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窓にいた女性

作者: 奇奇

その家は、静かに佇んでいた。そして家の前に車が一台停まった。車の窓が開き男が顔を出す。

「ようし、着いたぞ。ここが新しい家だ」

蓮沼家の父親が言った。妻の明美が眠っている浩介を起こす。長女の奈央は車から降りて、家を見上げた。

「綺麗な家ね」

続いて車から浩介が、眠たそうに降りてきて家を見るなり

「うわー!新しい家だ!」

と声を上げた。

明美は降りると、車に積んである荷物を家に運び出した。

「ほら、お前らも手伝え!」

父親の和樹が家を眺めている二人に声をかけた。

「はーい」

と、奈央は少し面倒くさそうに返事をした。奈央はそれからしばらく家を眺めていた。家は二階建てで、ちょうど上に四角い窓があってそこから髪の長い女性がこちらを見ていた。

「えっ」

奈央は咄嗟に下を見た。荷物を家に運ぼうとしている母親と父親が居て、それを楽しそうに見ている弟の姿があった。奈央はもう一回、上の窓を見上げた。もう窓にその女性の姿はなかった。


「女の人?」

明美が運んできた荷物を玄関の靴箱の上に置いてからそう言った。その隣に、奈央が最後の荷物を置く。

「見間違えたんじゃないの?」

「本当だって」

「じゃあ、確かめに見に行けば?」

明美がそう言うと、奈央は困惑した顔をした。

「どうしたの?」

二人の横から弟の浩介が現れた。浩介はまだ幼い。上の階の髪の長い女性の話をしたところで、大げさに怖がられても困る。特に、浩介はおばけなどを信じるタイプの人間だからだ。前に住んでたマンションでも、夜に怖くてトイレに行けないで泣いていたこともあった。その時に、浩介がおばけがいるかもしれないと言うのだが奈央は一回もそのマンションで幽霊やおばけを見たことが無かった。

「何でもないよ」

奈央は素っ気なく返した。浩介が舌打ちをした。母親も浩介が怖がりなのはわかっているみたいで、喋らなかった。

「教えてくれたって良いじゃん!」

奈央はため息をついた。

「本当に何でもないのよ」

「えー本当かな?」

浩介がしつこかったので、奈央は無視して荷物を

持って廊下を歩き出した。後ろから浩介の舌打ちがまた聞こえた。奈央はそれでも振り返らなかった。すると、今度は階段を上がってく音が聞こえた。奈央は咄嗟に振り向いていた。浩介だ。浩介が二階に上がって行った。

「ちょっと浩介!」

奈央が声をかけたが、浩介は二階に行ってしまった。奈央は母親と目が合った。母親は微笑んだ。奈央は荷物を置いて、二階に向かった。


「浩介ー?」

奈央は浩介を探していた。二階には二つ部屋があって、どの部屋もとても綺麗だ。前に人が住んでいたとは思えないぐらいだ。

「いい加減にして!」

奈央が浩介に向かって言った。しかし、浩介から返事がない。奈央は少し怖くなってきた。その時、後ろで音がした。振り返ると部屋に入ってく裸足が見えた。

「浩介!」

奈央は部屋に駆けていく。すでに部屋に浩介の姿はない。どこかに隠れているのだ。隠れそうな場所を探す。ふと、視界の先に窓が見えた。奈央は窓に近づいた。微かに自分が反射して映っている。窓から自分の後ろに誰か居るのが見えた。髪の長い女性が後ろに立っていた。奈央の体が硬直した。頭も手も足も動かすことが出来ない。

やばい・・・・・・逃げなきゃ!

だけど奈央は動けない。その時、奈央の手に何かが触れた。

「きゃっ!」

悲鳴を上げると同時に、体を動かすことが出来た。奈央は自分の手を見た。手を握っているのは

浩介だった。そして髪の長い女性は消えていた。

「お姉ちゃん!どうしたの?」

浩介が心配そうな顔をしている。

「もう!浩介!どこに隠れていたの?」

奈央が言うと、浩介が指で押し入れをさす。奈央はため息をついた。

「良い?これからは二階に一人で上がらないで」

「えっ」

浩介が疑問の声を出してる横を奈央は通り過ぎて部屋を出た。後ろから浩介が部屋を出る足音が聞こえた。奈央は振り返って浩介の両足を見た。靴下を履いている。

「嘘・・・・・・」

奈央はさっき部屋に入ってく裸足を見たことを思い出した。

「どうしたの?今度は」

浩介が駆け寄ってくる。そして「うっ」と声を出した。浩介の顔を見ると酷く引きつった顔をしている。

「何?何なの?」

奈央が訊くが反応は無い。浩介の視線の先を見た。二階の廊下には細長い窓があってその窓の外側を髪の長い女性が通り過ぎていく。二人は怖くて抱き

合った。                 終


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