37:まあ予想通り
「……ここは……『夢幻の跡地』?」
気付けば、古びたレンガの道の上に立っていた。
酷く古びて、ガタガタのレンガ道。
「なんで、こんなところに」
呟いた瞬間、近くにあったスピーカーから、調子の外れたチャイムの音が響いた。
「っ!!」
音割れがひどく、周囲が無音なのも相まって不気味さを演出している。
『ラッキーバニー☆パレードのお知らせです。まもなく、ラッキーバニー☆パレードがはじまります。夢幻の跡地の魅力がいっぱいつまった楽しいパレード、ラッキーバニー☆パレードまもなくはじまります。どうぞお楽しみに』
と、うさぎの着ぐるみのアナウンスが入った直後、遠くに、ぼぅっと、光る何かが現れた。
途端に周囲のスピーカー達が音楽を流し始める。何かのマーチのような軽快な音楽だったであろうそれは、ただの雑音でしかなかった。
「っ、」
音割れの酷いその音が、ぐわんぐわんと頭痛を引き起こす。
頭を押さえても、音楽が強制的に耳へ流れ込むような感じがして、耳栓をしても効果がないように思えた。
そうして動けない間にも、光る何かはどんどん私に向かって近付いて――。
『さぁっ! お客様っ!! もうっ!!! 逃しませんっ!!!! からねっ!!!!!』
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ボスモンスター:ラッキーバニーが現れました。
適正レベル:『75』。
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ボス遭遇のウィンドウが表示された。
待って、75って私より遥かに上のレベルじゃない?!
こういうのは普通レベル制限で出来ないとか制限かからないんですか?!
着ぐるみのうさぎが光るそれの上に立っており、ビシッと私を指さす。
『イベントシナリオの最中なのでっ! スキルやアーツでの脱出はっ!! 不可能ですよっ!!!』
光る物体は、たくさんの飾りを付けた汽車のような形状のフロート車だったらしい。すごくピカピカと光っている。
逃げられないのか……戦うしかないのかな。とりあえず、動けないので詳細を見てみることに。
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・ラッキーバニー
『夢幻の跡地』のボス。みんな大好き夢の国! ……の跡地の管理者の亡霊。たった一人で誰ひとり遊びに来ないこの場所の管理をしている。暇でボッチだったからか、器用でなんでも出来るぞ!
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……まあ、ボスのような気はしてたよ。