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不可思議なバラバラ死体 2




俺が現在分かっている事件の内容を頭の中でまとめていると、カレウスが声をかけてくれた。


「旦那様、お紅茶のお時間ですわよ。いくら忙しくても紳士たるものお優雅にお紅茶をお飲みにならないと」


「なあ俺が呼ばれたのが早朝で、カレウスは当然その前から騎士団に捕まっていたわけだが、このお茶はどうやって入れたんだ?ティーセットなんて持ってきてないだろ?」


俺の灰色の脳細胞が余計なことに気づいてしまう。

妙な言葉遣いをしているこいつが昨夜、ナニをしてたかは知らないが、夜中に捕まってしまったのだ。

普通に考えてティーセットを持っている訳がない。

いつもメス等の手術道具を持ち歩いてる医者とは違うのだから。

ではこいつはどこから出した?それとも借りたのか?


2時間ドラマでお馴染みの親しい人との食事時に事件に関する重大な何かが分かるかも知れないと、事件とは全く関係無さそうなことを考えてみる。

どこからどう見てもメイド服を着た不審者だが、よく見るとガッチリした筋肉にむっちりとした体をしている……どう見てもメイド服の不審者にしか見えない。


本人曰く、みんな大好き爆乳ムチムチオネエさんメイドらしい。

ギリギリ嘘では無いかもしれないし、自認は自由であると思うが、景品表示違反だろ。

惜しむらくはまだこの法律が成立してないので、こいつを告訴できない。

爆乳ムチムチお姉さんと聞いて雇ったのに、こいつが来た時は貴族の特権と法知識を駆使して訴えようとしたが無理だった。

司法の欠陥なので早急に何とかしたい。


ちょっとした若気の至りを思い出していると、どうにもカレウスのスカートをガン見してしまっていたらしく、彼と目が合った。

なんか負けた気がした上に、恥ずかしがるのも不本意なので再びスカートに目線をやる。


「いや〜ん♡ 旦那様のえっち♡ メイドの秘密を暴こうなんてダメよぉ〜ん♡ メイドのスカートの中には夢とロマンがいっぱいなのよ♡」


「カレウスのスカートの中には悪夢と絶望しか入ってないだろ……」


お前のスカートの中にあるのはポケットモンスター(隠喩)だろ。


しかしティーセットの出処はどこなのだろうか?

メイド服に細工がしてあるか、スカートの中にマジックバッグでも隠しているのか。

全く閃かない。

残念だがドラマにありがちな展開にはならなかったらしい。


そんなどうでも良いことを考えて、軽いつまみと紅茶を飲んで頭をリラックスさせる。

寝起きはいい方だが、いきなり叩き起され、朝食もとってないのに謎解きは正直辛かった。


意外と言えば失礼だが、カレウスが用意してくれる食事は非常に美味しく、掃除や整理整頓も上手なので使用人としてはいい腕をしている。

彼が用意してくれたお茶と軽食をつまみながら、錬金術で作ったメモ帳に、先ほど頭の中で整理した事件のことを書いていった。





「相変わらず難しそうな顔をしてるな少年」


ゆっくりお茶を飲み、情報をまとめてメモ帳に書き終えたところで待ち人が来てくれた。


「もう少年呼びされるほどの年齢でもないですよ」


「いやいやすまないね。どうしても君のことは大人の皮を被った少年だと思っていたので、成長してもなかなか実感できなくてね」


そう悪びれなく笑う彼女はグナー・デルン伯爵令嬢。

父は王国随一の変人の研究者であり、数代前から医学と科学で国に貢献しているが、領地を断り続けながらも伯爵にいる宮廷貴族だ。


今日は珍しく元気にしているが、研究中などの際はよれよれの白衣を着て、身だしなみが乱れている典型的な研究者となっているダウナー系の女性である。


「歳上ぶってますけどグナー伯爵令嬢と私は3つしか変わりませんよ」


「ははっ未婚の3歳差は大きく違うのさ。宮廷内でもまだ20歳ならギリギリ陰口で済まされるが、23にもなると上からも下からもネチネチうるさいんだ。誰かさんが宮廷から出ていって、婚約が流れてしまったからねぇ……」


「何やら耳が遠くなったようです。 聞こえませんでした。 これは病気の前兆やもしれません! 早く終わらせて家に帰りたいので死体の確認をお願いします!」


都合の悪いことは聞こえない。

彼女とは姉の縁で婚約関係だったのだが、色々な事情と問題があり流れてしまった。

俺の立ち位置はかなりややこしいので、正直貴族社会と距離を取りつつ、野心もないですよ!とアピールし続けなければならない、非常にめんどくさい立ち位置なのだ。



「医者を前に仮病を使うなんてどうかと思うよ。 まあいい続きは今度にしよう。 それじゃご遺体と対面しよう」


「こちらです」


 聞こえているじゃないか。というグナー嬢の声は聞こえないフリをして遺体の元に案内した。


「ほう? これはこれは。 う〜ん何とも酷いものだな。 すまんが1日もらうよ」


「はい。 この方の無念を晴らす為にもどうかお願いいたします」


 遺体をグナー嬢に預けたし、検死が分かるのは明日以降となれば、あとは騎士団に任せて帰ってしまっていいだろう。

 あんまり仕事が来ないとはいえ、事務所を開けっ放しというのも気が引ける。


 案外検死の報告が上がる前に、聞き込みや付近の捜査で何か新しい証拠が見つかって騎士団で解決出来るかもしれないしな。


俺はブーツに声をかけて、カレウスを引き取って帰路に着いた。







 翌日、再び事件現場を訪れるとブーツとグナー嬢が話し合っていた。


「やあブーツ卿にグナー伯爵令嬢。 事件の捜査はどうなっていますか?」


「はっ! 目撃者は見つかりませんが遺体のものと思われる四肢は見つかりました! 首は捜索中です!」


「ありがとうございます。 あとで詳しく聞かせてください」


 ブーツが元気よく答えてくれる。

 首がまだ見つからないか。身元の判明は難しそうか。


「こっちも良い話はないぞ。 鎧が邪魔なのだが、万が一にでも貴族の紋章でも入っていると面倒事になるから、剥がすのに手間取っている。 遺体は間違いなく切断してから燃やされている。 不思議な点はわざわざ切断面も焼いているところだな。 あと首周りの損傷が特に酷い」


「ありがとうございます。 仮に鎧を剥ぎ取ればどのような事が分かりますか?」


「そりゃ年齢や死因などはある程度、分かると思うがあまり多くの情報はないと思うぞ」


「そうですか。それではもう鎧はいいでしょ。 家宝だとか紋章が入ってたとか言われたらめんどくさいですからね」


 四肢は見つかったのに首はない。

 首元の損傷が激しい。

 犯人は何か首に思い入れがある猟奇殺人犯なのか、それとも儀式とかで首を使うのか?


 例えばだが犬神のように首だけ出して生き埋めにして、恨みを溜めて首を刎ねる的な儀式もある。

 これは完全に黒魔術系で俺の知識では足りてないので、後で調べるか聞くとしよう。


 他には織田信長がやったような頭蓋骨を杯にするみたいな?

 確かキリスト教でも聖人の頭部を祀り、聖遺物にするとかあったはずだよな。


 うーん首は魔術や呪術的な意味合いも大きいから難しい。


 素人が難しく理由を考えるよりは地道に目撃者を探したり、痕跡から追う方がいい気がする。

 捜査の基本は地道に足で稼ぐものなのは、この時代も日本でも変わらない。


 

 疑問点は多いな。

 まず何故燃やした?

 人通りの少ない夜の雑木林なら燃やすのはリスクが高い。


 次にわざわざ何故切断という手間のかかることをした。

 最悪首だけ持ち去れば身元は分かりにくくなる。


 手間をかける必要があったのか。

 やはり俺が知らない儀式的な要素の線もある。

 ここは奇跡も魔法もある世界だ。


 全ての不可能を除外して最後に残ったものが如何に奇妙なことであってもそれが真実となる。


 かのシャーロック・ホームズも言ってたらしい。

 らしいというのはホームズを読んだことないからだけど、この言葉はかなり正しい。

 何でもありなこの世界だとあらゆる可能性を視野に入れなければならない。

 これは本来こういう言葉の意味らしいし。


 正直、何故俺がこんなことを?  と思う気持ちもあるが、それでも殺された方の無念や、遺族の悲しみを和らげるためにも何とかしてやりたいものだ。



「レフ卿! レフ・アネモヌン伯爵子息!!」


「えっ!? あっすみません。 つい考え込んでしまって……」


 グナー嬢に声を掛けられて、思わずビクッとなりながら謝る。

 どうやら話しかけてくれていたのを無視してしまっていたらしい。


「死体の検死をこれ以上しなくても良いのなら報酬のはなしをしたいのだがいいかい?」


「もちろんです。 お代はおいくらですか?」


「ならいつも通りポーションを頼むよ」


「分かりました。 ではまたギルドを通じて納品しますね」


「よろしく頼むよ。 また何かあれば声を掛けてくれ。 余裕があるときなら私が見てやろう」


 グナー嬢はそういうと帰って行った。

 彼女を見送った俺はカレウスに声掛けることにした。


「カレウス。 このまま教会に行って、黒魔術系の本を読むか、話を聞くがどうする? 先に帰っても構わないぞ」

 

「あらお優しいのね。 けど大丈夫。 お供してあげるわよん」


 教会にカレウスを連れていくのは、カレウスが嫌な思いをしないか心配だったが着いてきてくれるというのなら来てもらう。

 腕が立つ奴なのでそばに居てくれると安心できるからな。

 俺は2人で教会へと向かった。

 

 

 





 



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