夕暮れにコーヒーを一杯
いつも通り仕事をこなし、いつも通りの時間にオフィスを出る。
何も変わりのしない日常。
本当に自分はこのままで良いのだろうか。
そんなことを考えながら帰路に就く。今日は違う道から帰ってみよう。
何故かは分からないが、今日はなんとなくそう思った。
心のおもむくままに歩いていると、一つの自動販売機が目についた。
見覚えのあるコーヒーが並んでいる。
「このコーヒー、昔から好きなんだよな。」
半年前に亡くなった父親との懐かしい記憶を思い出した。
「人生上手くいかなくても、願うことだけはタダなんだ。まずは願うことから始めてみろ。これ、人生の教訓な。」
そんなことを言ってたかな。
夕日に照らされ、ふと、涙がこぼれていることに気づいた。
「明日からまた頑張ってみようかな、願うことだけはタダなんだから。」
何気なく差し出した160円に、背中を押してもらった気がした。