4:結局はレベリング
ゲーム開始から二日目。私は親が居ないかつ連休なのをいいことに、朝からゲームに興じていた。
「そういえば私、楽器持ちの魔力極振りだったね」
街から出て、まず口に出たのはそれだった。一度、ナイフを買って装備しようとしたら、手からすっぽりと抜け、明後日の方向に吹っ飛んだのだ。装備させまいという頑なな意思を感じるほどに。
まともな武器も持てないのに、どうやってモンスターを倒せばいいのか。
魔法使いじゃないから魔術もまともに使えないのにどうして魔力極振りにしたんだろう。
「……あ、くしゃみか」
それで、面白そうだと思ったからそのまま極振りにしたんだった。
リアルの自分から離れようと、思いつくままに行きあたりばったりで行動しまくったのが仇になったかな。
とりあえず、自分のステータス確認っと。
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名前:ヨクラートル
レベル:5
ジョブ:バード
使用武器:楽器
ステータス
筋力:0 防御:0 魔力:(140+14)×2=『308』 敏捷:0 幸運0
スキル
【魔力強化】【死からの復活】【呪詛返し】【作り物の顔】【笑顔の仮面】【私に近付くな!】【不審者】【禁じられた遊戯】【甘言】
装備
頭:なし
体:『初心者のシャツ&パンツ(黒)』
足:『初心者のブーツ』
武器:『初心者の楽器【マンドリン】』
装飾品:『禁じられた仮面』(装備条件:魔力値100以上 効果:プレイヤーの筋力値・防御値・敏捷値・幸運値全て半減 強化値含め魔力2倍)
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……なんか、スキル名が不穏。あと、仮面の存在感と魔力の極振りね。
スキルは【魔力強化】【死からの復活】【呪詛返し】は魔力関係あるスキルだけど、後のはNPCの警戒心あげるやつ、精神ダメージ無効、低確率カウンター、ヘイト、確率デバフとデバフ。
どうなのこれ。私ゲームに詳しくないから分からないのだけれど。
「まあ、ガチ勢じゃないし。ゆっくりやっていこう」
そう、自分に言い聞かせて周囲を見回す。今いるのは、街を出てすぐの草原。
ウサギのモンスター『ホーンラビット』がたくさんいる場所だ。
やっぱり、どうして二つ目のクエストが発注されないのか分からなかったけれど、とりあえずレベルを上げてみることにした。
攻略サイトでも、レベルが必要条件になっているクエストがいくつかあると、書き込まれていたし。
「まずはレベル10を目指して頑張ろー」
と、1人で自分を鼓舞した。
×
草をモシャモシャと食べているその無防備な背中にそっと近付き、
『ウサァ~ッ!』
「……逃げられちゃった」
石を投げようとしたら気付かれてしまった。……というか、結構まだ距離あるよ? 10mくらい。
……もしかして、NPCの警戒心ってモンスターにも有効なのかな。記載しろよ。
「うーん、まずはどうやって警戒心を解くか、ってのが大事かもねぇ」
一般NPCの警戒心を解くように、ねぇ……。
「……はっ!」
そういえば私、バードだった。なにか音楽系の能力で、警戒心を和らげるやつとかないかな。
と、自身の使える技を確認すると……。
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『リラクセーション』
楽器を演奏して音楽を奏でることで一定範囲内の対象の警戒心を薄れさせます。
範囲:魔力の0.1倍m
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良いのあったー。おまけに魔力関係あったわー。
よし、じゃあこのアーツで警戒心薄れさせてモンスター狩りまくるわー……って、魔力の0.1倍m?
今、私の魔力が308だから……。
「30mって広くないかな!?」
フィールドの広さが幾つか知らないけれど、このまま魔力に振りまくって数値上げたら世界覆っちゃうんじゃない?
……そのあたりは運営がちゃんと考えてなんとかしてくれる……よね?
「まあ、これで警戒解けるんならいいや」
では音楽奏でてモンスター狩り、スタートっ!
アイテムの効果変更により、条件・効果を追加しました。