28:やっぱガバいからさ
「……」
(表情や顔色は変わらないが)ニコニコと上機嫌に
『えへっ、お客様を捕まえちゃった♡』
と可愛らしくもじもじするうさぎの着ぐるみを見ながら、
「…………アーツ発動、『脱出マジック☆』」
ぱちん、と指を鳴らす。
『あぁっ?! お客様!!!』
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【禁じられた奇術】発動!
捕縛、幽閉状態から脱出できます!
【禁じられた舞踏】発動!
一度訪れた場所に移動できます!
移動先:『始まりの街』
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……ほらね、移動できちゃった☆
うさぎの着ぐるみの、泣きそうな声を聞きながら私は『始まりの街』まで飛んだ。
×
「……『出られない』とは書いてあったけれど、スキルやアーツの影響を受けないとは書いてなかったもんねぇ」
アイテムをNPCに売り捌きながら、私は呟く。そろそろアイテム拡張した方がいいかもしれない……。
始まりの街は三日後のギルドイベントについてで沸き立っていたけれど、ギルドに参加していない私には無縁の話だ。
ギルド、ねぇ……。入るのならどこがいいのだろうか。
まあ。今回はただの確認だったので、もう一度『夢幻の跡地』まで戻る。
×
「っと、」
チリン、と音を立て『夢幻の跡地』へ降り立つ。と、
『おおお、お客様ぁぁぁあああああっ!』
ひえっ?! うさぎの着ぐるみがすごい速さで走り寄って来た!?
『なぁあんで、逃げるんですかぁぁぁああああっ!』
顔は変わっていないのに大きな目からぽろぽろと大粒の涙をこぼしながら、うさぎの着ぐるみが私を追いかけてくるよ!
「そりゃあ、なんか怖いからだよ?! 勢いとか色々!」
『廃墟の遊園地のステージにそんなこと求めないでくださいよぉぉおおおおおっ!』
なんか更に加速したっ?!
×
で。
俊敏値0のわたしが高速の代表のようなうさぎに勝てるわけがなかったんだよ。捕まりました。
『捨てないでぇっ! わたし達をぉ、捨てないでぇ……ぐすっ』
入場ゲート前で、べそかくうさぎの着ぐるみに私は抱きしめられていた。
なんかもふもふで柔らかくていい匂い……。
……しかし、なんか闇深くない?