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勇者サトの冒険(仮)  作者: ひりあリア
第一章 始まりの村編
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表五話 対決!森の王

森の王との戦いです!

 獣。自分より大きく、勇ましく、逞しく、そして圧倒的に強い相手。体全体が灰色の毛に覆われ、その牙と爪は鋭い。その瞳は赤黒く、顔には無数の古傷が見える。

 サトが初めに感じたのは恐怖だった。その感情は森に入る前のそれとは全く別物だった。未知への恐怖ではない。既知への恐怖。未だ思い出せない経験からくる体内から溢れ出す危険信号に従って背を向けるのを理性で抑えこむ。

 スライムは現れたそれから逃げるように木々の間から逃げていった。もうその影を見る余裕すらない。サトの目はその獣に奪われていた。

 その獣は何をするわけでもなくただその場で立っていた。サトを注意深く観察しているようにさえ思える。そのことに気づいた時、サトはマリアに叫んでいた。

「マリア!今すぐ逃げて!」

 マリアがその声を聞いてどうしたか確認する余裕はサトにはない。だが、その叫びはサト自身に対する死刑宣告と同義だった。サトがこの獣と戦って勝てる自信は皆無だった。これまでスライムに勝てたのも、スライムに対して火が有効だったからだ。それはサトもよく知っている。果たしてこの獣に対しても有効だろうか。せめてマリアが逃げる時間を稼げればよいのだけれど。


 いや、そうじゃない。


 自分の使命を思い出す。サトが戻らなければミラは死ぬ。この事実がサトの心を殺す。恐怖心を不安を痛みを絶望を。全てをサトから殺した。勝てないじゃない勝たなければならない。やるべきことはあきらめることでも逃げることでもない。ミラを助けることなのだ。そうしてサトは戦闘体制に入った。

 すでにサトは魔法の痛みを考えていなかった。痛みだけではない。サトは自身のことは何も考えていなかった。病的なまでの正義への執着。彼を突き動かす全ての原動力はミラの命ただそれだけ。

 獣もサトの様子を見て戦うことを決めたようだった。その瞳の奥を覗く余裕はもうない。勝負は一瞬。サトは両手を前に出す。避けられればサトは間違いなく死ぬだろう。その先鋭な牙か爪で、肉片と化すだろう。だがそんな想像はもはやサトには響かない。

 

 なにを叫んだのだろう。サトの目が開いた時、そこには地が抉れ、木々が消滅し、露出した土の跡を星の光が差していた。どれだけの威力があったのだろうか、明らかに今まで使用してきた魔法とは違うことだけしかサトには理解できなかった。

呆然としていた脳を起こし周囲を確認する。マリアはちゃんと逃げたようだ。少し安心した後他に敵がいないか見渡すも何もいない。今の魔法で敵はいなくなったのだろうか。サトは考え、光の差す道を歩き出す。やることは獣の討伐ではなく花の採集なのだ。

歩き始めてサトは手の痛みがないことを気づいた。手のひらを見るといつものような火傷の跡がなかった。少し不思議に思うもののサトはすぐ周囲の警戒をする。周りにはあの獣と同種の死体がかなりの数転がっていた。肉が焦げ付いた臭いが肺に溜まっていくのを感じながら、けれどその臭いを鼻に焼き付ける。これがサト自身の罪の実感だと忘れないように。

時間が経ってサトは魔法の被害がなくなった部分を歩いている。星の光も届かない森には風の音しか響かない。不気味だ。マリアがいない初めての時間にサトは初めて孤独を感じていた。サトがこの世界に来て初めての時間だ。

いったい僕は何者なのだろう。ふと気づくといつも答えの出ない疑問を抱いてしまう。サトという名前にも違和感はないけれど、それ以外のことは全く思い出せない。

とぼとぼと歩いていくと一際大きな木が立っていた。その根元に白い光が湧いているのを発見し、近づいていくとそこには白い花が咲いていた。その光量に目を細めながらその花を取る。これでミラが助かる、少し安心したままもと来た道を戻ろうとすると遠くの方から何かの声が聞こえた。他の人もこの花を取りに来たのだろうか。少し会ってみたいという気持ちを抑え戻っていく。

森を出るまでやはり一度も魔物に会うことはなかった。どこかへ逃げて行ってしまったのだろうか。疑問を抱きながらそのまま森を出るとマリアが何本か真っ白な花をもっていた。

「マリアさん。無事だったんだね」

「えぇ。サトも無事でよかった。これ途中で落ちていたものです。」

「途中にあったのならわざわざ奥までいかなくてよかったね」

「偶然見つけたので、仕方ないですよ。」

「これだけあればミラも助かるよね」

「サトもこれだけ頑張ったんだからきっと助かります!」

「そうだよね!じゃあ早く帰ろうか。」

マリアが頷くと二人は森を後にした。サトの少し凛々しくなった表情を見て微笑むのだった。


勝ててよかったね!!!!

他にも人が来てたみたいだけど誰だったんだろ?

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