表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BioGraphyOnline!  作者: ツリー
第3章 うたかたのゆめ
89/135

第八十八話 空の城、小人の軍勢

 地下水路の一件を終え、幽霊の道案内の元水路の入り口に戻って来た俺は、またまた青白い顔になったグレイの背中を叩く。


「まぁ元気だせって、実害はないんだろ?中におっさんがいるだけで」

「じゃあ変わってくれよ」

「死んでも嫌だ」


 いい訳って訳ではないが、ただでさえ俺の中には精霊が混ざり込んでるんだ。

 仮に精霊とおっさんが究極合体して、精霊化した瞬間おじさんが混ざるとかなったら目も当てられない。

 それになにより、生理的に無理。


 俺はグレイに慈愛の目を向けながら、地下水路の入り口に手をかけ・・・。


『緊急クエスト発生!緊急クエスト発生!』


 なんだなんだ!?起動要塞でも攻めて来たのか!?


 ◇


 場所は変わり冒険者ギルドに併設された酒場より。

 なんかもうお馴染みになりつつあるギルドマスター達一同+俺の友人達と会議をしている。


「そんで?わいらにあれをどないせいっちゅうねん!」


 フーキが頭を抱えながらテーブルに突っ伏す。

 あれと言うのはやっぱりあれだろうな。


 俺はここに来るまでに見かけた、空の城を思い出す。

 重力に逆らい天に向かって落ちる川、純白の外壁には虹色の光体があちらこちらで飛んでいる。

 そう、いつの日かロッテとの妖精ごっこで見かけた妖精の国アルルへルル。

 本来は妖精に導かれた子供しか見る事が出来ない伝説上の国。

 その伝説の国が、突如グラフ上空に浮かんでいるのだ。


 唯一の救いと言えば・・・。


「現時点ではあの地穿城(ちをうがつしろ)からのコンタクトは無いのだろう?」


 何やらワクワクした表情で答えるのは、我が愚兄†エンド・シャドウ†。


「だったら放置すれば良いんじゃい」


 イッカクさんが興味無さげに欠伸をする。

 そんな彼の体には、うっすらだが鱗が生成されている。

 詳しい種族まではわからないが、彼ら漁業組合は今回の転生で見事漁業される側になったようだ。


 そんなやる気の無さそうなイッカクさんに、ランズロットさんが眉を顰める。


「随分とやる気がないのだな?」

「だって空じゃろ?わしらは海が専門じゃい」


 まぁ魚だしなぁ・・・。

 話はそれで終わりとでも言うように、イッカクさんが武器のモリを持って椅子から立ち上がる。


「そういう事でしたら、城の出現と共にスカイフィッシュなるものが現れたとか」


 しかしメアリーさんの新たな情報に、そそくさと椅子に座り直した。


「話は戻りマースが、私としても放置で良いと思いマース」


 そう言いながら会長が目の横をトントンと叩く。


「現在はわしら小鳥の会が、イーグルアイを使って監視していマース」


 そう言いながら会長が鳥類のような瞳を細める。


 小鳥の会の皆さんは、今回の転生で鳥類に転職したらしい。

 彼らは文字通りの小鳥の会になってしまったようだ。


「もしも何かあれば私達が・・・ア」


 会長が唐突に素っ頓狂な声を挙げる。


「何かあったんですか・・・?」

「・・・城に動きがありマーシた」

「「「動き?」」」


 全員の疑問に答えるかのように、断続的にドシンという音が鳴り響く。


「なんだなんだ?」


 慌てて酒場を飛び出した俺は目を見開く。

 巨大な鉄球のような物が、街の至る所に落ちているのだ。

 中には直接当たったのか、気絶してる人もいる。

 そしてその鉄球は・・・アルルへルルから落ちてきている。


「これは・・・攻撃!?」


 しかもそれだけでは終わらない。

 驚く俺達の前で鉄球がパカリと横に裂け、小人がサザエさんのように出て来る。

 その腰には貧相な剣がぶら下がっており・・・。


「まずい!ここは私達円卓の騎士団に任せて、皆は市民の避難を!」


 鉄壁ともいえる防御力を誇る円卓の騎士団メンバーが、小人達の前に躍り出る。


「よし、円卓の防御ならかなり時間が稼げ・・・」

『『『ぎゃあああああああああああああ!?』』』


 しかし円卓の面々が小人の攻撃で宙を舞う。

 その光景に周りの人間が驚愕の表情を浮かべる。


「ば・・馬鹿な!?小人種は元来戦闘力が低い筈!?」


 あ、そっちに驚いてたのか。

 というか小人って弱いんだ・・・事実としてはとても強かったという事だろうか?

 どちらにせよこれはマズイ事になった。

 空からはアルルへルルの攻撃、地上には大量の強力なモンスター。


「うわぁぁぁ!?来るなぁ!?」


 大混乱になりつつある街、俺の近くからも悲鳴が上がる。


「大丈夫です・・・あ、なんだグレイか」


 俺は悲鳴の主を確認して、見なかったことにする。


「ちょ!誰か助け!?」


 追い詰められたグレイが駄々っ子パンチをしているが、南無。

 駄々っ子パンチは当たったようだが・・・ん!?


 グレイのパンチが直撃した小人は、きりもみ回転しながら壁に激突する。


「「「・・・へ?」」」


 その場の全員が目を丸くする中、誰かが呟く。


『おい、ステータスに-がついてるぞ!?』

『は?そんなばか・・・あれ、俺もだ』

『何これー!?私もなんですけど!?』


 混乱する一同を見ながらグレイは静かに立ち上がると、円卓が苦戦している小人に近づいてデコピンする。

 すると小人は小さく悲鳴をあげてHPをロストさせ・・・。


「あ・・・これ、俺の時代来たわ」


 グレイはキメ顔でそう言った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ