最初の一投
最後の賭けは、外れた。
競馬場の大型ビジョンに映る結果。
俺の本命は、最後の直線で沈んだ。
「……まあ、知ってた」
45歳。
独身。
借金持ち。
人生ずっと、こんな感じだった。
勝てそうで勝てない。
掴めそうで掴めない。
帰り道の横断歩道。
信号は赤だったらしい。
ブレーキ音。
強烈な光。
そして――無音。
⸻
目を開けると、真っ白な空間だった。
「ようこそ」
目の前にいたのは、ゆるい笑顔の男。
白いローブを着ている。
「……誰だよ」
「神様、でいいよ」
軽い。
思ってたのと違う。
「君、死んだよ。トラック」
「やっぱりか」
「でもねえ、君の魂、ちょっと面白いんだよね。異常に“運”に執着してる」
そりゃそうだ。
俺の人生はギャンブルだった。
「だから君を、別の世界に送る。剣と魔法の世界。職業が与えられる世界だ」
テンプレか。
「何かチートくれんの?」
「いや、適性通り」
神はニヤリと笑った。
「――じゃ、いってらっしゃい」
「は?」
足元が抜けた。
⸻
次に目を開けた時、俺は森の中に立っていた。
風が吹く。
鳥の鳴き声。
「……マジかよ」
その瞬間、頭の中に声が響く。
【職業を授与します】
視界に光が走る。
【職業:ギャンブル師】
「おお、まんまじゃねえか」
だが、続きがあった。
【鑑定結果――災厄指定職】
空気が一瞬で冷えた気がした。
「……災厄?」
半透明の画面が表示される。
――――――――
職業:災厄ギャンブル師
説明:
運命を歪める者。
恩恵と破滅を同時にもたらす存在。
過去に都市一つを消滅させた記録あり。
国家指定危険職。
――――――――
「ちょっと待て」
さらに、手の中にサイコロが現れる。
【能力:運命すごろく】
出目によりランダム効果発動
※効果は極端
「極端ってなんだよ」
その時、森の奥から悲鳴が聞こえた。
若い男女の声。
助けを求めている。
俺はサイコロを見る。
使えば助けられるかもしれない。
だが、逆もある。
大当たりか。
大爆死か。
俺は小さく笑った。
「……結局、また賭けかよ」
心臓が高鳴る。
人生最後の賭けのつもりだったのに、
どうやら延長戦らしい。
「よし」
サイコロを握る。
「次は、当ててみせろ」
俺は振った。
出目は――
(続く)




