王子様みたいだね
はじめに
仕事の合間に書いている完全趣味の小説なので矛盾やご都合展開、文章の破綻が出てくるかと思います。
気にならない方のみ閲覧して頂ければと思います。
ある夏の夕方。
ローランド王国の辺境にある海辺の村シアトラ。
そこで暮らす12歳の少年フィルは、2つ年上の姉リアと近隣の森に探索へ出ていた。
「あった!姉ちゃん、こっち!」
フィルは薬草を引き抜きリアに見せた。
「おお!よく見つけた、偉いぞーフィル!これでお母さんの傷も治せるね」
リアはポーチに薬草を入れるとフィルの頭を撫でた。
「もうガキじゃ無いんだからそういうのやめろよ」
そう言いフィルはリアから少し離れて後ろを向く。
「もう、恥ずかしがらなくていいじゃん。誰も見てないんだし」
リアはフィルが照れるのが面白くていつもからかっている。
「てか姉ちゃんも大袈裟だよな。母さん、包丁でちょっと指切っただけだし、3日もすれば治るだろ」
「ひどい!3日も痛いの可哀想じゃん。それにちょっと外がどんな場所なのかも気になってたし…」
「そっちが本命だろ」
ローランド王国の辺境にある村や集落では、15歳未満が近くの森などに近付く事が禁止されていた。
古くから子供が親の目を離れ過ぎると、神隠しに遭ってしまうからだと伝えられている。
「私はフィルと違って森に来たことなんて無かったけど、友達は皆親に隠れて遊びに出てる。それをお前は臆病だから森に来ないんだって言われるのが悔しくってさ…こっちはただ親の言い付けを守ってるだけなのに」
「俺は8歳の時には1人で森に出てたけどな」
フィルはどや顔で自慢する。
「…それは流石に危ないしどうかと思うけど」
リアはちょっと呆れた顔を見せる。
「でもさ、今日は一緒に来てくれてありがと。1人じゃちょっと怖かったけど、フィルのおかげで助かったよ」
「お、おう」
フィルはリアの笑顔に弱い。この笑顔を守る為なら何だって出来る気がした。
「手、出せよ」
「何?」
言われて差し出されたリアの手をフィルは握った。
「家に帰るまで、何がある分かんないからな!神隠しとか…あるかもしんねーし。こうしてれば、リアも安心だろ!」
「…そだね!ありがと!フィル、王子様みたいだね」
「別に、そんなかっこいいもんじゃねーよ」
「確かに、ちょっと言い過ぎたかも。それより今お姉ちゃんの事リアって呼んでくれてたね?」
「なっ…うるせーよ。別にどーでもいいだろ!」
「照れちゃって、かーわいい」
なんて事の無い話をしながら帰ろうとする2人だったが、日が沈み姿を変えた森に迷ってしまい、気付かない内に深く森の深淵へと進んでしまっていた。