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BioGraphyOnline!  作者: ツリー
第3章 うたかたのゆめ
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第九十五話 変態王子と風の少女

 タノシイ タノシイ 


『リーン』という音と共に少女が手をかざすと、強烈な風が生まれて街の一角に竜巻が巻き起こる。


『きゃー!?』

『よっしゃぁ!パンチラスクショゲッぶべら!?』


 すけべそうな顔をした冒険者が、女冒険者に平手打ちをうける。


 タノシイ タノシイ


 少女が地面に足をつけると、波紋が広がるように緑の風邪が洗濯物を宙に飛ばす。


『お、おい!パンツだ!パンツが空を舞ってるぞ!』

『ばか!あれは俺の・・・って男もんじゃねぇかぁ!!』


 飛来した布切れを手に取った男冒険者が、悔しそうに地面に布切れをなげつける。


 少々騒がしいとも思ったが、それも風の少女にとっては心地良い。

 少女はメロディーに乗るように、イタズラに風を撒き散らす。


 いつ以来だろう?こんなに自由に空を飛び回るのは。

 暗い木の中に閉じ込められ、静かに涙を流すのは今日でおしまい。


 クルクルと空を飛びながら幸せを噛み締める。

 折角だからもっともっと高く飛ぼう!もっともっと遠くに飛ぼう!

 少女は試しにこの街で1番高そうな所に着地する。

 お城のテラス、とでもいうのであろうか?

 少し広めのテラスには香ばしい菓子の匂いが充満し、心地良いメロディーが流れている。

 そしてそこから見える街並みはまさに絶景、少女は満足げに『リーン』と音を鳴らす。

 しかし、それと共に気に入らない物も見つけてしまった。


「おや・・・?これはこれは見目麗しいお嬢さん、このような所でいかがしたであるかな?」

『リーン!?』


 空を見上げていた少女は唐突に後ろから声をかけられ、驚いて竜巻を発生させてしまう。

 しかし竜巻はその人物に当たる前に霧散してしまう。


「ほっほっほ、挨拶替わりに攻撃魔法とは、少しお転婆な所があるようであるな」


 豪華絢爛なマントを羽織った男はニコリと笑みを浮かべる。

 それは見る人が見ればすぐにわかる有名人、グラフ第二王子の姿。

 長男がとんでもない事をしていた事により、次期国王になる事が確定した若き?天才魔術師。

 多才な魔術はグラフ随一ともいわれ、その武芸は達人さながらと言われいる。

 そして何より・・・


『リーン?』

「ふむふむ、いかなる生物とも会話できる吾輩の天才的頭脳が理解しましたぞ、『履いてない』というやつであるな?」


 ギラリと目が鋭く光る王子のマントの下は、まさに履いてない状態であった。

 そう・・・そして何より、変態なのである。


「吾輩の王者の目がお嬢さんのステータスを看破するであるぞ?ふむ、やはり履いてない、しかも膨らみかけもまた至高と思っていた吾輩であるが、その思想を覆す程、その大平原のような全てを受け入れる形もまた良き物であるな」


 しかもかなり重度なペドフェリアでもあった。

 産まれた時の一声は「おっぱいである」、子供時代はメイドの下着を盗んだり紆余曲折、険しい性活環境で育った彼は、長きにわたる修行の末、ロリこそ正義、ペドこそ至高という結果に至ったのである。


「しかもその見た目にして齢はそこまで・・・なるほど、これが合法ロリというやつであるな」


 王子は感心したように何度も頷くと、少女に向かって手を差し伸べ妙な動きをしだす。


「我と結婚してはくれぬであるか?」


 仮に家臣やメイドに言えば、間違いなく『気持ち悪い』の一言を受ける王子のプロポーズ。

 しかし王子の熱烈なアプローチを風の少女は一切見ていなかった。

 敵意は無い、そう感覚的に感じた時点で既に興味は無いのだ。

 今はそんな物よりも大事な案件がある。

 少女は空を仰ぎ見る。


 今いる場所より更に高い場所、遥か天空にそびえ降りる城の姿。

 その城を恨めしそうに眺めながら頬を膨らませる。


 いかに風の精霊といえ、あの高さまでは飛翔する事が出来ないのだ。

 それがとても苛立たしい。


『リーン!!』

「おや?あの天空城が気に入らないのであるかな?」


 王子は少し残念そうに肩を落としながらも、少女の視線を追う。


「確かに風の精霊と人間の混ざり者ではあそこまでは飛べぬであろうな」


 王子の言葉に何故かイラッときた少女が再び緑の風を纏いだす。

 だが次の言葉を聞き、すぐに風は霧散する。


「しかし、吹き飛ばされればあるいわ・・・届くかもであるな」

『リーン?』

「うむ、吾輩の推論が正しければ・・・あそこであるな、街の中央広場にでも大きな上昇気流を作ると良いである」


 少女は納得したように頷くと、遠くに見える広場に全MPを放出する。

 すると広場を中心に、バカみたいな竜巻が吹き荒れる。


『リーン!』

「うむ、気を付けていくのであるぞ、あっちょま!見え!?」

『『『きゃーーーー!?空から変態がー!?』』』


 少女はふわりと空に浮かぶ、後ろで先ほどの男がテラスから落ちていったような気がしないでもないが、気のせいだろう。


 はやくあの城より高い所に行かなくてはならない、少女は喜びに目を輝かせ・・・


「さっさと目ぇ覚ましいや・・・アズ!」


 遥か上空で迫りくる友人の鉄拳に、意識を刈り取られるのであった。

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