ヤサグレ聖女、バーサーカー騎士団長に相談する
騎士団長は話せる男だ。まさに異世界の近藤勇。王弟という最高位の身分ながら、豪快にして気さく、庶民から貴族まで幅広く人気が高い。騎士団でみても、「兄貴」って感じかな。ちなみに、エクセルさんも人気はありますが、ちょっと近寄りがたい高嶺の花的な存在だったようです。女子からの人気はダントツの一位。男子からも違う意味で憧れの人。
ただ、くうちゃんを頭につけて森から町に戻る姿を見た騎士たちは認識を改めたみたいです。
それがよかったのかどうかはわたしにはわかりません。
瘴気の調査や異世界渡りについての研究の他、聖女の情報もあらためてまとめようということになり、ミッション・インポッシブルなチームが編成されております。
その会議の後、騎士団長と二人で話す機会があり、これ幸いと相談をしました。ちょうど、エクセルは騎士団副団長を外れてから、騎士団の指導をする機会がなくなったので、たまには指導しろということで、この場にはおりません。チャンス。でも、いつ戻るかわからないから、さっさと相談です。
そう!相談事というのは、前々から「顔だけよくてあとはどうしようもない男」としてチラチラ出てきたやつのことです。
こいつがさ、聖女の末裔といわれている一族の男で、ほんとうに顔だけしか取り柄がない男なんですよ。
頭が悪い、性格が悪い。傲慢だが、能力はない。聖女の血筋を継いでいるということだけが自慢。それだって二百年以上前の話で、ほんとかどうかわかりゃしない。
没落寸前だったが、聖女召喚が成功して一躍注目を浴びる。顔がいいので、若い女子からはエクセルに次ぐ二番人気となった。頭が悪いからすぐ調子に乗る。
若者よ、見る目がなさすぎるよ。
そして、エクセルがいない時を見計らって、聖女たるわたしにちょっかいをかけてくる。「我らは夫婦となるべき、安心して嫁に来い」とか言ってくる。うざい。何様だよ。どこを見たら安心って言葉がでてくるんだ。相手いないの?そうか。一瞬、モテるがちょっと付き合うとバカがわかるので長続きしないんだな。
以下、騎士団長への相談の臨場感を感じていただきたいので、実況の形でご報告させていただきます。
聖女
お忙しいところ申し訳ないですが、ちょっとご相談があります。
騎士団長
お、どうした?なんなりと承りますよ。お姫さま。
聖女
聖女の末裔とかいう一族の男に迷惑してるんですが。
騎士団長
あー、あいつか。
聖女
あいつですよ…。
騎士団長
聖女の末裔ってことで最近調子に乗ってるって話は聞いているが。毒にも薬にもならない男だろ。
聖女
聖女の末裔ってだけであんな風に生きていけるんだー。すごーい。人生ガチャ成功だー。
その後は全部失敗してるみたいだけど。
騎士団長
まぁ、それはいなめないが。聖女の末裔が世を救うという予言があるんだよ。
政治的にも利用価値があるってこった。
聖女
うわ。やだ。生臭いぃ。でも、今のところ、なんの役にもたちそうにないですけどね。
大体、その伝説、ガセじゃなくて?信頼できる筋の話?
騎士団長
一応、国家創建時からの伝説だぞ。筋とかいうなよ(笑)
実際、聖女が召喚できた。聖女だって伝説の存在だったんだぜ。お前さんには迷惑なことで申し訳ないが。
聖女
まぁ、おとぎ話も真実が含まれてるっていいますからねぇ。そうかぁ。じゃあ、あいつがいつか役に立つこともあるのか……。ただねぇ。エクセルがいない時を見計らって、偉そうに「いつでも嫁いで来い」っていうのは勘弁してほしいんです。
騎士団長
ああ、承知した。俺が対応するから、エルヴァラードにはいうなよ。血を見るから。
聖女
一回言いつけたらちょっと洒落にならなかったので、それから自粛してます。だって、あそこの家、一瞬、本気で断絶させようとしたんですよ!万が一、何かあったら、それはそれで後味悪いじゃないですか!
騎士団長
気を使わせて悪いな。
聖女
エクセルが「あやつはおのれの家系に驕っているようですから、かろうじて貴族の末席にいるような状態の家、今回のような行動をするのであれば、本来の立場に合わせた方がよいですね。断絶でよろしいですか」とか真顔で言うので、止めましたよ!あいつ、嫌いなのに!こっちが気を使って対応しているのに、それなのに、能天気に「我らは夫婦になるべき」発言をかまされると、衝動的に頭を割りたくなります。無視しても恥じらってるって思ってるみたいで。
騎士団長
あっはっは!
聖女
笑い事じゃないですよ!エクセルは「大丈夫。合法です。叩けばどこの家でもひとつやふたつ、ホコリは出てくるものです」とか言ってくるし!
うわ、リアル粛清だ。鬼の副長、きたーーーーーっ!て脳内でツッコミましたよ!
もう、わたし、庶民だから!そういうの、慣れてないから!
騎士団長
しかし、恥じらってるって、すげぇな。聖女の評判も知らんのか。めでてぇなぁ。
聖女
ちょっと、それ、どういう意味ですか?確かに一時はシャーシャーしてましたけど!
騎士団長
あー、いや、そういうことではなくてだな。
聖女
まぁ、どうにかして下さるなら、それでいいです。あいつ、カッコつけて言ってくるんですよ。「王都カルディアのカフェ・ベルローズ、七番テーブルで待ってるぜ」って。なんですか、それ。待たんでいい。変に相手にすると長引くから無視してますけど。日時もないけどいつ?とか、ずっとそこにいるのか?とか、お前、閑だからなとか、わたし、いろいろツッコミたくなるのを我慢してるんですよ!
騎士団長
うわー、寒くなってきたぞ。
聖女
ある意味、あいつ、根性あるのか。いや、でも、ほんと、どうにかして下さい。
この相談の後、王家の決定で「聖女の末裔」として、しらっとやつは浄化についての任務?を任され、そのために地方に飛ばされた。
こちらとしては、ありがたかったけど、ちょっと心が痛かったのも事実です。
でも、すぐに怪我して療養のために王都に戻ってきた。まぁ、大した怪我じゃないみたいでよかった。ある意味、持ってる。
……なんだよ。わたしの良心の呵責はなんだったんだ。
でもさ、なんで嫌いなやつのことをあーだこーだ考えなくっちゃいけないんだ。
はぁ〜、実害はないんだけど、ほんと、どうにかして下さい。
お読みいただき、ありがとうございました。
楽しんでいただけたら、幸いでございます。
もし、よろしければ、こちらの連載作品も覗いてみてください。
『セレンディピティ・クロニクル
〜魔力量が少ないけれど、冒険者になってみたら想定外の毎日が意外に楽しいです〜』




