護る雪野と向日葵畑-01(typeC)
(typeT)=第三者がナレーション
(typeC)=主人公がナレーション
となっています。
目の前に広がる、向日葵、向日葵、向日葵。
俺は額に伝う汗を拭いながら、空を見上げる隣の美少女に目を泳がせる。
その少女の名前は夜風。下の名前は教えてくれなかった。
さて、話を少し前に戻そう。
俺の父は絵描きだった。俺が小学校に入学する頃にはもうテレビにも出ていたらしい。
だが、そこからが家族の転落の始まりだった。
中学を卒業する頃には、父の絵は一枚も売れなくなっていた。
そして、内職中の母が倒れた。すぐ病院に搬送されたが、母の容態はそんなに悪くなかったらしい。そこまでは一安心だったのだが。
母が退院したとしても、三人で豊かにやっていけるほどの金は無かった。
元々俺と父だけで精一杯だった。高校も退学するかもしれなかった。
俺達は一日一食の生活で我慢していた。
それからしばらく経った頃、家のポストにこんな広告が来ていた。
「バイト期間は6/1~8/31、日給××円 初日の午前4時、梅ノ木公園前にて」
全くバイト内容は書かれていなかったが、俺はその日給に目が眩み、疑いの一つも持たずに3時半に家を飛び出した。父には何も言ってはなかった。
だが、やはりおかしかった。
4時になって来たのは小汚い布を纏った謎の女だけだった。
女なのは一目瞭然だった。その茶色い長髪と胸の曲線を見れば。
そして俺は、その女に「何か」をされて、眠ってしまった。
その「何か」は思い出せない。「何か」されたことは確かなのだが。
そして俺は気付くと緑の草原の上に立っていた。
近くに少女が一人居る事に気付き、警戒しながらも近づくと、向こうから話しかけてきた。
「私は夜風、貴方は?」と。
夜風はやけに落ち着いていて、俺の慌てた質問にも冷静に答えてくれた。
「ここは、いったい何処なんだ」
「通称、"向日葵畑"。まんまだけどね」
「あの大きいドームは?」
「この国の動力源らしい」
「俺は何故ここに居るんだ?」
「恐らく、私と同じ。バイトにつられて、ここに連れてこられた」
「バイトって何なんだよ」
「この向日葵を"誰か"から護ること。ちゃんと護れる"何か"があるらしい」
「お前は誰だ?ここに来たんじゃなくて、連れてこられたんだろ?何で色んな事を知ってる?」
「そんなことより、前だけ見てて。"誰か"が来たら何かが始まるんだから」
俺は、今全てを知る前に何かやらねばならぬ事があると、心の何処かで感じた。