪の基準だ。漫画で言うと、主人公達の感情論の叫びと共に負ける悪役タイプである。多分、やられてスカッとするタイプだ。

「そう言うことを言うのをやめなよ。敵を作るだけだよ?」

「足を引っ張ったり、外野から煩かったりするのは敵じゃあない。邪魔と言う。敵って言うのは、自らを引き上げてくれる存在のことだ。俺の敵に値する奴なんて……まあ、結構いるか」

「敵がいる高校生って一体なんなの!?」

「いや、友達なんだけどな。今度紹介しようか? 滅茶苦茶性格の悪い頭の良いやつと、滅茶苦茶性根の悪い美術部員なんだけど」

 友達がいたのか! と私は結構な衝撃をこの時に受けたが、それを口にしない分別は持ち合わせている。そして、利人の友達(敵?)になれる奴なんて出来れば会いたくない。しかも、性格が悪い奴と、性根が悪い奴しかいないじゃん! 友達だか敵だかのことを私から話題にするのは止めようと決意もした。

 本当に、私達は恋人だったのだろうか? 謎だ。

「友達の話は置いといて、私、ちょろっと利人の分も二百円位入れて来るよ」

 話を強引に打ち切って、私は小銭入れのガマクチから小銭を取り出す。自分で言うのもなんだけど、私は恵まれている。利人が言うことに全く賛同しないわけでもないけど、ここで募金しておいた方が、私の精神の衛生上良いとの判断だ。良いだろう。

 他の人もそう考えたらしく、多分最初の一人が動き出すのを待っているように思う。

 この千恵が一番槍を承った。

「好きにしな。千恵の小遣いだ。でもよ、人助けがしたいなら、その二百円の使い道は考えた方が良いぞ」

 腰を浮かしかけた私に、利人が言った。『好きにしな』と言う台詞の割には、まったく好きにさせてくれなさそうな声だった。

「例えば、二〇円もあれば、ポリオ経口ワクチンによる予防が行える」

「はい? 今、その話関係ある?」

 ポリオ経口ワクチンって何? ワクチンって医療用語だったけ? どうしてこうも、普段使わない言葉がポロポロと出てくるのだろうか?

「ポリオワクチンは、ポリオって言う病気を予防する薬さ。小さな子供がポリオにかかれば、酷い嘔吐や下痢に悩まされ、命が助かったとしても後遺症として麻痺が残ることもある」

「二〇〇円あれば、そのワクチンで一〇人の赤ん坊の人生が救えるかもしれないってこと?」

 だから、どうして医者でもないのにそんなことを知っているんだろうか? それとも、普通の人はこれくらい覚えているものなのだろうか? 私は今も昔も馬鹿だからなぁ。

「しかるべき機関に募金すれば、少なくともそうだろうな。勿論、他の病気で死ぬ可能性もあるし、親に虐待されて殺されるかもしれないし、そいつがテロリストになって多くの人間を苦しめるかもしれない」

「…………じゃあ、二三〇〇円があったら何が出来た?」

「千恵のランチ代なら、栄養失調の子供たちに高カロリーのビスケットを四〇箱買ってやれる。俺達の一食は、何処かの誰かを何人何日飢えから遠ざけることが出来るんだろうな?」

 その言葉に、私はなんて返せばいいのかわからなかった。

 私達は誰かを救える可能性を無視して、楽しんでいるのだ。

 貧富の差と言うのは、子供にスマホを与えられるか、奨学金を返済するべきか、漫画喫茶で寝泊まりしているか、そう言ったレベルの話ではなく、死ぬ可能性をどれだけ低くできるか、と言う話なのだ。

 世界と言うのは、そこまで残酷なのか。

「あの夫婦は自分の子供を生かす為に、どれだけの人間の死から目を逸らすつもりなんだと思う?」

「…………利人は、あの夫婦を軽蔑する? 不必要に高い食事を取る自分を醜いと思う? 二〇〇円で誰かを救おうと思った私をどう思う?」

 完全に腰を椅子に卸下ろして、私は訊ねた。

 こんな社会に対して、利人は何を感じているのか気になった。

「別にどうでもいい」

 答えはスーパー簡潔だった。

「えぇ。なんか、感動的な台詞でこの微妙な空気を吹き飛ばしてよ!」

「だって、見ず知らずの人間が死んでも、俺の心は痛まないし」

「堂々と下種なこと言った!」

「何言っているんだ。親しい人間の死ならまだしも、他人の死に共感する奴の方がよっぽど嫌な奴だろ」

 利人豆知識。『同情』が死ぬほど嫌い。

「良いか? 千恵。俺もお前も、ただの高校生だ。全員を救うことなんて絶対にできない。大人になってもそうだ。総理大臣だって、大統領だってそう。キリストだってブッダだって諸手を挙げて降参している」

「降参って、何に?」

「死と不幸だ。これは聖人君子でもどうしようもない。世界からは排除できない。人は死ぬし、幸不幸はコインの裏表だ。だから、死や不幸に対して一々『私が○○していれば助けられたのに』とか言う奴がいたら、そいつは自意識過剰の阿呆だ。神にでもなったつもりかってんだ。運命は変わらない。人間は、誰を殺して、誰を生かすか、選択しながら生きるしかない。どんな人間でも、根本的には殺人者に違いない。生まれたばかりの赤ん坊だって、それは変わらない」

「じゃあ、あの夫婦に『一億円でアフリカの子供達が何人救えると思う?』とか聞かないの?」

「別に聞いてきても良いが」

 本当にやりそうで怖いので、私は首を横に振った。

「それであの人達が『ああ。それでも娘が一番大事』と言えるのなら、凄い愛だと思わないか?」

 さっきは飯が不味くなるとかいってなかった? 君。

「例え何万人を犠牲にしようとも、娘を助けたい。最高にクールだ。なりふりをかまってない。これ以上の愛があるのか? 羨ましいよ、そんなに愛された子供が。もっとも『ある一人のひとだけを愛すると言うのは、野蛮な行為だ。他の全ての人々への愛を否定する愛だからだ。ただ一人の神への愛も同じようなものだ』とニーチェは言うがな」

「愛」

「そ、愛だよ」

 よくも恥ずかしげもなく、そんなことを言える物だ。愛もだけど、ニーチェの引用をする高校生とか、利人でなければ一緒にご飯を食べたくないよ。

「だから、千恵。好きにすれば良い。見ず知らずの赤ん坊でも、アフリカの貧困にでも、お前がやりたいように救えば良い。どうせ一〇〇年後には全員死んでいるんだ。誤差だ、誤差。お前の勇気ある行動は、世界に何の影響も与えない。お前に責任なんて微塵もないんだ。真剣に考えるな。『真理などなく、全ては許されている』」

 結局、利人の言葉が励ましだったのか、嘲笑だったのかわからないまま、私は握り締めていた二〇〇円をあの夫婦に寄付した。理由を聞かれても、説明は今もできない。が、まあ、悪いことではないだろう。

 そしてレディースセットを食べたら、銀行にでも行って、赤十字にでもお小遣いを少し寄付しようと利人に提案した。何が変わるわけでもないとはわかっているけど、自己満足だ。精神の衛生上、私にはそれが必要だったのだ。

「俺はここの飯代を持とう」

 日替わりパスタをフォークでクルクルと巻き取りながら、利人は言った。

「赤ん坊よりも、アフリカよりも、俺はお前が大事だからな」

 おいおい。顔が赤くなっちゃうよ。

 ちなみに、最後の一文は私の妄想である。ぐふふ。利人は間違ってもそんなことを言わない。

 だけど、大切なことはちゃんと知っている。




 回想終わり! 

「よし! ご飯作るか!」

 利人の言う『誤差』を感動的に扱うテレビの電源をテレビの玩具で切って、私は夕食の準備に取り掛かる。悲しいけど、私は美味しい料理が大好きだ。食材にはとってもこだわるし、調味料だってバンバン使う、調理器具だって良い物を揃えてしまった。

 きっと、そのお金でもっともっとたくさんの人を飢えから解放できただろう。

 でも、自分の幸福を削ってまで、他人を幸せにはできない。しようとも思わない。そこまで世界に責任なんてない。

 意識的に、或いは無意識敵に、他人を蹴り落としてでも私は自分の幸せを選んでしまう人間なんだろう。傲慢で、強欲だ。他人の不幸の上でしか、私は幸せにはなれない。なんて呪われているんだろうか?

 でも、当然だ。

 だって、神様じゃあないんだから。

 私は私の手の届く範囲を幸せにすることが精一杯。

 だからせめて、美味しいご飯を作ろうと思う。

 だからせめて、大好きな人の為に笑おうと思う。

 だからせめて、自分の人生を愛したいと思う。

 短編として同話を投稿してますので、ご了承下さい。

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