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介護問題

サロン『日だまりの会』では、高齢者たちが集まり、今日も笑い声と昔話が響き合う。

今日、話題の中心は中林さん、85歳の女性。

他県から嫁いできた彼女は、地元の方言や習慣を覚えるのに苦労したとよく話す。

『【ねまって】って何?って、最初は戸惑ってね。

座って。ってわかるまで、わかったフリしてたわよ』

と笑う彼女の声は、どこか誇らしげ。


しかし、最近はご主人の軽い認知症や、嫁への不満が話題の中心になっている。

『うちの嫁、家事をろくにしないの。冷凍食品ばかりよ』

と、ため息混じりにこぼす。


会長の佐藤さん(73歳)は穏やかに相槌を打ち、争いを避けて、話を丸く収める。

鈴木さん(80歳、田中さんの隣人)も、時折、田中さんの近況を話す。

田中さん(83歳、男性)は認知症が進み、サロンに来られなくなっていた。


中林さんのご主人の物忘れが目立つようになり、彼女のサロン参加も減っていた。


以前は田中さんの昔話で盛り上がった会だが、今は中林さんの介護の話や愚痴が中心だ。


地域コミュニティであるこのサロンは、彼女にとって愚痴をこぼし、笑顔を取り戻す大切な場になっていた。

サロンが終わった、ある日の夕暮れ、佐藤さんが私と中林さん、鈴木さんを呼び止めた。


佐藤さんが静かに切り出した。

『中林さん、ご主人、大丈夫? 最近、サロンに来るのも大変そうね……』

中林さんは疲れた笑みを浮かべた。 

『ありがとう、会長。主人の物忘れ、だいぶひどくなってね。

昨日も私の名前を忘れて『あんた、誰?』なんて。デイサービスは週2回だけど、夜は私が面倒見てるのよ』


私は心配で口を挟んだ。

『中林さん、一人でそんなに? 介護、負担じゃない? サロンに来ると、気分転換になるよね。地域のみんなと話すの、楽しいもの』


中林さんが目を潤ませた。

『貴子さん、優しいね。ほんと、サロンは私の生きがいだわ。地域の皆と話すと、介護の重さが少し軽くなる。

この繋がりがなかったら、毎日もっと孤独だったと思うわ』


鈴木さんがため息をついた。

『中林さん、うちの隣の田中さんもそうだったわ。認知症が進んで、今はデイサービス毎日よ。

でも、サロンにはもう来られない。地域の集まりって大事だけど、メンバーが減ると、運営も大変になるわね』

佐藤さんが眉を寄せた。

『鈴木さん、確かにその通り。でも、このサロンは地域コミュニティの心なの。田中さんも中林さんのご主人も、ここで笑顔になってた。地域の繋がりが、孤独を和らげてくれるわ』

私は頷きながら言った。

『そうよね。サロンって、ただ集まるだけじゃなくて、みんなで支え合ってる。地域の人がいなきゃ、こんな温かい場所、できない。中林さん、時々でも来てくれたら、嬉しいな』


中林さんが微笑んだ。

『ありがとう、貴子さん。サロンに来ると、昔の自分に戻れる気がする。主人の介護でいっぱいいっぱいだけど、こうやって地域の皆と話せるのは、本当にありがたいわ』

佐藤さんが中林さんの手を握った。

『中林さん、無理しないでね。サロンはいつでも待ってる。地域のみんなで支え合って、この会を続けていきたいわ』


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