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BioGraphyOnline!  作者: ツリー
第3章 うたかたのゆめ
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第八十二話 性別青葉

「始めまち・・・青葉家に留学ちゃ・・・アズデス」


 嚙み嚙みの自己紹介からこんにちは、青葉大和改め謎の海外留学転校生アズです。


 波乱の登校を終えた俺は、一時フーキその他一名と別れ職員室に隔離。

 教師陣に詳しい説明を終えた後、自分のクラスで自己紹介をしています。


 俺は見慣れた教室と見慣れた生徒を見ながら、顔を真っ赤にして新しく新設されたアズちゃん専用席に着席する。

 相手が知ってる顔でも緊張する時は緊張するものだ、俺はチョーインドア派だからな。


『え!?ちっさ!飛び級ってやつ?』

『いやいや、合法かもしれんぞ?』

『何で椅子にあんなのついてるのかと思ったら納得、おかわー』


 クスクスという笑い声を耳に、改めて自分の席を見下ろす。


 アズちゃん専用席。

 背が小さいから仕方ないが、一番前の真ん中って俺に対する嫌がらせか何かか?

 机のサイズは普通だが、椅子に座りやすいように階段みたいなのが備え付けられているのがヒジョーに不愉快極まりない。


 新手のイジメですかねぇ?

 恥ずかしさで発狂しそうなのを心の中で押し留めていると、担任の簡単なホームルームが終了する。


「とりあえずいつもみたくフーキの所で駄弁るか・・・」


 俺はスッと立ち上がる。


『うわ!間近で見るとマジミニマム!エモー』

『明らかに高校生じゃないでしょこれは』


 しかしまわりこまれた!

 しかもこいつらクラスでも割とアウトドアな奴等じゃないか!


 弾丸のように発せられる質問にドギマギしながら答える。

 あんまり話すのが得意じゃないと悟ってくれれば良いのだが・・・


『あんまり緊張しなくて良いよ!私達こんなだし』

『そーそー、気楽に話しかけて』


 しかしこいつらは俺が緊張して口数が少ないと思っているらしい、ナンテコッタイ。


『ねぇねぇアズちゃんってどこの国の人なの?』

「ふぇっ!?」


 しまった!外国人設定にしたは良いが何処かまでは考えてなかった。

 青髪の国なんてあったっけ!?


「え、エーと・・・北米」

『大雑把過ぎてウケるー!北米の何処だよ!』


 俺はゲラゲラ笑うJk達から視線を外し、我がソウルメイトに目で救いを求めてみる。


「お、BGOのサイトにオモロイ書き込み発見、三人目の天使現るやて」

『おいおい、まじかよ!ついに三人目降臨ですか!』


 フーキはフーキで隠キャグループと馬鹿話をしている。

 いいな、俺もあっちのグループに行きたい。


 無言でフーキの方に行こうとするが、俺を囲んでいたグループに回り込まれてしまった。


『ダメだよアズちゃん、あいつはここら辺では有名なロリコンだから』

『噂ではショタコンも拗らせてるって聞いたよ?マジキモー』

『俺が聞いた話じゃあ小さければ何でもイケルとか、ないわー』


 俺はドンドン増殖するクラスメイトに顔を顰める。

 しかしどうやら俺の知らない所でフーキは順調に変態レベルを上げているようだ。

 まぁそれはそれとして、今のこいつらの発言は少々腹が立つ。


『例えホントーにロリコンデモ、言ってはイケナイ事、あると思いマース!」


 頬を膨らませながら怒鳴ると、俺を囲んでいたグループの奴らが目を見開いて驚いている。

 あいつをロリコン弄りして良いのは俺だけだ!


『ごめんごめん、悪く言うつもりは無かったんだって』

『古川君はロリコンだけどマジメで良い奴だから安心して!』

『・・・あいつまさかもう手を出してたのか、マジないわー』


 本当に悪気は無かったのか手を合わして謝ってくる。

 クラスメイト達は『アズちゃんはジャスティス系なんだね』と、適当に勘違いしてくれたようだ。

 まぁ今回ばかりは大目に見てやろう。

 だが最後のやつ、お前はダメだ。


しかし俺のクラスって実はこんなに騒がしかったんだな、今まで人と関わらないようにしてたから気が付かなかった。

 ・・・そういえばメアリーさんも同じクラスなんだっけ。


 俺は教室をグルリと見渡すが、それらしき人は見当たらな・・・ん?

 

 教室の端っこ、主人公席で風景と一体化しているおさげ髪を発見。

 メアリーさんは本当にそこにいるのか?というレベルで一体化しており、知り合いの俺でも注意深く見ないと気づけないレベルだ。

 何あれ凄い、だがまぁおかげで何で今まで俺がメアリーさんの存在に気が付かなかったか理解できた。


 俺がメアリーさんの特殊スキルに舌を巻いてる間も、周りのクラスメイト達の会話は続く。


『そういえば今日の二限目いきなり体育らしいよー?』

『うわ・・・夏休み明け一日目から?しかも水泳?』


 先程の雰囲気から一転、クラスメイト達はマイペースに二時限目の授業を確認しだす。


『なんでも体育のキモ原が、休みの期間補充出来なかったJK成分補給したいとか・・・あ、やば!』


 クラスメイトはそこまで言ってハッと俺を見る。


「いや、それは普通にキモいな」

『え?怒らな・・・なんかすっごい流暢に喋らなかった?』

「ワタシニホンゴワーカリーマセーン」

『そ・・・そっか』


 いかんいかん、思わず素が出ちまった。

 でも仕方ないだろ?何だその理由?事実なら普通に職員免許剥奪されそうだけど。

 

 クラスメイトは俺が怒らなかった事に安堵の息を放つと、俺の右手を掴む。


『というわけで!アズちゃんを更衣室にご案なーい』


 女生徒がそう言いながら俺を引っ張ると同時に、今度は男子生徒が左手を掴む。


『は?いやいや、アズっちは俺達の方でしょ?こんな可愛い子が女の子なわけないじゃん?』


 刹那、男子生徒と女子生徒の間に火花が飛び散る。


『例えアズちゃんが男の娘だったとしてもアンタみたいなのと着替えさせれないんですけどー』

『それどういう意味?まじないわー』


 先程までの和気あいあいとした雰囲気から一変、少しでも変なことを言えば爆発しそうな雰囲気に変わってしまう。

 

 普段なら黙って関わらないようにする所だが、しかし俺はこの状況に既視感を覚えていた。

 そう、あれは俺がこの学校に入学したばかりの時。

 今回と同じく体育の授業で着替える時、クラスメイトが言い争いを始め・・・


 そしてその時と同じように、一人の男がスッと立ち上がる。


「せやったら丁度ええ場所があるやん?」


 フーキがそう言いながら、元俺の席を指差す。


『『『ああ、青葉専用部屋か』』』


 ああ、どうやら小さくなっても着替えは個人スペースのようだ。


    ◇

〖修復率五〇%〗


 聞き慣れた雑音と共に瞼を開く。

 あの夢はどのくらい前の出来事だろう、思い出すと胸が熱くなる。


 胸の前で手を組むと、大事そうに記憶を頭にインプットする。 

  

「なつかしい ゆめ」

「なんの夢でありますか?」

「わっ」


 少女は自分の上に馬乗りに乗っている小さいフワフワの声に驚嘆の声をあげる。


「ロッテ?」

「いかにも!ロッテ・リアであります」


 ロッテはドヤドヤと少女に顔を近づける。


「なんで?」

「魂だけの存在だったアタシが何故実体化しているか?でありますか?」


 ロッテは「はぁっ・・・」っと溜息を吐くと、部屋の片隅を指さす。

 そこではひょろ長い男性が鼻歌混じりに、何かをいじくっている。


「あれは悪魔界の王ヴァンプ、このゲーム世界最強の存在の一角にして。生きる伝説であります」

「あくまお う?」


 少女は楽し気にガラクタらしき物を設置するヴァンプに首を傾げる。

 自分の知る限り、魔王は幼女でさーたんという名だった筈だが・・・


「それで、この空間は悪魔王のせいで軽い魔力暴走状態でありましてね、まぁ簡単な話・・・」

「ロッテが じったいか できる程 に 空間が壊れて る?」

「・・・そういう事であります」


 ロッテが険しい表情で悪魔王を睨みつける。

 間接的にとはいえ実体化させてもらっているのだから感謝する所じゃないのだろうか?


「そんな事より悪魔王が機嫌を損ねる前に速くここから逃げるでありますよ」

「にげ る?」

「そうであります!あんなのに捕まったら面倒な事に・・・」

「ワーッハッハッハ!どのような面倒事に巻き込まれるのかなぁ?」

「ギャー!でたでありますー!?」


 突然ロッテを持ち上げたヴァンプの口角が吊り上がる。


「まぁそう急ぐでない、折角なので我の話を聞いていくが良いぞ!」


 そう言いながらヴァンプは一つの鏡と針を片手にペラペラと喋り出す。

 そんな様子を何か「元々アタシのでありますのにぃ!」と、何故かハンカチみたいな布を噛むロッテ。


「であるからして、我は今日よりこの二つのアイテムを使って・・・」


 ・・・今日の冒険はどうやらここまでのようだ。



〖修復率58%〗

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