灰汁
掲載日:2012/11/04
ぎゅっとその小さい掌は俺の人差し指を掴んだ。父親になったんだ。心の中で思うが、何故だ。上辺だけ。煮込んで行く過程で出る『アク』のような、不要と思えるような感情に激しい自己嫌悪に陥った。「あなた……」見つめる妻の視線を躱しながら、いつもの男性観のラバーマスクを被り「頑張ったね」と涙を2粒流して見せた。
「うん……」
勿論、愛情はある、妻にも子にも。ただやはり『アク』のように上辺だけ。
半身になり涙を1粒流した。
『性転換した元男性、初の出産』今日のニュースでやっていた……まるで他人事だ。
人口子宮を妻の体内に取り入れ
俺の精子と見知らぬ女性の卵子から作られた受精卵を、着床させ、人工膣から出産した。
元男性の、現女性の。俺の配偶者。の出産。
アクをさっと捨てられれば、こんな気持ちにならなくていいのに……。
「あなた……」俺は向き直り、親指で涙を拭った。
歪に答える「愛してるよ」
さっと捨てられれば……。




