茂名の休憩
午後14時20分、少し薄暗い部屋でやや大き目の机にあるノートパソコンから専用ブラウザで茂名は掲示板を見ていた。
パソコンの近くにはチルドカップのコーヒーが置いてあり、MAXIM TRIPLESSOと書いてあった。茂名はミルク感のある、このコーヒーが最近のお気に入りだった。
部屋で輝いているモニターが映す文字に目を通すとそこには職に関する不平不満が書かれていた。
『引きこもりが楽でいいわ』
『これは働いたら負け。ニート君が正しい』
『転職も厳しくなってきたな』
茂名は特に感情的になることはなく、思いついた事を文章にし、書き込むボタンを押した。
『お前らもいい加減働け』
更新ボタンを押した後、彼の送信した言葉に、すぐにフィードバックが返ってきた。
『は? ここ、ニート板なんですが』
『どうしてこの時間に書き込めるの? 無職のおっさん乙ww』
『まーた童貞か』
茂名は言い返す事が出来なかった。確かに働いていればこの時間帯に投稿することは出来ないからだ。それでも茂名は働く気が無い掲示板の住人に何か良い事を言ってやろうと、もう一度投稿した。
『俺も働いてないけど、努力すればいつかは報われる』
茂名はそっと、ウィンドウの×ボタンにマウスポインターを乗せ軽やかに左クリックを押した。常日頃インターネットをする彼からすれば、慣れた動作だった。投稿した前向きな言葉の後に、何が書かれているか、彼は確認しなかった。
気分転換に彼は他のサイトを見ることにした。googleの検索欄に『xヴ◯◯◯』と入力してエンターキーを押そうとした時、誰かが部屋のドアをノックした。
「社長、そろそろ会議の時間です」
若い20代の女性社員の声がドア裏から聞こえた。茂名はノートパソコンを折りたたみ、会議の書類を手に取った。