表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

私、天国で保育士をしています

私、天国で保育士をしています。クリスマスバージョン♪

作者: めいふぁん

「ジングルベールジングルベールすっずっがーなるぅー♪」


皆さんお久しぶりです!佐武です!マリエです!

冒頭からハイテンションです!

私の下手くそな歌でお気づきの方もいらっしゃるでしょう。

何を隠そう、もうすぐ、私を思わずハイテンションにしてしまうあのイベントがやってくるのです!




そう!!

ク・リ・ス・マ・スが!!!!





うふふ、それにむけてですねぇ、地上で小さなクリスマスツリーを買ったんです。

ほんわかピンクでキラキラな、可愛いツリーなんですよーうふふふふ。

お揃いのリースも買ったので、ただいま飾り付けの真っ最中なのです!



あぁ、クリスマス、なんて素敵な響きなんでしょう。

キラキラ光るイルミネーション、ツリーの下に置かれたプレゼント、丸々太った美味しそうなチキンに、大きなクリスマスケーキ!!

夢が膨らむ一大イベントですぅ!!!

今年は天界で過ごすのでシングルクリスマスですが、それはそれで楽しみです!(えぇ、誰が何と言おうとシングルです、シングルなんです!!まかり間違ってもあの天使様のことは・・・)




ピンポーン



あら、呼び鈴が。

どちら様でしょうねー・・・いえ、想像はつきますが。

扉にチェーンがかかっていることをしっかりと確認し、おそるおそる扉を開けます。



「・・・はぁーい・・・」




「おはようございます、マリエさん。本日も可愛らしいですね。お話しがありますので、少々お時間よろしいですか?」



きらっきらなオーラを振りまき、お金でもとれそうなほどの笑顔で、天使様が佇んでおられました。

そう、私を恐怖のどん底に陥れる、本当に天使なのか疑わしくなってしまうほどお腹が真っ黒クロスケな天村使郎さんです・・・。

彼は私の運命を捻じ曲げ、生きている間も死んだあとも自分と天界で暮らそうと日々私にささやき、思い出すと青ざめたり赤くなったり奇妙な顔色になってしまうステキなハロウィンをプレゼントしてくださり、挙げ句の果てに「既成事実、という言葉をご存知ですか」と宣り、日々あれやこれやと手を尽くして私を絡めとろうとなさっており、悪魔でもこんなことはないだろうと思わせるほどのお人なのです。


私は恐怖にひきつる口元をなんとか笑顔にし、答えます。


「は、はい、もちろんです。ご近所のカフェにでも行きませんか?お話しはそこで」


部屋にお招きしてしまうと、これ幸いと何をされるかわかったものじゃありません。




「いえいえ、お渡ししなければならないものもありますので、是非私の部屋においでください。   心配なさらなくても、こんな朝のうちから襲ったりしませんよ、えぇ、大人しく私に従ってくだされば」


「謹んでお邪魔させていただきます」


うぅ、本当に悪魔より悪魔のようです!!




「どうぞお入りください」



「おじゃまします・・・」



お招きいただいたお部屋は、シックな色合いでまとめられ、無駄なもののない機能的な雰囲気が漂う男性らしいお部屋でした。

床にはチリ1つなく、神経質そうな感じを覚えます。


革張りのソファーにうながされ、向かい合えばいいのに何故かとなりあわせに腰をかけます。


近い!!近いですよ!!


「本題に入りますが、マリエさん。もうすぐ天界にとってとても大事な日がきます」


「そ・・・そうなんですか」


それ、私の髪に手を伸ばしくるくると指先に絡めながらおっしゃるお話なんですか・・・?

しかももう片方の手が肩に回って来ているのですが。


顔を引きつらせながら返事をする私のことなんて気にもせずに天村さんは続けられます。


「救世主イエス様のお誕生日です」


!!!!!!


そうでした!!ここ天界ですものね!!


リアル降誕祭ですよね!!


あぁ、クリスマス。なんていい響きなんでしょう。


うっとりとクリスマスに思いを馳せていると、天村さんは私の髪から頬に指を移しながらいいました。


「そこで・・・イエス様がサンタクロースの格好でプレゼントを配るサプライズをしたいとおっしゃっているのです」


つつつ、と頬に指をすべらせながらもたらされた情報に、


「はぃ・・・?」


思わず聞き返した私は何も悪くないと思います。


だって、だって!!おかしいですよね???


え、誕生日を迎えられるイエス様が、逆にプレゼントを配りたい?


しかもサンタクロースのコスチュームで??


えーーーーー・・・


「地上では子ども達にクリスマスのプレゼントがサンタクロースから配られるそうじゃないですか。聖ニコラウスは毎年この時期は地上にバカンスに出られていますので、もしかしたら彼が実際配り歩いているのかもしれませんが。イエス様はそれが楽しそうだと思っておいでなのですよ」


「は・・・はぁ」


間抜けな返事だとは言わないでください。


なんとも現実味のないお話で、理解がおいつかないのですよ!


「なので、保育部の方にお邪魔させていただいて、クリスマスパーティーなるものを催していただけないかと思いまして」


なんと!!!


保育部にイエス様が来られるのですか!!


サンタクロースのコスチュームで!


プレゼントを持って!!


自分の誕生日に!!!


「わ・・・わかりました」


なんだかよくわからない汗が身体から吹き出ます。


なんとかそう応えた私に、天村さんはきらきらした笑顔をむけてくださいます。


あぁ、神々しい。


「それはよかった。マリエさんならそうおっしゃってくださると思っていたのですよ」


よ、喜んでいただけたようで何よりです。


でもですね、


「あのぅ・・・この手はなんでしょう」


頬をなでていた手がいつの間にか太ももにあるのですよ!!


肩を抱いていた手ががっちりと更に締まっているのですよ!!


そして更に顔が近いです!!!!


「いえ、大事なお話も終わりましたし、ここからは・・・」


黙らないで!!そこで黙らないで!!!!

その、底知れないものを感じさせる笑みは何ですか!?



いやぁ~~~~~~~!!!!!
















「じんぐるべーじんぐるべーすっずーがーなるぅー」


「せんせーみてみてー」


「ぼくもー」


「わたしもー」


「おはながあかいのー」


「すずついてるのー」



もう、死んでもいいです。


その、その小さな身体をトナカイの着ぐるみに包むだなんて、そんなこと・・・


私を萌え殺す気ですか!!



もこもこの素材がいい味だしてますよ!

ぷにぷにの頬がもこもこにぴったりと包まれ、ぷりっぷりのお尻についたしっぽが、歩くたびにぴこぴこ揺れて・・・

もう、もう、連れて帰りたいですぅ~~~


「誘拐は犯罪よ」


子ども達を抱きしめようと出した手を後ろからガッと掴まれました。


「み、美々先生・・・」


なぜ、私の心が読めるのですか・・・



「顔に出てるわ」


そのクールでちょっぴり容赦のないところ、好きですよ。




今日はいよいよクリスマスなのです。


なのでイエス様扮するサンタさんがやって来るのですが、それに合わせて子ども達にトナカイの衣装を着せているのです。


保護者の皆様はこの衣装にとっても手をかけてくださって、かなりクオリティの高いトナカイさんがたくさんです。


「もうすぐサンタさんが来ますよ~皆さん座って待ちましょうね」


声をかけるとあちこちに散らばっていた仔トナカイたちがわらわらと集まってきます。


そしてそのままきゃいきゃいしながら団子状態になりじゃれ合い始め、その愛くるしい姿はさながら天国にいるかのよう・・・




あ、ここ天国でした。



「メリークリスマース!!ホゥホゥホーゥ」



そうんなことを思っているとサンタさんが登場しました!


声の方を振り返ると・・・



真っ赤な衣装と白いもふもふのお髭に身を包み、大きな白い袋を抱えてユニコーンの引くそりにのって登場する、救世主さま(多分)がいらっしゃいました。

お髭で顔のほとんどが隠れてしまっていて本人かどうかは確認できません。


しかし・・・はい、天国にはトナカイさんがいないのですね。

とても神々しい、そりをひかせることをためらってしまうような純白のユニコーンに手綱をつけるだなんて、これはそうとう天国でも偉いお方でないとできない所業ですよね。



「わーさんたさんだー」


「さんたさんー」


「おひげもこもこー」


「なんでとなかいさんじゃないのー」


「このふくろなにがはいってるのー」


「だっこしてだっこしてー」




ころころとサンタさんに駆け寄っていく仔トナカイさん達が愛おしいです。


そしてユニコーンのことはつっこまないであげてください。


サンタさんが固まっていますよ。


ショックをうけてうなだれていますよ!




しかしすぐに気を取り直したのか、サンタさんはにこにこと微笑みながら袋からプレゼントを出し、配り始めました。



・・・・・ご自分のお誕生日なのに、逆にプレゼントを配るだなんて。

救世主たる所以ですかね?



「わーありがとー」


「おかしはいってるー」


「くっきーはいってるー」


「わたあめだー」



もらったプレゼントを開封し、嬉しそうにお礼のハグをサンタさんにしています。


かわいいんだから~~もう!


でれでれしているとサンタさんがこちらにも来て、私と美々先生にもプレゼントをくれました。


「あ、ありがとうございます!」


「ありがたくいただきます」


二人でお礼を言い、仔トナカイさん達を呼び寄せます。


仔トナカイさん達が一斉にサンタさんにお礼を言い、プレゼントのお礼と称してお誕生日の歌を歌いながらプレゼントをみんなでサンタさんに渡します。


内容は・・・子ども達からの手紙や、もこもこの靴下、ナイトキャップ、抱き枕用仔トナカイぬいぐるみです。



サンタさんは大変感激し、神々しさを振りまいて子ども達をぎゅっと抱きしめて周り、一人一人を祝福してくださいました。


私たちにもそうしてくれようとしたのですが、美々先生の後の私の番になると抱きしめる前にびくっと止まり、きょろきょろと周りを見回してそそくさと離れていってしまいました。



な、なぜなんですか~~!!



ショックを受けて打ちひしがれる私の肩に、白魚のような繊手がぽん、と乗せられました。


「神のご子息でも、抗えない恐怖というものがこの世に存在するの。大丈夫よ、あなたは祝福なんて受けなくてもこの先不幸はただ一つだから」



・・・え?

あのぅ、つっこみたいところが山ほどあるんですけれども。


でもひとつだけ、これだけは教えておいていただきたいのです。


ただ一つの不幸って、それって・・・あの、まさか現在進行形で私を悩ませているものではないですよね?


この前天の御使いとは思えないほどの真っ黒なお腹の中を見せながら私を恐怖のどん底に突き落としたあのお方のことではないですよね?


きっといつか開放されますよね?


そこでそっと目をそらさないで!!


慰めるように肩をぽんぽんしないで!!


骨は拾ってあげるだなんて、そんなことを言い残して去っていかないで!!


美々先生~~~~!!!!








仕事を終え、なんだかどっとつかれたような気がする私は、気分を一転しようと夕飯の買い物に繰り出しました。

なんて言ったって今日はクリスマス!!

美味しいごちそうを作って食べればきっと心は満たされるはず!!


うーん、今から鳥の丸焼きは無理ですからー、とりあえずグラタン、サラダ、それからチキンソテー、オニオンスープ・・・バゲットもあるといいですね。

ケーキは苺がたくさん乗ったショートケーキ、シャンパンも買って帰りましょう。

今日はクリスマスなんですから、多少贅沢してもいいですよね!


ちょっと気分が乗ってきた私はルンルンと弾む足取りで食材を吟味していきます。

このエビ鮮度がすばらしい!

このバゲットは焼きたてですね!

玉ねぎなんて地上の有名な産地からの直送ではないですか!


食材をぽんぽんと買い物かごに入れていると、ぽん、と肩に手を置かれました。




この手の大きさ、感触、そして肩を指でつつつ、と撫でさするいやらしい動き、そして何より私の背筋を薄ら寒くさせるこの気配・・・・



「楽しそうですね、マリエさん。おや、本日のメニューはグラタン、サラダ、バゲットにチキン。そしてオニオンスープといったところですか?随分豪勢ですね。私もご一緒しても?」



あぁ・・・せっかくのクリスマスだと言うのに。


私のこの先を縛り続ける不幸がやってくるだなんて。


夕食を一緒にということは・・・もう今日は逃げることはできないということなんですよね・・・


先ほどまでのるんるん気分が一瞬にしてマイナス値を振り切ります。



遠い目で灰になってしまいそうな私のことは気にせず、腹黒天使様は私の手に自分の手を絡ませ、買い物かごを代わりに持つと軽い足取りでレジに向かいます。


「あら、今日は一緒に過ごすのかしら?仲がいいわねぇ」


にこにこと愛想よくレジのお姉さん(実年齢およそ1200歳)が話しかけてきますが、何か応える気力が今の私にはありましぇん・・・



「えぇ、なんといっても将来を誓い合った恋人同士ですから。ふふふふふ」


代わりに天村さんがとろけそうな笑みを浮かべながら応えています。


もう、もう、どう突っ込めばよいのでしょうか。


ライフが尽きかけている私に、いったい何ができるというのでしょうか。


「さ、早く帰りましょう。何しろ今夜は聖夜ですからね」


にっこり。


眩しい笑顔に天に召されてしまいそうです。




あぁ、神様、救世主様。


何故私にこのような試練をお与えになるのですか?


確かに私はクリスチャンではないです。


実家には仏壇が鎮座しております。


しかし今は神様のお膝元で頑張って働いているのです!


そんな私に幸福を与えてくださっても・・・この天使の皮を被った悪魔を遠ざけてくれても、良いと思うのですよ!!


それなのに何故この天使に加担するのです!


やはり自分の配下のほうがこの子羊より大切なのですか!?


あぁ、天界にいるのに、ジングルベルがジングルヘルに変わっていきます。


おうちに一歩一歩近づくほどに、取り返しのつかないことをしている気になっていきます。



私、このままこの天使様においしくいただかれ続けるのでしょうか・・・?




「マリエさん」


「はい・・・」


「そろそろ諦めたほうがよいと思うのです」


「・・・はい?」


「天使の執着を甘く見てはいけません。私はこの世が終わるまであなたを離しませんし、それを阻むものが何であろうと決して許しません。」


「え」


「なので・・・もう悪あがきはよして、大人しく長いものに巻かれる精神で私のものになってしまうほうが楽ですよ。私は天使ですし、あなたの生涯は幸多いものになることは確定しています。地上の人間等と一緒になるより、はるかによいことだと思われますけどねぇ。まぁ、マリエさんがたとえ地上に戻ってしまったとしても、結婚は無理なんですけどね。運命の相手はそこにはいないのですから。妥協して結婚をしてしまっても、すぐに離婚です。私はあなたが天に召されてから結婚、ということでも別にかまいはしませんが、今生で一人きりというのは寂しいでしょう?独身で生涯を閉じるよりも、ずっと若くて美しい私のような男と一緒になってしまうほうが・・・幸せではないでしょうか?」



優しく諭すように、そう言われます。



・・・そう、なんでしょうか?


確かに一人は寂しいです。子どもも欲しいですし、暖かい家庭に憧れます。

地上で結婚は無理だということはわかっていますし、相手はこの天使様しかいない・・・

よく見るまでもなくとんでもない美形ですし、お仕事もきっちりできる方ですし、優しさも、まぁ、持ち合わせていらっしゃいます。

天使様はギャンブルもすぎるお酒も、浮気も御法度ですし、お給料も高額です。

もしかして、とんでもない優良物件なのでは・・・



そんな私の心のぐらつきを察したのか、天使様は追い打ちをかけてきます。


「私ほどあなたを愛しているものも、いないと思いますよ。」



う、確かに、そう言われてしまえば・・・そうかもです。


長いものにまかれちゃえと私の中の悪魔が囁きます。


しかしそれも・・・つかの間でした。





「今日は聖夜、即ち恋人達の夜、だそうじゃないですか。マリエさん、今日はとことん私の愛を受け取ってくださいね。明日はマリエさんと私の分の有給をとっておきましたから、存分に愛し合いましょうね。

あぁ、今からならどれだけ挑めるでしょう。こうしてはおれません、マリエさん、急いで帰りましょう。その豪華なディナーは明日の夜ということで、今日はデリバリーでも頼みましょう。愛を確かめ合う時間は多ければ多いほどよいものです」



光り輝く笑顔で、とんでもないことを言い放ちました。


あの、有給っていつの間に・・・


挑むって何ですか、何に挑むんですか。


愛し合うって何ですか。


しかもどれだけの時間を計算していらっしゃるのですか。


私をそそのかす心の中の悪魔がぴゅぅ、と逃げ出しました。



「やっぱり、やっぱりだめですぅ!私今生を寿命以外で終えてしまう気がします!!!!」


力いっぱいそう叫ぶ私のことなど気にせず、天村さんは鼻歌を歌いながらずんずんと歩みを進めます。


「何を今更。初めてでもないのですからそのような悲痛な叫びをあげることもないじゃありませんか。大丈夫です。マリエさんが私から離れられないようになるまでしっかり愛を伝えますから」


無理!無理!!無理!!!


それってしっかりがっつり容赦なくってことですよね!?


いつもそんな感じだと思っていたのに、更に上があったのですか!?


あぁ、誰でも結構です。


お願いですから私をここから救い出してください。


いつまにか目前にせまった自宅のドア。


なぜか鍵を自分のポケットから出してさらりと開ける天村さん。


抵抗できないままに中にひっぱり込まれ、そのまま鍵をがちゃり。



「さぁ、めくるめく愛の幕開けですね?」



いやぁ~~~~~~!!!!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ