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BioGraphyOnline!  作者: ツリー
第3章 うたかたのゆめ
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第九十七話 何でもするんだ、パンツだって尻だって全てを使って

「よし、まずは他プレイヤーの妨害工作からや!」

「ぶ「「「らじゃー!」」」


 誰かくだらない事を言った気がするが、本当にくだらないので無視する。


 今回のわいらの目的は、アズもとい風の精霊アズールを他のPTより速く捕まえる事。

 しかし莫大な報酬がつけられてしまった今、今回はPTメンバーを集めるのに苦労した。

 莫大な報酬につられてアズを売らない人物、かつ私欲でアズを害さないメンバーとなると・・・ね。


〖任せてください!アズちゃんに近づく変態は切り刻みます〗

「あ、うん、出来るだけあと腐れがないように頼むんよ?」

〖( *´艸`)〗


 大太刀を持ち上げられないからか、小太刀をブンブン振り回すルピーさん。

 理解しているのかしていないのかわからない顔文字が帰ってきてしまったが、まぁ今のルピーさんの火力は最弱レベルやから問題は無い筈・・・


「わーってるわーってるって、こういう事に関しては俺に任せなって」

「ええ、友人の危機とあらば私が行かない訳にはいきませんからね」


 続いて全身包帯まみれのグレイと、その背後で息を荒げるランズロットさん。

 グレイさんに関しては信用がイマイチだが、話を持ち掛けてきた張本人なので今回は信じる事にした。

 ランズロットさんは・・・何か知らんけどいつの間にかPTに入っていた。

 うん、友人とか言ってるし、堅物で有名だから多分大丈夫だろう。


「ったく・・・今回の騒動もそうやけど、あのトラブルメーカーには色々と言っておかないといけんかもしれんね」


 わいは空を飛び回るアズを見上げて溜息を吐く。

 そんなわいの隣で、同じくアズを見上げていたグレイが渋い顔をする。


「しっかしすげースピード、追いつける気がしないんだが?」


 こっちの速さはグレイさんが最速でマイナス1やとしたら・・・アズのスピードは50くらいやろうか?

 流石にここまで速さに差があっては、視認するのすらキツイ。


「追いつく事に関してはちゃんと対策を練っとるんよ」


 グレイさんが訝し気な表情を浮かべる中、PTに更に新メンバーが追加される。

 それと同時に背後から大量の砂ぼこり、チョコボみたいなのや竜騎みたいなのが物凄いスピードで迫ってくると・・・。

 先導していた竜騎の上にのっていた人物が華麗にジャンプ、わいらの前で涼しい顔で決めポーズ。


「お待たせしましたわ」

「メアリーさん!よく来てくれはったね!」

「アズちゃんのみさおの危機ですからね、当然ですわ」


 そう言いながらスカートのすそを少し上げて挨拶をしたメアリーさんは、PTメンバー達に手綱を渡していく。

 元はと言えばこの人とこの人のマスターのせいでややこしくなってしまったわけやけど、知らなかったから仕方ないね。

 ちなみにエンド・シャドウに関しては、アズと対面したら余計な事を口走ってアズールの正体をばらしかねないので何も伝えていない。


「なるほど、騎乗ペッドとは考えましたね、この子たちであればマイナスのデバフは効果を発揮しない」


 ランズロットさんが眼鏡クイッをしながら普通サイズの竜騎に飛び乗る。

 流石頭の回転が速い。


「けどよぅ、俺の知り合いの召喚士やら魔物使いが言ってたけど、そいつらの従えてるやつらは軒並み能力がマイナスになってるって聞いたぞ?」


 グレイさんが一際大きい竜騎に乗ろうとジタバタしていたが、やがて諦めて小さいチョコボに乗る。

 確かにグレイさんの言う通り、使役された魔物達は例外なくマイナスのデバフを受けている。


「あれは使役者のスキルにある、使役者のステータスの数%を乗算する効果のせいやね」


 そのせいで使役獣のステータスもマイナスになってるっちゅうことやね。

 その点騎乗ペットは何のスキルの効果も受けないので、ステータスに変化はない。


 グレイさんが納得したように頷き、全員が騎乗。

 ジェットコースターか!と言いたくなるような爆速で走り出す。

 あまりのスピードの変化で気持ち悪くなりそうやけど、我慢や我慢。


「これでもアズのスピードの方が断然速い・・・せやけど」


 アズは時折空中で立ち止まってはボーっとしている、追いつけない事は無い筈や。

 次は他プレイヤーの妨害やけど・・・


 チラリと横を見ると、アズの風のせいでスカートがめくれ上がった女プレイヤーが、隣のスケベそうな男プレイヤーに平手打ちをかましている。

 これもしかしても妨害いらんかもしれん?・・・せやけど念には念を入れておきたいね・・・。


 わいが何か無いか考えていると、同じくパンチラ現場を目撃したグレイさんが、音がしない指パッチンをする。


「そうか!パンツか!」


 この人は急に何を言い出してるん?


「よし、ランズロット、脱げ!」

「何でそうなったん!?」

「承知!」

「ほんまに何でなん!?」


 わいが混乱する中、グレイさんの一声で一糸まとわぬ姿・・・いや、モザイク姿になったランズロットが息を荒げる。

 乗られている竜騎が気持ち悪そうにしてる風に見えるんは気のせいやろうか?


「よし!んじゃあパンツをアズの野郎に投げつけろ!」


 わいが絶句する中、ランズロットさんがためらいもなくパンツを投擲、パンツはアズの纏う風に流されあらぬ方向に飛んでいき・・・。


「パ、パンツが飛んでるぞ!?しかも・・・あの白い三角形の形はまさかー(棒)」


 グレイさんが大きな声で叫ぶ、まぁブリーフなんやけどその言い方やと・・・。

 すると、バタン、ガサリと至る所に隠れていた男プレイヤー達が一斉に現れる。


 ああ・・・そういう作戦やね・・・。

 BGOにおいて、落とし物アイテムは衛兵や本来の持ち主に返すまでは、クエストアイテムとして手に入れた人物が所有者となる、つまり。


『『『『『あれは俺のパンツだ!!!!』』』』』


 目を血走らせながら、男プレイヤー達が空飛ぶパンツに群がっていく。

 まぁランズロットさんのなんやけど。

 しかも・・・。


『『『『きゃー!?変態よー!?』』』』


 パンツの所有者のモザイクロッドさんを見て、女プレイヤーが逃げていく。


「どうよ?一石二鳥な作戦だろ?」

「やかましいわ」

「いえ、この場合一パンツ二変態な作戦かと」

「ちょっと黙っててもらえます?」


 しかしそうは言っても効果はてきめん、頭の悪そうな作戦ではあるが、もしかしてグレイさんって結構頭が回るんやろうか?

 と・・・などと感心してる場合やないね。


 わいらはパンツ争奪戦を始める男プレイヤーを尻目に、アズとの距離を一気に縮める。


「よし、あとちょいでぶ!?」


 しかし見えない壁にぶつかり、わいは盛大に落馬する。

 なんやなんやと前を見ると、侵入不可エリアの文字・・・どうやら王城まで来てしまったようだ。


「くっここまで来て・・・」


 こうなってしまっては、アズが城から飛び立つ瞬間を狙うしか・・・。

 と、考えこんでいると、ふいに袖を引っ張られる。


〖ところで、どうやってアズちゃんを捕まえるんですか?〗


 ルピーが、今更聞いてごめんなさいとチャットを打ちながらも、再度どうやって?と聞いてくる。


「・・・確かに」


 今までのアズの動きを見るに、たまに地面に着地はするものの一瞬で、ボーっとする時は大抵空の上だ。

 着地の瞬間を狙うのも手だが、再度飛び上がるまでに間に合うとは思えん・・・。

 全員が顔を顰める中、メアリーさんが何かに気が付いたように中央広場を指さす。


「でしたらあの竜巻を使って飛ばされてみます?」

「それも手かもしれへんけど、あらぬ方向に飛ばされ・・・ってなんなんあれ!?」

「さぁ?いつの間にか出来てましたわ」


 と首を傾げるメアリーさん。

 まぁ多分アズが何かしたんやろーなー・・・。


「けど飛ばされるっちゅう案は良いかもしれんね、ルピーさんは確か範囲内の敵を転ばせるアーツを持ってへんかったっけ?」

 〖はい!範囲10mの地面を揺らすアーツですね!・・・でも最大出力でも20mくらいしか浮かせれませんよ?〗


 途中で作戦を理解したルピーさんが捕捉を入れる。

 それでも20mは飛ばせるんやね・・・。


「なるほど、そういう事なら私も手伝いましょう」


 モザイクの変態が手をあげる。


「私の槍技の一つに、対象を吹き飛ばすアーツがあります。・・・ただ一つ問題があるにはあるのですが」

「問題・・・ですか?」


 自信満々なモザイクが眼鏡をかけると、顔の部分だけモザイクが晴れる。


「私の槍技を出すには少々特殊な条件がありまして・・・その、恐らくグレイさんにしか使えません」


 モザイクの鋭い眼光に、何故かグレイさんの顔色が悪くなる。


「それならグレイさんにスタン系の技を打ってもらえば「ないです」」


 ・・・


「え?」

「無いです、スタン系も拘束系も、果ては攻撃系も」

「せ・・・せやけどグレイさんってこのゲームでレベルランキングベスト5に入る程の・・・」

「ねぇったらねぇんだよぉ!俺は、何の、アーツも、持ってねぇんだよぉ!」


 圧倒的絶句。

 あまり知られてはいないが、BGOにおいてアーツとは、その人が何かを頑張った時に手に入る特殊技。

 それが無いという事はつまり・・・いや、これ以上はやめよう。

 多分ヤバイ顔をしていたであろうわいの隣で、涼しい顔をしたメアリーさんが手を挙げて一歩前に。


「でしたらスタン系アーツを持つフーキ様をグレイ様が肩車されては?その状態でルピー様が宙に浮かばせ、ランズロット様のアーツで遥か上空へというのはいかがでしょう」


 メアリーさんは意見を終えると、すっと一歩後ろに下がる。


「「「な、なるほど」」」


 確かに一理ある、いや、ナイスな作戦とも思えなくもない。

 ただ・・・


 わいとグレイさんは、メアリーさんの策の通り肩車状態となり・・・。


「この歳で肩車されるのは抵抗あるんよ・・・」

「こっちの台詞だ馬鹿、何が悲しくて男に跨られた上に後頭部に嫌な感触を覚えにゃならんのだ」

「フヒッ!私は良い作戦だと思いますよ?フヒッ!しかし遂にアーサーの尻に・・・フヒヒ!」


 一人キャラ崩壊を起こす顔面以外モザイクさんを尻目に、メアリーさん指揮の下各々が配置につきアズが飛びだすタイミングを見計らう。


 ・・・

 ・・・『『『『『きゃー!?空から変態が!?』』』』


 そんな意味不明な叫びと共に、緑色の風が吹き荒れる。

 来た!

 わいのアイコンタクトに呼応するように、ルピーさんが少し足を浮かす。


〖獣人殺法、震脚(-_-メ)〗


 その小さな体躯からは、その小さな動作からは考えられない程に地面が揺れ、わいとグレイさんは宙に浮かぶ。

 そして最上部に到達する直前、ランズロットが雄たけびをあげる。


「今こそ来たれり!我が生涯の相棒ケツ・ホルゾ!我らの願いが時間を超え、今成就せん!」


 地面から凄まじい風圧、それと同時に何かを悟ったグレイさんが悲鳴をあげ暴れ出す。


尻風槍(ケツ・フクゾ)!!!!!」

「アッーーーーーーーーーー!!!???」


 わいからの位置では何も見えんが、グレイさんが絶叫を上げたかと思うと。

 グレイさんの尻の辺りからBOOOOOOOOO!という音が聞こえてくる。

 そして上がる上がる!物凄い速度で遥か上空、アズの高度まで吹き飛ばされる。

 しかし・・・。


「高度が足りても、場所が・・・!」


 あと少し、地上であれば地面を跳躍すれば届く程の距離、そんな絶妙な距離に飛ばされてしまった。

 作戦は失敗か・・・?いや・・・!


 わいは泣きながらわいを肩車するグレイさんを見下ろす。

 グレイさんは、「こんな事になるなら来るんじゃなかった」とボソボソと呟いている。


「まーそのグレイさん、かんにんな?」

「え・・・?ちょま!?」


 わいの足をガッチリ固定しているグレイさんの手をほどき、笑みを浮かべる。

 そして思いっきりグレイさんを踏みつけ跳躍、目標を捕捉する。


「さっさと目ぇ覚ましいや・・・アズ!」

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