第壱話 双子
君は僕に聞いたの。
「生きてるの?」
そうしたら僕は逆に返したの。
「じゃぁ、生きてたらどうなるの?」
君は目を瞠って無表情になった。
「生きてるとしたら君は誰だい?」
僕を丸々否定するような言葉、思わず耳を疑った。
「じゃぁ、ねぇ?君は僕を誰だと思いますか?」
君の深海色の瞳が細まった気がした。
「君は君の偽物だよ。」
偽物ということは作り物と君はいっているのだろうか?
「その黄金の髪も、その深紅の瞳も全部、絡繰だよ。」
暗示のように君は囁く。
でも僕は何故か微笑を浮かべた。
「名前は?君と僕の、名前くらいあるでしょ。」
「言ったろう?君は君の偽物なんだよ。名前なんて・・・・・。」
「だったら、君の。」
口唇が少し動いた気がした。小さい声でうまく聞こえない。
「聞こえないよ。何、ちゃんといって。」
「深海、深い海。」
「やっぱりね、僕を作ったのは君だ。」
僕は君に作られた偽物。
誰の偽物かは知らない。
「名前を、呼んでよ。君が作ったんだ。」
「よく分かったね。さすが僕の作った偽物。」
にっこりと微笑み君は言う。
「僕は、君の偽者でしょ・・・?」
そこまで言って不意に顔を見合わせた。
「もうやめようよ。」
「ん、後ちょっとで終わりなのに・・・・。」
深海は物足りなさそうに唇を窄め文句を言う。
「だって。僕、偽者の役なんだよ?」
「僕だって最終的に偽者って終り方だったのに。」
そう言い合ってニッコリとそっくりな顔で笑った。
「深空海へ行こうか。」
深い青い眼で窓の外を眺めて言う。
「ん、いいよ。」
波は穏やかで心地よい風も吹いている。
海の青さと広がる夕焼けは自分達の瞳とまったく違う輝きを放っている。
部屋の中で意味のない二人だけの劇をやっても時間の無駄だった。
「僕らは双子だもんね。偽者なんかじゃなくて。」
握った手は暖かい。
僕らは、生きているんだ。
騙されてくれたらなー、と読んだ人怒ってますよね;;