第1話 異世界への移動
どうも!秋葉げんといいます!
処女作品ではないですが、投稿して不特定多数の人に見ていただくのは初めてなので、拙い点も多々ありますが、よろしくお願いします!
Pipipi......Pipipi.......Pipipi.........
電子的な目覚まし時計の音が寝室に鳴り響く。
僕は目覚まし時計を止め、表示されている時間を確認する。
「ん・・・・ん?」
手に取った塗装が剥がれかけている目覚まし時計をみると午前9時45分と表示されていた。
本来、僕が家を出るのは8時40分だ。
「・・・・・寝坊した!?」
朝御飯は必ず食べるのが僕の日常だが、一時間も遅れていては食べている暇はない。
僕は即座に準備を整え、学校へと向かう。
自転車を全力でこぎつつ、学校への最短ルートを頭の中から引っ張り出す。
(確か、ここを曲がれば近いはず・・・・!)
道をあまり速度を緩めず曲がると、体に浮遊感を感じ、車輪が空回りを始める。
「え・・・・?」
そこからの 記憶は、あまりない。
〜〜〜〜〜〜〜
とある世界の中規模の都市にて、真夜中に異変が起こる。
それは、辺境にある教会でまばゆい光を伴って起きた。
光が収まると、そこには一人の男が倒れており、その服装はこの世界ではあまり見られないものだった。
それから数分経つと、一人の女性が重厚な扉を軋ませながら教会の中へ入ってきた。
そして、倒れている男を見つけるとその男に近づく。
「あらあら、今回の渡り人はずいぶんお若いのですね」
にこにこと笑いながらそう呟くと女性はその男を教会から運び出した。
〜〜〜〜〜〜〜
意識が覚醒するのを感じる。
僕はどうしたんだろうか? 薬品のようなにおいがするので、病院か何かにいるのかと考えるが、そんなことをしていてもわかるはずがないので、目を開けて確認することにする。
「ん・・・・・」
目を開け、周りを確認するといくつかおかしなところがあるのに気が付いた。
一つ、自分は落下したように感じた。にもかかわらず擦り傷すらなく、それどころか体が軽いということ。
一つ、見渡せる範囲に薬はなく、代わりに香のような物が焚いてあるということ。
一つ、照明用だろうと思われる、ロウソクが燭台の上に置いてあるということ。
一つ、この部屋の机に、ペン先にインクがついた羽根ペンが置いてあるということ。
僕は日本にいたはず、今現在において羽根ペンを使うのはアンティークマニアぐらいのものだろう。
動かないとこれ以上の情報は得られなそうだ。
そう思ってベッドからおり、ドアの方へ向かう。
「お、起きたみたいね」
ドアを開けると、向こう側には修道服のようなものを身にまとった、ひとりの小さな少女が立っていた。
桃色の髪を肩まで伸ばし、その海のような透き通る蒼い瞳には、彼女の活発さがよく現れている。
あたりまえだが、僕は彼女のことを知らない。今の状況を知るために、まずは彼女に誰何を問う。
「・・・・・君は?」
「あたし?あたしはカナ・ルナメリア!職業はビショップよ、よろしく!」
元気な子だ。しかし、職業?こんな小さな子を働かせているのか?
でもビショップとはなんだ?ゲームか何かの役割なのか?
「勘違いする前に言っておくけどね。あたしはこれでも16よ」
・・・・16?こんな小さな子が?小学6年くらいのこの子が?
いや、本人が言っているんだから嘘だろうとなんだろうと納得してあげよう。嘘だろうと。
「なんか、失礼なこと考えてる気がするけど・・・・まあいいわ。もう一つ教えることがあるのよ」
「もう一つ?」
「そうよ!それは、この世界が貴方たちの言う、RPGの世界だっていうことなの!」
「へ?」
この少女、カナは何を言っているんだろう?RPG?ここが?
「そしてあなたのように、数年に一度だけ、貴方の世界から私たちの世界に送られてくる人のことを渡り人、というのよ」
「そ、そんなこと急に言われても・・・・わからないよ」
「そうでしょうね。今までの渡り人たちもそうだったらしいし。だから、手っ取り早くわかるように魔法を見せてあげる!」
「ま・・・ほう?」
魔法というのはやっぱりアレだろうか。
火や水、雷などを発生させて敵を攻撃したり、味方の傷を癒したりの、あの。
「そう、魔法よ。まあ、私の場合、魔法とは少し変わってくるから、違う人に実演してもらうけどね」
「違う人?」
「入ってきていいわよ!」
カナが扉の方に向かって呼びかけると、彼女よりも背の高い女の子が入ってくる。
「どーも、サーシャ・アートバースといーますです」
入ってきたのは澄んだ水色の髪を持つ、どこか物静かそうな印象を受ける少女だった。
彼女が魔法を見せてくれるのだろうか?
「汚らしー目でじろじろみるんじゃねーです。クソ豚」
「・・・・・え?」
「ちょ、ちょっとサーシャ!それくらい許してやりなさいよ!」
「カナがゆーから許すですが・・・・・今後は気を付けることですね」
この子は物静かなんて生易しい言葉は似合わない。冷血、冷淡、冷酷がとてもよく似合う毒舌だった。
やはりこんな彼女の魔法は氷属性なのだろうか・・・・・・。
「よく見ておけです。・・・・・・私はみるんじゃねーです。視線で汚れるです」
毒を吐きながらも魔法の詠唱らしきものを唱え始めた。
「凍てつく大気は礫となりて、地平を翔ける弾丸となる。≪アイスブリット≫」
唱え始めると同時に部屋の温度が下がったように感じ始め、詠唱が終わると空中に2~3cmの礫が現れた。
「二階梯魔法ね。階梯を重ねれば重ねるほど高威力の魔法となるわ」
「これが・・・・魔法・・・・・・なのか」
「呆れるほど醜悪な顔です。その醜い顔をこっちにむけんじゃねーです。吐き気がします」
今まではどこか心の中でTV番組のドッキリか何かと勘違いしていたのかもしれない。
だけど今、自分は本当に異世界に来てしまったんだなと、理解した。理解してしまった。
「まだ納得できないところがあるかもしれないけど、とりあえず今やらなければならないことをいっておくわね」
「やらなければならないこと?」
「ギルドへの加入よ」
ギルド・・・・・・・RPGなんかでは冒険者が所属していて、クエストなんかを仲介してくれる機関だったはずだ。
そこへの加入がなぜ最優先事項なのだろうか?もっと他にも重要なことが何かあるのではないかと思うのだけれど・・・・・。
「ギルドへの加入がそんなに重要か?って顔ね」
「浅はかですね。家畜以下のクソ豚らしーです」
「あ、あはは・・・・・・。えっとね、ギルドっていうのはクエストの仲介者。つまり冒険者にとっての生命線なの。貴方には悪いけど、渡り人には冒険者になる道しかないから、必然的にギルドに入ることになるのよ」
「え?な、なんで!」
「渡り人は特殊な武器に選ばれ、魔物を倒す大きな戦力となりうる。そんな理由から国が冒険者以外になることを固く禁じているのです」
そ、んな・・・・・・戦うことを強制されているのか?喧嘩なんかろくにしたことないこの僕が?
吐き捨てるように言う彼女の言葉に、少なからず残っていた自分の中の甘い考えが消えていく。よくある異世界転生モノのように、王様や王女からちやほやされて、自分には選択する権利があると思いこんでいた。そんなことはありえないのにも関わらず・・・・。
「納得できよーができまいが、選択肢はひとつだけですよ」
納得できずに俯いている僕に向かって、サーシャは無表情でそういった。
確かに、僕自身の意志なんて関係ないんだ。この世界に来てしまった以上は、この世界のルールに従うほかはないのだから。
「・・・・・・・・わかった。入るよ。君たちのギルドに」
「うん、ごめんね。無理言っちゃうようで。まぁ、何はともあれ!ようこそ!私たちのギルド≪眠りの森≫へ!」
「私以外は、歓迎するですよ」
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