3:どう見ても不審者だよ!
仮面はとても顔に馴染み、まるでずっと一緒だったかのような安心感を私に与えた。
「うーん……二つ目の楽譜でも探してみようかな」
目元をいい感じに隠してくれる仮面を撫でながらどこに向かおうか、と周囲を見回す。
裏路地を出ると、
「ふ、不審者!」
通りがかりのNPCにまた言われてしまった。というか、こんな裏路地にもNPC来るんだ。
「そんなに怪しい?」
「怪しい!」
断言された。まあスキルのせいでもあるけど、顔も隠れてるしね。
「羽毛みたいに軽いその態度も胡散臭さに一役買ってるよ」
「え、もしかしてこの気さくな態度も胡散臭い?」
「気さく……? そうだとも」
しばらくNPCと話していたら、どうにかNPCの警戒を解くことが出来たようだ。これで、まともにクエストを発注できる、と、ひと息ついた途端に
====================
条件:『警戒状態のNPCを説得し懐柔する』達成!
スキル【甘言】を習得しました!
【甘言】:楽器で攻撃時、相手に確率で混乱を付加する。
====================
なんかやばそうな名前のスキルを習得しました。
×
スキルのせいで、どのNPCに話かけてもまず警戒か拒絶される。こうも何度もされると流石に傷付……いてないな。不思議と。
で、警戒などを解くために会話をして、NPC達と仲良くなる。そして、楽譜のある壁について聞くと、どうやらあと4か所もあるらしい事を聞いた。
全部、この街の中にあるのだと。
「ありがとう。この恩は忘れないよ」
と、笑みを浮かべてお礼を述べると、
「良いってことよ!」
NPC達の好感度が見て分かるほどに上がってくれる。……なんだか不思議な気分だ。
教えてもらったのも相まって、意外と簡単に二つ目の楽譜を見つけることが出来た。……しかし。
「やっぱり、そう簡単にはやらせてくれないよねぇ」
楽譜の描かれた壁はあったものの、人形が見当たらない。
おまけに近付いてみても、なんの反応もしない。
多分、『秘められし音楽達!』の隠しクエスト達は、壁に描かれた楽譜と人形が揃わないと発動しないのだ。
マンドリン、フルート、トランペット、小太鼓、鉄琴のどれを鳴らしても、システムはうんともすんとも言わなかったから。
「うーん……なんだろう」
何が足りないのか。そう思いながらも、ふと時計に目を向けると
「ん。思っていたよりも結構、時間が経ってたみたい」
随分と針が先に進んでいたので、一旦、ゲームからログアウトして考え直してみることにした。