山田のおばあちゃんへのお見舞い
山田のおばあちゃんのお見舞いに行く日、私はスーパーでサクサクのクッキーを買って、彼女の家に向かった。
救急車の騒ぎから数日経ち、どんな様子か少し心配だったけど、玄関を開けて迎えてくれたおばあちゃんは、思った以上に元気な笑顔だった。
『あら、わざわざありがとう! クッキー、美味しそうね』と、早速お茶を淹れてくれるその姿に、ほっと胸を撫で下ろした。
リビングに座ると、山田のおばあちゃんは、私の母の話をしてくれた。
母は若くして亡くなったけど、昔、この家に遊びに来ては、山田のおばあちゃんと畑の野菜を交換したり、お茶を飲みながら笑い合ったりしていたという。
母は地域で「たくあん漬けの名人」として有名で、山田のおばあちゃんもそのたくあんのファンだったそう。
『貴子ちゃんのお母さんのたくあん、シャキッとしてて、味がしっかりしてたのよ。懐かしい……』
と、目を細めて話す彼女の声に、私の知らない母の姿が浮かんで、胸が温かくなった。
おばあちゃんは、最近の暮らしについても話してくれた。
息子夫婦から同居を勧められているそうだが、『まだ一人で大丈夫よ』と笑う。
とはいえ、高齢の親を心配して、息子夫婦は時折、孫を連れて食事を作りに来てくれるらしい。
『お嫁さんが気さくな子だから、気兼ねなく頼れるの。ありがたいことだわ』
と、穏やかな口調で言う彼女の言葉に、家族の絆の強さを感じた。
話の合間に、私は日だまりの会のことを少し話した。
佐藤会長が息子さんに連絡を取ってくれたこと、近所の若いお母さんが救急車を呼んでくれたこと。
山田のおばあちゃんは
『あのサロン、ほんと良い人たちばかりね。私もまた、顔出してみようかしら』
と笑った。
その言葉に、日だまりの会のつながりが、こうやって地域に根付いているんだと実感した。
『体調をみて、ぜひ!あ、でも、無理はしないでくださいね』
と、話して、山田のおばあちゃんの家を後にした。
ふと、また、ノリ子さん、山本のおばあちゃん、藤田のおばちゃんのことが頭をよぎった。
山田のおばあちゃんは
『そのうちに、何も無かったように丸く収まると思うけど……3人共、頑固なところがあるからねえ……』
と話していたのを思い出す。
やはり、私が解決出来る問題ではない。
かと言って、皆で話し合うとなると、問題を大きくしてしまう気がする。
会長に相談しながら、気長に解決するしかないんだろうな……
そう思いながら、家の玄関の鍵を開けようとして、玄関脇に、サボテンの鉢があるのに気がついた。
つぼみがあるから、もうすぐ咲くのだろう。
でも……誰が置いていった?
電話もラインも来てないし。
とりあえず、雨の当たらない所に移動させて、私は、家の中に入った。




