26:夢幻の跡地
ゲーム開始から十日目。私は古びた門の前に立ち、その奥を見つめて呟いた。
「着いた。ここが『夢幻の跡地』……か」
そこは、深い霧に包まれたゴーストタウンの奥にぼうっと浮かび上がる遊園地。
アップデートで追加された、新たな高レベルのダンジョンだ。
じっとりと肌を濡らす濃い霧は『死神の地下墳墓』と同じようなにおいがして、アンデット系のモンスターが大量にいるであろう事が容易に想像できた。
息が詰まりそうな空気を胸いっぱいに吸い込み、
「ここまで来るの、長かった!!」
思わず叫ぶ。
まず、高レベル向けの場所だからか、始まりの街から随分と遠かった!
色々な森や草原、山や街を抜けて、途中で道に迷ったり引き返したりを繰り返して、ここまでたどり着いた。
途中、道が飛び飛びでワープを繰り返さなきゃいけない道や毒沼、棘の道とか面倒な場所が山ほどあったけれど、ブーツのおかげで割と楽に進めたのでこの靴には本当に感謝だ。
「ほんっと、長かった」
地図がノイズが掛かって読めなくなるし、モンスターは強いし。昨日は一日中迷いっぱなしだったし!
「おかげで、レベルが結構上がっちゃったよ」
高レベル地帯を歩き回り、何度も死んだので、20%しかもらえない経験値ペナルティを全く感じないほどの経験値頂きました。
ペナルティなかったらもっともらえただろうけれど、そもそもスキルがなければ高レベル地帯まで来ない!
少しやけくそになりながら、私はステータス画面を表示する。
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名前:ヨクラートル
レベル:42
ジョブ:ジェスター
使用武器:楽器
ステータス
筋力:0 防御:0 魔力:(510×3+51)×2=『3162』 敏捷:0 幸運0
スキル
【魔力強化】【死からの復活】【呪詛返し】【作り物の顔】【笑顔の仮面】【私に近付くな!】【不審者】【禁じられた遊戯】【甘言】【ロックだぜ!】【裏切り者】【禁じられた歌劇】【貼り付いた笑み】【禁じられた舞踏】【怨嗟の念】(HP1により常時発動状態)【禁じられた奇術】
装備
頭:『禁じられた楽士の外套』(装備条件:魔力値1000以上 効果:他ステータスが半減する代わりにMPの最大値が魔力値と同等)
体:『禁じられた楽士の衣服』(装備条件:魔力値500以上 効果:プレイヤーの筋力値・防御値・敏捷値・幸運値全て半減 装備の耐久値が減らない)
足:『禁じられた楽士の長靴』(装備条件:魔力値750以上 効果:プレイヤーの筋力値・防御値・敏捷値・幸運値全て半減 床ダメージ無効)
武器:『初心者の楽器【マンドリン】』
装飾品:『禁じられた楽士の仮面』(装備条件:魔力値100以上 効果:プレイヤーの筋力値・防御値・敏捷値・幸運値全て半減 強化値含め魔力2倍)『呪いの指輪』(装備者のHPを1にする)
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……魔力値が3162もある。
つまり、一昨日手に入れた『禁じられた楽士の外套』のおかげで魔力値=MPとなったので、今の私のMPは3162という事か。
大体、11回連続で死ねるってコトだね(他スキル等の発動無考慮)☆
それはともかく。
この廃墟の遊園地に私が来たのは無論、経験値をもらいまくってレベルを上げるためだ。道中でも割と上がったけれど。
「さぁて。どんな場所かな」
遊園地などの娯楽施設には学校の修学旅行以外で行った事のない私は、少しわくわくしながら中に入っていった。