偽者王子
魔物とか魔法とかある世界の話
だけど、今回はそういったファンタジーではなくて恋愛。。。かな!?
「君、もう来なくていいから」
荷物を運ぶ仕事をしていたお店の主人から、今朝突然解雇を告げられた。
どうも、取引先が縮小したらしく、人手が余るらしい。
そう、この瞬間私はいとも簡単に無職になった。
こんなこと、珍しいことではない。
私が暮らすジン国では、貧富の差が激しい。
金持ちは、より裕福に、貧乏はその日生きていくのでやっとだ。
私の母は病気で寝込んでいて、父は物心ついた時からいない。
妹2人と弟ひとり、私が稼いで食べさせないと……
昨日から家族みんな何も食べていない。
私はトボトボと歩いて、町外れの貧民層が暮らすスラム街にある家に戻った。
「おかえり!リリ!」
「あそぼ!あそぼ!」
「ただいま。でも、すぐに出かけるから」
末っ子のネネはまだ3歳、私と12歳離れているミミは6歳だけどしっかりしている。
ふたりともお腹空いてるのをぐっと我慢してるのだろうな。
「カイは?」
「スエ叔母さんの手伝いに行ってる」
「そっか。お母さんはどう?」
「咳は昨日より出てないよ」
「よかった。じゃ、帰り遅くなるかもしれないけど、食べ物持って帰るからいい子で待っててね」
「うん!」
「いってらっしゃい!」
ふたりの笑顔に見送られて、私は街に出掛けた。
なんとか食べ物を持って帰らないと。
私はこれまでお世話になった人達に仕事がないか訪ねて歩いた。
こんな日に限って仕事がなかったり、知り合いが見つからなかったり。
路地裏で座り込んで地面を眺めて、考えていた。
お腹すいた……
こうなったら盗みでもするか…でも、それは弟妹たちに顔向けが出来ない。
せめて、仕事を……
路地の奥を眺めていると、女性が男を部屋に招き入れていた。
おそらく娼婦だろう。
私はきゅっと唇を噛んで花を売る店に行った。
花を売る店とは、街の隅にある身体を売ってお金にしたい人と買いたい人が集まる店だ。
実際に入るのは初めてだった。
お店の中は結構の人がいて、椅子はなく立って飲食が出来るスタイルだった。
お酒とタバコの匂いがする。
部屋の隅でキョロキョロしていると、早速おじさんに声をかけられた。
「ここ、初めてかい?」
「は、はい」
「そうかい。いくらならいい?」
「え?」
いやらしい目つきで私の腰に手を回してきたおじさんに戸惑いながらも、私は覚悟を決めてきていた。
「200ゼニ」
これだけあれば3日はご飯に困らない。
「…150ゼニで買うよ」
「…わかりました」
私はおじさんに連れられて店から出ようとすると、フードつきマントを深く被った男が私たちの前に立ちはだかった。
「600ゼニ払う」
「な!横取りはなしだぜ兄さん」
「150は安すぎだ、わたしなら600払う」
「ち」
おじさんはフードの男に気迫負けしてブツブツ文句を言いながら去って行った。
私はフードの男を見るとその男の目つきは鋭く、私をじっと見ている。
「あの…」
「行くぞ、ついてこい」
私はこの人に600ゼニで買われるのか。
そんな大金今まで持ったことがない。
私は運が良かった。
黙って男について行くと小さな家にたどり着いた。
扉を開けて待っている男はまるで中に入れといった様子だったので中に入ると普通の部屋だった。
扉を閉めてガチャリと鍵を閉める音が響く。
これから起こることを私は出来るだけ考えないようにしていたが、身体がこわばっていた。
大丈夫、たった一回抱かれるだけじゃないか。
男はフードを脱ぎ出したので、私も俯いて服を脱ごうとした。
「待て、脱がなくていい」
「え?」
不思議に思って顔をあげると薄い金色の髪で整った凛々しい顔立ちをした、騎士のような制服姿の男が私を観察している。
「名前はなんという」
「リリです」
「歳は」
「18です」
「読み書きは出来るか」
「少しだけなら…あの?」
「これまで何人と寝た」
「……」
まるで尋問状態からこの質問に対して私は答えを躊躇った。
だって…ゼロって言ったら……
「じゃあ、質問を変えよう。病気などあるか」
「ないです」
「では、なぜそんなに細い」
「食べてないから……」
そう私が口にした瞬間、お腹のグー~ーという音が響く。
私は恥ずかしくなって、みるみると顔を赤くすると
男は少し驚いて、小さく笑って棚にしまっていたパンや飲み物を準備してテーブルに置いた。
「食べながら話そう。そこに座って」
「ありがとうございます!」
パンを食べながら、弟妹にも持って帰ってはダメか後で聞いてみようと思った。
「リリ、君は身体を売ってまでお金がいるのか」
「はい。」
「なぜか聞いてもいいか」
「母と弟妹を食べさせないといけないから」
「……そうか。では、いい仕事があるのだが、やらないか」
「え」
「その代わり、当分家族とは会えなくなる。君の家族の生活は私が保証しよう」
「あの……危険な仕事ですか」
身体の臓器を売られるとか、奴隷として遠くの国に売られるとか聞いたことがある。
「かなりね。前金で2000ゼニを支払う。その後一月10000ゼニ、雇用が続く限り払い続けよう」
「そんなに!?」
家族みんなが余裕で暮らせる金額だ。
私はどんなヤバい仕事でも、このチャンスは逃してはいけないと思った。
「やります!」
こうして私は、名前も知らない男の仕事をすることになった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
スピンオフではないけれど。。。
どうしても書きたかったので!
もし、お時間がありましたら『あなたの隣に……』も読んでいただけると
あーこいつはアイツとつながってる話かーなどがありますので
もしよければ読んでくださいますと嬉しいです。
https://ncode.syosetu.com/n0430gs/5/
今回は完結まで書き上げてますので、全部で5話完結です^^