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とある時  作者: 師走
4/10

4

「そういうものなんですか?」


タヌキはきょろりと瞬いて歩き始めました。

クマもそれに続きます。


タンポポやシロツメクサを掻き分けて、タヌキはするすると進みます。


クマはずっと下を向いています。

歩幅がタヌキよりうんと大きいので、タヌキの尻尾を踏んでしまわないよう注意しているようです。

タヌキのほうではそういうことには注意が向かないようで、呑気に尻尾を揺らしています。


なだらかな丘陵を登り下りして、次第に背の高くなる藪の中を行きます。

クマの背まですっぽり覆ってしまうほど深くなった藪の中を、タヌキはどんどん歩いて行きます。


「おい、遠いのか?」


思いの外長く歩くので、ついクマは聞きました。


「すぐ着きますよ」


それだけ言ってタヌキは迷わず進んでいきます。


藪はさらに深く濃くなっていきます。

地面には石がごろごろして、歩くたびに爪や足裏にぶつかります。

クマがここはもう歩きたくないな、と思い始めたところで、タヌキが立ち止まりました。


「ここを行けば到着です」


見れば小山ほどに盛り上がった地面の裾に、ぽっかりと穴が開いています。


クマがぎりぎり通れるくらいの小さな洞穴でした。

タヌキは洞穴の中へ踏み入ってから、クマが入口でうんうんと身体をくねらせているのに気が付きました。岩の間に挟まってひどく窮屈そうに見えます。


「やめておきましょうか?」

「いいや、行けるよ」


クマは岩をがりがり掻いてどうにか進んでいます。

それじゃぁ、と言ってタヌキも進みます。


長くて暗い洞穴をどのくらい進んだでしょうか。

遠くにぽちりと出口らしき明かりが見えました。

タヌキはいくらか早足になって光の漏れ入る出口に向かいます。

クマもあちこち身体を岩にぶつけながら進みます。


岩のアーチを潜ると、さあっと陽に包まれて目が眩み、クマは一瞬だけ視界を無くしました。


ぎゅっと目をつむって、それからゆっくり目を開けると、そこは元いた野原でした。


「元の場所に戻ってきただけじゃねぇか」

「そうです。物珍しいものは何もないでしょう」


今度はタヌキがポリポリと頭を掻きました。


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