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四季同盟  作者: 紫雨
プロローグ
1/5

はじまりの季節

 4月、私たちは出会った。

 桜の花びらが舞う中で―――。





 偶然だったのか、必然だったのか。




「入学オメデトー!部活とかもう決めた?君カワイーねぇ、マネージャーにならない?」

「えと、あの、いえっまだ決めてませんので…!」

「じゃーちょっと見てくだけでもいーじゃん?行こーよ~」

「え、ちょちょちょっと、離してくださ…っ」



 掴まれた腕は、振りほどこうとしてもびくともしなかった。


 桜が綺麗で、つい見惚れてぼーっと立ってたら、新入生が帰る時間はとっくに過ぎていた。

 完全に外したタイミングの中、駆け足で校門に向かおうとしていた時に、チャラチャラした上級生二人に声をかけられた。


 高校生活で不安なことランキング2位にランクインする上下関係…!に、高校生初日から遭遇してしまったようだ。(もちろん、1位はお勉強である)



(どうしよう…!)

 大声を出そうと思ったのに、上手く声が出ず、掴まれた腕は気持ち悪い。

 どちらかといえば(コレ重要)小柄なあたしは、いとも簡単に引きずられるように連れて行かれてしまう。






「――ちょっと、嫌がってんだろ。離せよその子を」



 聞こえたのはハスキーボイス。

 恐る恐る顔を上げた瞬間、目にも止まらぬ速さで、上級生二人は吹っ飛んでいた。



「え?え…!?」




 いつの間にかあたしは声の主に救い出されていた。

 艶やかな黒髪を一つに束ねて風になびかせている彼女は、仁王立ちで、地面に倒れ込む二人を見下ろした。

 その瞳がまた、怖いくらい綺麗で―――。



「なんだ、たいしたことねェな」

「………っこのクソアマ……!」



 上級生の一人が拳をにぎりしめて起き上がった。そして彼女に殴り掛かろうとしたその時――、



「先生!こっちです!」

「おまえらー何をしてる!!」


 眼鏡をかけて真っ白な肌色を持つ一人の女の子が、先生を連れて走って来た。



「げっやべえ、おい起きろ、逃げるぞ!」

「こら待て―――っ!!」



 駆け付けた先生の顔を見て、二人は血相を変えて逃げ出した。




「―――クロ、シロ」

「「はっ」」




 また別の声が聞こえて、黒い影が二つ、また見えないくらいのスピードで動いた。

 気付けば例の上級生二人は、縄で縛り付けられていた。


 そして二人の座る場所のすぐわきにある木から、一人の女の子が舞い降りた。

 栗色の毛は綺麗なウェーブを描き、くりくりの大きな猫みたいな目。





「やるねェ、今の何?」

「ちょっとした従者ですわ。」

「従者………!」



 って何?側近みたいなやつ?

 頭にハテナマークを浮かべて単語をリピートする私をよそに、黒髪ビューティな彼女は栗色お嬢様に楽しそうに声をかける。

 そして眼鏡のホワイトガールに、向き直した。




「で、アンタが先生呼んでくれたの?サンキュー」

「いいえ。ちょうどそこの図書館から見えたの…。」

「あ……っありがとうございます!」



 あたしはとっさにお礼を言ってペコリと頭を下げた。

 彼女は穏やかな表情を浮かべて微笑んだので、自然とあたしの顔にも笑みが零れる。




「ていうか、3人とも…助けてくれてありがとうございました!」

「あぁ――、アンタ狙われやすいカオしてるから、気をつけろよ」

「そうねぇ、おいしそう」

「………はい?」




(おいしそう………!?)


 栗色お嬢様が何気なく発した言葉に、あたしは驚く。いつあたしが食べ物になったの…!

 分からない空気になりそうだったから、それを防ぐことも兼ねて、あたしは名乗ることにした。



「あの、あたし………、小野桜(オノサクラ)って言います」

「桜……ああ、春っぽいわね。わたしは城崎向日葵(シロサキヒマワリ)よ」

「しろさき……あ!もしかして新入生総代の?」



 そういえばこんな人だったかも、眠たかったからほとんど覚えてないんだけど、何かのプリントに書いてあった“城崎向日葵”の字が記憶と重なって確信した。




「へぇ、アンタ頭いーんだ、すっげー」

「やだ、そんなんじゃないわよ」

「ううんっ、すごい…!」



 多分ギリギリの成績でこの高校に入学したあたしは、目を輝かせて彼女を見つめた。

 照れたように笑う彼女の笑顔は、やっぱり温かい。



「ウチは柊道琉(ヒイラギミチル)、一応名の知れた武道家の一人娘」

「私は笹原楓(ササバラカエデ)と申しますわ」

「………向日葵、柊、楓に……桜!あたしたち四人で、四季が揃っちゃうんだ、すごい!」




 全然共通点の見つかりそうにないあたしたちの名前に一つだけ、繋がるものをみつけた。



「おー、本当だな」

「素敵な偶然ですわね」

「四季同盟……かしら?」




 あたしが一人で興奮してしまったのかと思っていたけど、違ったみたいだ。

 向日葵の名付けた名前に、3人とも「それいいね!」と飛び付いた。

 




 これが、あたしたちの出会い。




(はじまりの季節、おわり)

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