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【ニーチェ】利人と千恵が『善悪の彼岸』を読むようです。【哲学】  作者: 安藤ナツ


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【七四】【天才】

【天才のある人間は、鼻持ちならない物だ。感謝の気持ちと潔癖と言う少なくとも二つの特性を持ち合わせていない場合には。】


「【天才】つまりは私のことだね!」

「はいはい。その通りその通り」

「完全に投げやりな対応だ…………。でも、私、天才と言われた事はあるんだよ?」

「ほう。何の分野でだ?」

「モン○ン」

「モン○ン!?」

「そ。詳しい状況は省くけど、その時の超好プレーを『天才的な動きだった』って褒められたんだから」

「それ、褒めたの俺じゃねーか。まあ、でも、実際あの時は凄かったよな」

「二人でテンション上がり過ぎてファミレスの店員さんに注意されたもんね」

「ドリンクバーだけで三時間も粘ったのもあっただろうな……」

「まあ、そう言うわけで私は天才なのだ」

「おめでとう。でも実際、天才って呼ばれる奴は割といるよな。教科書見れば、そんなんばっかだし」

「そりゃあ、馬鹿でもアホでも教科書に載せていたら紙面が足りなくなるでしょ」

「そうじゃあなくてもさ、毎年の様に山手線だか円周率だかを諳んじられる天才少年とか出てこないか? 甲子園は十年に一人の逸材だらけだし、オリンピックの選手が足りなくなることはない。ボジョレヌーボは何時だって最高傑作だ」

「最後のは別に関係なくない?」

「それじゃあなくても、ちょっとした褒め言葉みたいな感じでも『天才』なんて言われるし、天才って言うのは案外大した物じゃあないんじゃないか?」

「はあ。それは、あれじゃないの? 天才のレベルが違うって言うか、ただ安易に使われる安い言葉って言うか、天才が大したことないと言われても『あー。なるほどねー』とは流石にイエスマンの私にも言えないよ」

「お前がイエスマンだったら、世の中全員風見鳥だ」

「それで? 才能に関して話して来たけど、何が言いたいわけ?」

「いや。今回のアフォリズムだけど、【感謝の気持ちと潔癖】を持ち合わせていない奴なんて、大抵の場合は【鼻持ちならない】んじゃね? と思うわけだよ」

「そりゃあ、まあ、確かにそうかな? 天才とか関係なく、そんな奴とは一緒にモン○ンしたくないよね」

「そして、そんな当たり前のことをニーチェが言うだろうか? と、言うわけで、ちょっと原文を探して、使ったこともないドイツの翻訳機能を使って色々と調べてみたんだが」

「珍しく労力を使ったね」

「つっても、検索して、翻訳サイトにぶち込んだだけなんだけどな」

「それで?」

「【鼻持ちならない】と訳された【unausstehlich】には、耐え難いと言う意味もあるらしい」

「まあ、『鼻持ちならない』が『耐えられない』って意味だから滅茶苦茶普通の結果が出てるよね。」

「うん。凄く時間を無駄にした気分だった――ってわけでもないんだ」

「何か得る物があったと? 翻訳サイトの使い方とか?」

「今時小学生でも出来るわ!」

「え? 利人は小学生のパソコン事情に詳しいの?」

「すまん、知らんかった。適当言った。許してくれ。話しを戻させてくれ!」

「しょうがないなー」

「この『耐えられない』と言うフレーズに、俺はティン! と来たわけだ。『果たして、これは誰が耐えられないんだ?』って」

「誰が?」

「そ。天才って言うのは耐えられない物だ。それは、誰が、耐えられないんだ? 回りにいる人間か? それとも――」

「――その人自身か? ってこと?」

「どう思う? 天才は、果たして自分が天才であることに耐えられるのか?」

「そんなこと、私は天才じゃあないから知らないよ」

「まあ、そうだろうな。でも、歴史に名を連ねる天才って言うのは、早死にするのが定番じゃあないか? 偉人の伝記を読んでみれば、晩節を汚しまくりで幻滅したことはないか? 産まれてから死ぬまで、ずっと天才であり続けた天才なんて奴が、この世にいると思うか?」

「『十で神童十五で才子二十過ぎれば只の人』って奴?」

「そんな諺もあったな。でも、何で神童も才子も只の人になっちまうんだ?」

「才能って言うのは、枯れちゃう物なんじゃないの?」

「何故、枯れる? それはひょっとして、天才であることに耐えられないからじゃあないか?」

「天才であることに耐えられない、って言う感覚がまず、わからないんだけど」

「モン○ンで常にファインプレーを求められる状態だ」

「ああ。それはきっついね。天才と呼ばれるのは簡単でも、天才と呼ばれ続けるのは難しいのかも」

「それに耐える為に必要なのが【感謝の気持ちと潔癖】であるらしい」

「利人の言う視点で考えると、【天才】こそ【感謝の気持ちと潔癖】を持っていないと駄目手ことだよね。なんて言うか、話しが戻っているよね? 礼儀正しい天才なんて、ただの優秀な人じゃない? まあ、それこそ【鼻持ちならない】天才であったら確実にやっかみの対象になるだろうから、天才に耐える為には、天才ではない振りをする必要があるのかね?」

「天才の敵は凡人だからな。それに能力があると言うだけで、人格まで求められるから大変だ。才能があるから全てを許されるわけじゃあないけど、天才も天才で大変だ」

「あくまでも打算あり気の感謝と潔癖って言うのが、如何にも天才らしくて良いけどね。ほら、創作では良くあるでしょ? 俺様系の天才って言うの? 周囲を見下しているやつ」

「完全に敵役だよな、そいつ」

「うん。それに三下っぽいよね。ああ言うの見ると何時も思うんだよね。『本当に頭が良かったら空気を読め』って。賢い人がちょっと優しい素振りを見せれば、それだけで良い人に見えるんだから、気がつけよって」

「善人を装えば、腹黒いって言われるだけの気もするけどな」

「あはは。確かに。要するに、これはアレなのかな? 天才だって大変なんだぞ? って言う寓意が籠められているのかな?」

「それは違うと思うぞ……。でも、ニーチェの最後を思えば、彼もこのアフォリズムを全うできたかは怪しいし、正しいのかもわからんけどな」

「発狂したんだっけ?」

「病気が原因だけどな。でも、ニーチェの天才性が完全に無関係だとは思えないんだよな」

「『私が言った通りにしろ。やった通りにはするな』って偉い人も言ってるしね。天才に耐え切れなかったとしても、別にこのアフォリズムが間違っているってわけでもないんじゃない?」

「まあな。そもそも、この解釈が正しいとも限らんし」

「ここまで来てちゃぶ台を返すの?」

「そう言う謙虚さが必要なんだよ、天才にもな」

「いや。天才じゃない人がその台詞を言うと、単に自信がないだけだから」

「お前は俺のことを天才と言ってくれないのかよ」


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