12:情緒もクソもない
よし、さっそくステータス画面を開いて、自分の現状を確認してみよう。
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名前:ヨクラートル
レベル:27
ジョブ:ジェスター
使用武器:楽器
ステータス
筋力:0 防御:0 魔力:(360+36)×2=『792』 敏捷:0 幸運0
スキル
【魔力強化】【死からの復活】【呪詛返し】【作り物の顔】【笑顔の仮面】【私に近付くな!】【不審者】【禁じられた遊戯】【甘言】【ロックだぜ!】【裏切り者】【禁じられた歌劇】【貼り付いた笑み】【禁じられた舞踏】
装備
頭:なし
体:『禁じられた楽士の衣服』(装備条件:魔力値500以上 効果:プレイヤーの筋力値・防御値・敏捷値・幸運値全て半減 装備の耐久値が減らない)
足:『禁じられた楽士の長靴』(装備条件:魔力値750以上 効果:プレイヤーの筋力値・防御値・敏捷値・幸運値全て半減 床ダメージ無効)
武器:『初心者の楽器【マンドリン】』
装飾品:『禁じられた楽士の仮面』(装備条件:魔力値100以上 効果:プレイヤーの筋力値・防御値・敏捷値・幸運値全て半減 強化値含め魔力2倍)
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……なんだかごちゃごちゃしてるなぁ。
「動作確認も兼ねて、まずはいくつかのダンジョンに行ってみようか」
×
「ここが『ゴブリン塔』、ね」
攻略適性レベルが15だから、27の自分には(多分)余裕でしょ!
×
で。
「音楽を聞かないって情緒ないな君達!」
私は俊敏値0の遅い足を怨みながら、猿のようなゴブリン達から逃亡していた。
なんで私が前みたいにゾンビアタックをしていないのかって? そりゃゴブリンが(わたしより)弱いから一気に体力削ってくれなくて地味に辛いからだよ!
ゾンビ達にはあっさり身体を引き裂かれたのに、ゴブリンの攻撃は思いの外弱く、死ぬまで殴られ続けるから痛いだけでした!
私、特殊性癖は持ってないからね!
こいつら私の音楽系アーツ使ってもウサギ達みたいに眠らないしなんか棍みたいなの振り回してゴブゴブ言って追いかけてくるし! (それは関係ない)
そうこうしているうちに、私は周囲をゴブリン達に囲まれていた。
『ゴッブゴブゴブ……ゴブゴブゥ!』
『ゴブゴブ、ゴブ?』
なんか『へっへへ、とうとう追い詰めたぜ!』『どうします、兄貴?』みたいな雑魚チンピラがいいそうなセリフ言ってそう!
可愛い女の子や気高い女騎士だったらアレな展開になりそうなやつだけど、私、男(の、アバター)だからね!
「……そういえば、どこにでも立てるって書いてあったよね」
ふと、履いている靴の説明を思い出す。
「あのなんかガバい運営だったら、こういうことも、出来る気がするっ!」
思い切ってゴブリン達に背を向け、壁をキッック!!
『ゴブゥ?!』
重力のかかり方が現実と少し違う事に確信を持った私は、そのまま再び壁を蹴り、
「よっと、」
天井に足を着ける! どうだ!
「よし、立てた!」
逆さの視界に、自分から見て天井に立っているゴブリン達を見上げ、私はほくそ笑んだ。