前口上話
実は私はラグナロクマスターというゲームでクラウンをやっておりました。
フレンドもギルドも何一つなかったのでボッチでしたが……
共働きの両親が帰ってくる前に急いで帰宅し、家の中でとある商品が届くのを待つ。そして、
「来た!」
宅配業者の人から大きなダンボールを受け取る。時間指定で時間通りに届けてくれる業者さんに感謝!
密林さん経由で届いたからか、やや過剰めな包装のそれを自室へ引きずり込み丁寧に開けると、
「ふぅん、これが『ブレイドスキル・オンライン』ね」
ファンタジックな絵の描かれたゲームパッケージが顔を出した。
……うん、やっぱり過剰包装だよね。底に貼り付けられたパッケージ以外ただの空間だもんね。
それはともかく。
「……これで、」
やっと、勉強漬けだった毎日から(少しだけ)解放される!
ついでに「地味な格好しろ」「女らしくしろ」「優等生らしくしろ」とか、そんな事も気にしないで済む(多分)!
思えば、昔から勉強漬けの人生だった。
小中学の頃から塾に行くのは当たり前だったし、テストで90点以上取るのも当たり前。高校受験で今の高校を選んだ時には両親と一悶着あったし、(どうにか納得してもらえた)なんでそんなに勉強しなきゃいけないのさ。
今のところ、テストで上位に入り続ける事で塾に行くのは免除してもらっているけど、もし落ちたら……
……って、そんな暗い事考えてる場合じゃない。とにかく、勉強漬けだった日々から逃れる為に、「なんかゲームやりたい」との欲望に従っててきとうにポチったゲームがこれです、はい。
VRゲームだったから、機材揃える為にバイト代結構持っていかれたけど。(バイトは『社会勉強だ』と無駄に賢くなった頭をフル回転して言いくるめた。)
今夜から両親は1ヶ月も出張だし、思いっきり羽を伸ばすぞー!
そして、両親と1ヶ月さよならバイバイして、サービス開始の時期が近付く。私はパソコンにゲームディスクを挿入し、有線VRヘルメットを装着、する前に眼鏡を外して、度数を合わせる。
「ご飯、お風呂、トイレ、水分補給よし。じゃあ……ダイブオン」
起動のキーワードを口にした瞬間、私の意識は闇の中へと落ちていった――。