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BioGraphyOnline!  作者: ツリー
第3章 うたかたのゆめ
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第九十一話 死霊都市ネクロニア

「なんかここに来るのも久しぶりだな」


 俺はコケの生えた看板の陰から森の奥を覗き見る。 

 エネミー反応は無し、少なくとも家の玄関よりはエンカウント率は低そうだ。


 こそこそと看板の陰でマップを見ていると、これまた同じように看板の陰から森を凝視するグレイ。


「よくよく考えればアズと一緒に初めて冒険に来たのもここだぜ」

「・・・なんでお前まで隠れてるんだとか言うのは無粋なんだろうな」

「当然だろ?」


 小人との激闘を終え、始まりの草原というレイドステージを隠れてやり過ごした俺とグレイは、現在久しぶりにグラフ大森林に来ています。

 グラフの街で最強に近い存在となっていたグレイが何故隠れているのかというと、意気揚々と始まりの草原でブルーラットにかじられたからである。

 モンスターはステータスが反転してないからな、当然大ダメージだ。


 さいわいHPだけは何故か反転していないので、HPだけは無駄に高いグレイも痛みで半泣きになりながらもこうして森に辿り着いたという訳だ。

 俺?俺はグレイを囮にしてこそこそと潜伏術でやり過ごしたに決まってるじゃないか。


 まぁその事を途中で察したのか、先ほどからグレイからのヘイト音が凄まじいわけだが。

 仲間割れとか勘弁してくれよ?まったく。


「それで?ネクロニアへの道はどこにあるんだ?」

「・・・ああ、ちょっと待ってくれ」


 グレイは虚空を見上げながらウンウン頷くと、「なるほど」と一言呟く。

 はたから見たらヤバイやつでしかないが、多分憑りつかれた幽霊と会話でもしてるんだろう。


「で?なんて?」


 グレイは納得したように頷き、口を開こうとして・・・ふと何かに気が付いたかのように口を噤む。

 なんだ?


「おい、どうしたんだよ?」

「いや何、そういえばアズって俺に対して随分と礼儀がなってないよなーと思ってな」

「・・・はぁ?」


 こいつは急に何を言い出してるんだ?


「ほら、一応俺って目上の大先輩じゃん?最初は丁寧だったけど、いつの間にかため口だし・・・最初は俺をリスペクトして似たような口調にしてるのかなーとかも思ったんだ」


 本当に急に何を言ってるんだこいつは?

 単純にお前をお荷物としか見れなくなったからなんだが・・・


 俺がこめかみをピクピクさせる中、尚もグレイの演説は続く。


「やっぱさ、こういうのって大事だと思うんだよ?しかもこれから行く場所は誰もいったことの無い、場所も発見されてないステージときた!」


 グレイはなんてこった!と額に手を当てて点を仰ぎ見る。


「ああ・・・レートは大分下がったけど、このゲームの通貨はまだ現役なんだよなー、未確認の情報を教えたら一体いくらになるかなーかなー?」


 チラチラと天を仰ぎ見ながら俺を盗み見るゴミに頭痛を覚えながらも、俺はようやくゴミの言いたい事を理解する。

 確かに、以前未発見エリアを発見したとある冒険者が多額の報奨金を手にしたのを見た事がある。

 こと公式がRMTを推奨しているBGOに関して秘密主義のプレイヤーがかなり多い。

 攻略サイトに載る情報だって、誰もが知ってたり、冒険の途中で手に入る当たり前の情報だけだ。

 それ故に、普通にプレイするうえでは手に入らない情報というのは、かなりの値がつく。 

 今回は新エリア、へたしたらそこで手に入る資源をしばらく独占する事も出来る訳で・・・。


 頬をピクピクさせながらゴミを見上げる。


「そ、それでどうするんですかグレイ?見た感じ俺にはいつも通りの「グレイさん」・・・・」


 思わず包丁を抜き去ってしまったが、すんでの所で俺は平静をとりもどす。


「それで?グレイさんには道がわかってるんですよね?」

「もちろんだ、あと笑顔のまま包丁を近づけるのはやめろよ、ちょっとしたホラーだぞ?」


 グレイはへらへらと笑いながら、包丁を持つ俺の脇腹を抱えて持ち上げる。


「グレイさんグレイさん?俺が身長の事気にしてるの知ってましたよね?」

「当然」


 こいつは後で絞殺す。


「まぁそう睨むなって、どうも対象と触れてないといけないらしくてよ」


 グレイはそう言いながら、何やらヘンな言葉を口にすると、くるりと森から180度回転。

 グラフ草原に目を向ける。


「グレイさん?どういうことなんで・・・・」


 しかし俺は今来たであろう道を見て絶句する。


 緑豊かだった大地は焦土と化し、ところどころにおどろおどろしい紫やらなんやらな樹木。

 遠目でも見えるエネミーは・・・ゴースト・・・?

 そして遠くに見えていたグラフの街があった場所には、魔王軍にでも滅ぼされたかのようなボロボロな街並み。

 城があった場所には巨大な魔法陣らしき物が発行し、その背後にはまるでここが世界の果てだとでも言うような巨大な扉が存在していた。


「ま、こんな隠し要素普通にやってたら誰も見つけれねぇだろうな」


 グレイが森の入り口にあった看板にひじを掛け、ネチャリと笑みを浮かべる。


「死霊都市ネクロニアか・・・・」


 俺は看板に書かれた、[北 ネクロニア 南 黄泉平坂]の文字を見て頬を引き攣らせる。

 これは確かに情報だけで大金が手に入りそうだ。


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