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フィルは大木を背に構えた。
「あの魔物…闇に乗じるつもりだろうけどこれなら正面からしか攻撃出来ない」
「いつでもこい!」
風が吹く音と同時に魔物は草の影から飛び出してきた。
フィルは氷石を構える。
「まだだ…ギリギリまで引き付けて…今だ!」
フィルは自分の体が爆発範囲に入らないギリギリのラインまで魔物を引き付けて氷石を投げた。
氷石が地面に当たった瞬間、青白い爆発が再び目の前に広がる。
「やったか!?」
しかし魔物は爆発の上空を飛んでいた。
「やっぱり避けられた!」
しかも上空、横に避けた場合、体勢を立て直す前に2投目を魔物の背後の地面に当てて凍らせるつもりだった。
でも上空だと魔物本体に当てないと氷石は爆発しない。
そしてこの距離だと自分まで爆発に巻き込まれてしまうためそれはできない…
「だから…!敢えて俺は今右腕だけ爆発の効果範囲に入れていたんだ!」
フィルが魔物に突き出した右腕は氷のガードで覆われていた。
「噛み付かれても痛くねーぜ!!」
そのまま噛み付いた魔物を投げ飛ばす。
「そしてそこは氷の地面、受け身は取れない…これで終わりだ!」
最後の氷石を投げ、魔物は完全に凍りついた。
「はぁはぁ……終わった」
最初に噛まれた右腕は一応氷で止血できてる。冷たくて感覚は無いけど、たぶん大丈夫だ…
それより、早く姉ちゃんと合流しないと……
「でも…もう体力が……」
バタッ…
精神的にも体力的にも疲労が限界だったフィルは、その場に倒れ、深い眠りについてしまった。
……何時間経っただろう…意識が朦朧としている。
夢か現実か分からない曖昧な感覚にフィルは陥っていた。
しかしそれでも確かに感じたのはリアの温もりだった。
姉ちゃんの膝枕…久しぶりだ…
「フィル、……………………がとう。…………………………。」
何か言ってる…でも頭がぼーっとしてて聞き取れないよ、姉ちゃん。
フィルは自分の言葉が発っせられているかどうかも分からなかった。
「……ごめん…、………………………………。………フィル………………………………………………、……時間……………。………………、世界………為に……………!フィル………………………………………幸せ…生きて…」
何も分からない。
再び意識が飛びそうになったとき、最後に頭を撫でられた気がした。
……もうガキじゃないって言ったのに。
…………目が覚めると森はいつもの景色に戻っていて、リアはどこにもいなくなっていた。




