表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある時  作者: 師走
9/10

9

外へ出ると、くらりと眩暈がしました。

普段にないほど体が濡れて、体重が倍ほども違って思えます。


すぐにでも温泉へ戻ってしまいたくなるような気だるさです。


そして熊はぼやぼやした頭で申し訳なさを感じているのです。やっちまったなぁという、取り返しのつかない気持ち。


タヌキはつんと歩いています。

そして口の中でいやらしく、「くそな道ねえ」とつぶやくのでした。


つい口を滑らしてしまった。せっかくいい気分だったのに台無しだ。これじゃあ、初めからここに来ない方がまだマシだった。


なんだかたぬきに対して怒りすら覚えます。はめられたような気がするのです。


たぬきの小さな足跡が目の前に続いていきます。


後ろを見ると、熊の丸い巨大な足跡もまた、くっきり残っていました。






「…さあ、もといた草原に帰ってきました。ここからだったら一人でも帰れるでしょう」

タヌキはケロリとして言います。


熊はこのちっぽけなか弱い存在を恨みました。性悪なやつだと、心の中でなじりました。


「…お前は俺の夢の中の話を、俺が持っている願望が現れたんだと言ったな」

「そうですね。恐らくそうじゃないかと思いました。夢ってそういうところあるみたいですから」

「俺がお前を独り占めにしたいと、本当にそう思ってると思うのか?」

「わかりません。それは、あなたのことですから」

「……俺は好かれたいだとか、そんなナルシストみたいな考えはないはずなんだが」


湯は少しずつ冷えてきて、その分クマの辛さは増しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ