天雷審判
サイコロが、空中で回転する。
森の奥では悲鳴。
巨大な影――オーガが姿を現す。
三メートルはある。
若い冒険者二人は完全に腰が引けている。
「終わりだ……」
男が呟く。
俺はサイコロを見る。
成功率六分の一。
外れれば死ぬ。
当たれば奇跡。
「……上等だ」
振る。
コロコロと乾いた音。
止まった出目は――
6。
世界が一瞬だけ静止した。
【特大効果発動】
【天雷審判】
空が裂ける。
黒雲が渦を巻き、
白銀の雷が柱となって落ちた。
轟音。
衝撃波で森がなぎ倒される。
オーガは一瞬で蒸発した。
地面には巨大なクレーター。
そして焦げた匂い。
「……うそ……」
冒険者の女が呟く。
俺は立ち上がろうとして膝をつく。
全身が痺れている。
【雷耐性:微 → 小 に上昇】
さっき自分に落ちた雷の効果らしい。
だが表示は続く。
【副作用:周囲地形大規模損壊】
【災厄値:3%】
「副作用デカすぎだろ……」
その時、遠くの空に光が走った。
魔法通信だ。
街の方向から鐘の音が鳴り響く。
女が青ざめる。
「今の規模……観測されました」
男が言う。
「騎士団が来るぞ」
鎧の音が森の奥から響き始めた。
数は多い。
本気だ。
俺は笑う。
「いきなり指名手配か」
女が真顔で言う。
「災厄職は国家管理対象です」
なるほど。
俺はサイコロを握る。
だがここで振れば、
さらに目立つ。
「逃げるぞ」
森を抜け、街とは反対方向へ走る。
だが上空に魔力探知の光。
逃げ場は少ない。
背後から叫び声。
「発見次第拘束せよ!」
完全に俺だ。
災厄ギャンブル師。
転生二日目で国家敵対。
悪くない。
だが――
捕まるのは面白くない。
俺は夜の街外縁部へと走り込んだ。
裏路地。
薄暗い通路。
そして。
鉄格子と檻。
奴隷商の一団だった。




