前世持ちにつき注意!
とんでもなくギャグです。恋愛要素は殆どありませんのでご注意ください!クスッと笑ってもらえれば嬉しいです!
私はリリア・ルーカス男爵令嬢、16歳。私は入学式にでるためアリエント王立学園の門を通った。その時にビビッと身体に電流が走り思い出した。
そう、この世界で誰よりも愛される王妃になることを。
リリア・ルーカスの生涯はこうだ。貧乏男爵家で煌びやかな生活はできず、周りからは蔑まれてきた。勉強だけは得意で、そのおかげで特待生として学費免除をしてもらいアリエント王立学園に入学できた。そこで出会うのが色んな美青年たちで、心優しい王子レイ様、無口な騎士ゼウス様、いじっぱりな魔術師オーレン様、やんちゃな隣国の王子メンデス様。
記憶によると、この美青年たちと関わっていく中で全員に告白されたのよね。しかし、私はただの貧乏男爵令嬢。周りは快く思わないため、私は他の令嬢達に虐められていた。その中でも主となって虐めてきたのは、公爵令嬢のディアナ様だ。彼女は王子のレイ様の婚約者であったため特に執拗に私の元へやってきた。けれど、最後は虐めの件で王子に断罪され国外追放されちゃうのよね。
そして、私が告白されて選んだのはやっぱりこの国の第一王子レイ様。ディアナ様もいなくなり晴れて私はレイ様の隣へ立ち愛される王妃となったのだ。王妃となった以降の記憶は曖昧であまり覚えてはいないが、この学園で起こったことはよく覚えている。またレイ様と恋愛ができると思うととても嬉しい。
(よし!王妃になるためには前と同じように動かないとだめよね!)
前の記憶を頼りにレイ様のお嫁さんになるために行動することを決意した。
レイ様と初めて出会う場所は中庭の噴水の所。目と目が合い挨拶をかわすのだ。あの時は本当にドキドキした。まさか王子様が私に声をかけてくれるなんて思いもしなかったから・・・。
さあ、噴水に着いたわよ。高鳴る鼓動を感じながらじっと王子の訪れを待つ。すると、建物の方から見覚えのあるシルエットが見えた。金髪の髪に青く海のような瞳、何とも美しい顔をしたレイ様が私のいる方へ歩いてきている。そして、近くに来た時、レイ様は私の存在に気付いてバチっと目が合う。
(きゃ〜きたきたきた〜!!)
確か、目が合った後、少し見つめ合うの。そしてレイ様の優し気な素敵な声で
『・・・私は、レイ・アリエントだ。・・・君の名は』
と聞かれるのよね!そして私は名前を答え、それを聞いたレイ様は笑顔で『また、どこかで』と言ってくれるの!ああ、思い出してもドキドキするわ!
期待を込めながらレイ様を見つめるが、何だか様子がおかしい。何故か、私の頭から舐めるように足先まで見て、また同じ場所を辿るように頭まで目線が戻ってきた。すると、考え込むように腕組みをしだし、眉間にシワを寄せた。すると、レイ様はぼそっと
「・・・食指が動かんな」
ん?
「うーん、君、顔も可愛い系だし、なぁもっとこうぼんっとなってキュッとなってたらまだ良かったのに・・・50点だな」
レイ様は手で膨らませたりへこませたりを表現しているがよく分からない。急に点数をつけられたが、学園のテストでいうところのあまり良い点数ではないことは分かった。
「・・・」
記憶との違いに何も言葉が出てこない。ぼんっキュッ?え?何語だろうか。「君」とレイ様に声をかけられて、ポンと肩に手を置かれる。
「もっとお肉を食べて頑張りたまえ」
『何故お肉なのか』という疑問は訳のわからなさにかき消された。取り敢えず彼の言うことがまったく理解出来なかったことは確かだ。あと、何でか分からないけど無性にイラッときた。そしてレイ様はもう興味はないといったように颯爽と去っていた。
(・・・いやいやいやいや、どゆことー?え?どゆことーーー???)
何故かレイ様は私に興味がなかったようだ。それによく分からないことばかり呟いていた。
(・・・けれど、やっぱり諦めきれない!だって、記憶のレイ様は本当に素敵で優しくて素晴らしいかただったから。今のはきっと何かの間違えだろう。そうだ、もう一度確認してみよう。)
次に出会うのは確か、次の日。移動教室へ行く途中に空き教室で一人レイ様が悲しそうに窓の外を眺めていたのを見つけた時だ。その時あまりにもレイ様が悲しい目をしていて、思いがけず私から声をかけてしまったのよね。そこから私達の仲は急激に縮まったの。・・・よし、決行しよう!
次の日
私は移動教室へ行く途中、目的の空き教室までやって来た。もちろん中にはレイ様が窓の外を眺めていた。
(ほら、やっぱり記憶に間違えはなかったのよ!)
ほっと息を吐く。
悲しげなレイ様に私は『どう、されたのですか?』と声をかけるの。すると、レイ様は驚いたようにこちらを振り返り『君は、リリア嬢。まさかこんなに早く君に会えるとは』って返してくれるのよね。そこからレイ様が王子としての重圧に悩んでいることを教えてくれて・・・
よしっと気合を入れて、じりじりと王子に近づいていく。すると、王子が顎に手をやり何やら呟いている声が耳に入ってくる。どうやらすごく集中しているみたいだ。
(きっと、王子としてどうしていくべきか考えているのね、さすがレイ様だわ!)
何を言っているのか耳を済ませて聞いてみる。
「あれはC、ん〜Dの可能性も捨てがたい。んん!?右にいるのはもしやF!?いや、もしかしたらそれ以上の代物では・・・これは直接確認せねば、ぐふふ」
「・・・」
何について言っているのか分からず、レイ様の見ている方に視点に目を向けると、女子学生たちが外で体育で運動をしている最中であった。この学園では貴族の御子息後令嬢が多いため体育は男女分かれている。外を見ても、ただ、女子学生が走っているだけだった。
困惑したが、取り敢えず、 目的を達成させるために集中しているレイ様に声をかけることにした。
「あ、あの〜・・・」
ビクゥウ!!とレイ様は体をビクつかせ驚いていた。そんなに驚く事だろうか・・・。
「ビックリした〜、あれ、確か君は昨日の子かな」
どうやら私のことを覚えていてくれたようだ。しかし、記憶のように憂いは全くないように見える。
「そ、そうです!」
「もしかしてだけど、今の聞いてた?」
「あ、少しだけ」
「ガビーン!」
が、ガビーン?
レイ様は何やらよく分からない言い訳を始めている。
・・・なんだか、本格的に別人に見えて来た。どうしよう、何だか全然かっこよく見えてこないんだが。スッと心が覚めそうな気配が感じはっとする。
「あの、そろそろ失礼します。お邪魔しました」
退散しよう。ええ、今はそれが良いかもしれない、これ以上ここにいると大切なものを失いそうな気がした。悶々としながら1日を過ごしたその日の帰り、レイ様の婚約者ディアナ様に呼び出された。そうだ、記憶によると教室でレイ様と二人っきりの姿を見たディアナ様が嫉妬で私に暴言を浴びせてくるのだ。
バン!!
「ひぃっ!!」
私は壁に追いやられ、ディアナ様は私のすぐ左側の壁に力強く手を置いた。真っ赤な髪につり目の金の目をしたディアナ様はこちらを怖い表情で睨んでいる。
(こっわぁぁ、ちびりそう・・・ディアナ様ってこんなに怖かったっけ!?)
「・・・あんたぁ!!」
「っひゃい!」
大きな声で言われ、怖さで声が裏返ってしまう。なんだか物凄く迫力があるのだ。
ずいっと顔を近づけて来たかと思うと
「あんた、あのクソ・・、王子に何もされてないだろうね!?」
「・・・へ?」
「あんたが教室で2人きりの所をみてね、あのへんた、いや、あの王子と一緒なんて」
「あの、王子とはレイ様のことですか・・・?」
レイ様の名前を言うと芋虫を噛み潰したときのような表情になり、そうだと言った。
「何もされてないならいいさ、もし何かされたら私に相談しな!」
「は、はぁ」
何やら罵られるわけではなかったようだ。むしろ何だか心配されているような・・・。
「あ!!いたいたー!」
遠くの方から声がし、私とディアナ様はそちらに顔を向ける。
「っえ・・・!?」
「チッ!!」
なんと声の主はレイ様はだった。手を振りながらこちらに向かって来ている。表情は晴れやかでキラキラしている。いや、キラキラと言うか、何と喩えよう、・・・デレデレ?目は確かにキラキラしているが口がだらし無く開いて、何ともしまりのない表情だ。
すると、その顔のままこちらへやってきた。
「ディアナ〜!!こんな所で会うなんて奇遇だな〜!いやーいつにも増して綺麗だ!特にその身体つき!ヒュー、最高だよ〜!」
レイ様はディアナ様を前にしてクネクネしながら鼻の下を伸ばして口説き文句?を発している。
(ええ〜??何か、レイ様が、その・・・キモ、いや、ええ〜!?)
「・・・おい」
地を這うような低い声が聞こえてきた。ガシッとディアナ様がレイ様の胸ぐらを掴んだ。
「テメェ、セクハラっつうんだよ!!訴えんぞてめー!!」
「ああ、そんな所もキュートだよ!」
「キメーんだよ!」
分かんない。
もう着いていけない。
思考を放棄したくなったがそうもさせてくれないようだ。
悪魔のように顔を歪めながらディアナ様は今にもレイ王子を殴りそうになっている。これ以上はまずいと思い止めようと声をかけようとしたが「ちょっと」と声が掛けられる。
声のする方に目を向けると無口な騎士ゼウス様が佇んでいた。騎士の服に身を包み長い黒髪を後ろに束ねている。騎士とあるだけ身体はとても逞しい。
(はぁ、良かった!ゼウス様ならきっとこの状況をなんとかしてくださるはず!!)
期待を込めてゼウスを見ていると
「もう、またやってるの?レイちゃんにディアナちゃんっ!いい加減にしなさいなっ」
「ぶふぅっ!!」
ビシッと指を指して女性のような口ぶりで2人を注意しだすゼウスに驚きすぎて吹き出してしまった。唾で汚れた口を慌てて拭う。
「ゼウス!そう言うならこの変態を早くどうにかしてくれ!」
「もう!ディアナちゃん、女の子なんだからもっと可愛い言葉遣いにしましょうよ」
「そこが良いんではないかゼウスよ」
「そうかしらぁ、・・・あら、貴方は?」
しばらく3人で騒いだあと、ゼウスが私の存在に気付いた。情報量過多で倒れそうになるが、聞かれたからには答えようと声を絞り出す。
「わ、私はリリア・ルーカスと申します・・・」
「そうリリアちゃん、大変なところに居合わせたわね、大丈夫?疲れた顔をしているわ」
「あ、はい。・・・大丈夫です」
「この変態のせいだろ」
「その言葉いい!燃えちゃうっ!」
「キモいつーの!!」
ギャーギャーとまた口論が始まりだした。
(・・・・・・うん、もうなんか、もう・・・いいや)
悟りの境地に達した気分になり、何だか生暖い表情しかできない。前の記憶のことはもう忘れよう。それがいい。
その後、いじっぱりな魔術師オーレン様、やんちゃな隣国の王子メンデス様とも会ったが、案の定2人との色々変わっていた。
まず、オーレン様はオタクになっていた。ぶつぶつと「拙者は現実の女などに萌ない主義ですぞ。ああ、『プリプリ❤︎ロリータ女学院』の再放送が見れないなどこの世の終わりですなぁ。しかし、萌がないからこそ創作意欲が湧きますぞ。ふん、僕を馬鹿にしたやつらは今に見ているがいい、僕が萌えで天下を取るのだから、ふひふひっ」
オーレン様の歪な笑い方が廊下に木霊していたのが印象に残っている。
そして、やんちゃな隣国の王子メンデス様は、まあ、なんとも印象に残らない『普通』の人だった。記憶では俺が俺が!って感じだだったのだけれど、「皆さんでどうぞ」「俺は大丈夫です」「気になさらず」と絶対言わないであろう発言の連発だった。
しかし、この状況になった訳に私が気がついたのは最近。そう、私は前世の記憶を思い出したのだ。リリアの記憶ではなく、その一個前の記憶。日本という国で生まれ、警察官の仕事をしていた時の記憶。
どうやら、性格が違う人たちには日本で暮らしていた前世の記憶があるということに気がついた。だからこの世界では出来事が全く違ってしまったのだ。
けれど、まあ、そんなこと今はもう関係ないのだけどね。
「取り敢えず、セクハラ王子が逮捕できるように警察署でも作ろうか・・・」
そう呟き、私も前世を持ち変わってしまった1人になったのだった。
そして、実はこの世界が乙女ゲームの中の世界だと気づいているヒロインの友人兼サポートキャラのベロニカはまさかのこの現状にどうすることもできず影に隠れてガタブルするしかなかったというのはまた別の話・・・
【王子レイ】中年のおっさん エロオヤジ
ぼっキュンボンが好き。
【騎士ゼウス】オネェ
騎士団を食ってるらしい。
【魔術師オーレン】ガチオタク
3日ぐらい風呂入るの忘れる。
【隣国王子メンデス】めっちゃ普通
趣味:花の水やり
【悪役令嬢ディアナ】元レディースの長
苦手なもの:虫
【ヒロインリリア】警察官
まずは手始めに風紀委員を立ち上げてるらしい。
【友人ベロニカ】乙女ゲーム好きなOL
大好きなゲームの世界に来れたと思ったらとんでもない状況に絶望してる可愛そうな人。