山田さん復帰と山本さんからの深夜の画像
山田のおばあちゃんが日だまりの会に復帰した日、公民館はいつもより少し賑やかで、『百歳体操』の輪に、彼女の笑顔が戻ってきた。
みんな心配していた分、喜びもひとしおで
『よかった!』
『元気そうで安心した!』
と声が飛び交った。
でも、お茶会の雑談の中で、誰かがぽつりと呟いた。
『他人事じゃないわよね。うちも段差、気をつけないと』
他のメンバーも頷き
『そうそう、歳とると、ちょっとしたことで転ぶから』
と話は自然と『気をつけようね』に落ち着いた。
日だまりの会らしい、温かくて現実的な空気だった。
私は、最近、ノリ子さんのことや、山本のおばあちゃんのことを考えるのをやめた。
ノリ子さんの心の波は、私にはどうにもできない。
山本さんの愚痴や、元地主のお嬢様としてのプライド、難病の話、副会長とのいざこざ……考え出すとストレスになるだけ。
第一、他人を変えることなんてできない。
そんなある日の深夜、突然、山本さんからラインで花の写真が送られてきた。文章はなし。
真夜中の通知に驚きつつ、意味不明なメッセージに首をかしげた。
翌朝、思い切って電話をかけると、山本さんは明るい声で言った。
『庭の花が綺麗に咲いたから、見せたかったのよ!』
私が
『画像だけだと意味がわからないです』
と伝えると
『だって、私、スマホで文章書けないんだもの』
とあっけらかん。
少しイラっとしつつ
『だったら、電話で、「花の写真送るよ。」って教えてほしいです』
と言うと、彼女は
『私の子供たちは何も言わないわ』
と返してきた。
子供と他人じゃ違うのに……そんなことを思うと、彼女の「高齢者らしい」無神経さにイライラしてきた。
山本さんは、難病を抱えながらも、こうやって花の写真を送ってくるような人だ。
彼女なりの「つながりたい」気持ちなのかもしれない。
副会長との関係や愚痴は相変わらずだけど、こんな小さな瞬間が、陽だまりの会を特別な場所にしているんだろう。
最後に
『今のスマホは、音声認識で、言葉で、文章を書けますから、教えましょうか?』
と話すと
『覚えられないし、いらないわ。今まで、困った事無いもの』
と。
なので
『夜中のラインはやめてくださいね。何ごとかと思いますから』
と言うと
『あら、そう?だって、眠れなかったんですもの。綺麗だったでしょ』
私の話……聞いてない……
高齢者と付き合う。って、身内ならともかく、他人だと、こうも大変なんだな……
私は、ソファーに沈み込んで、そのまま眠ってしまった。




