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BioGraphyOnline!  作者: ツリー
第3章 うたかたのゆめ
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第七十八話 まったく、とんでもない変態さんですね!



「いや、悪かったって、本当に悪気は無かったんやって」


 フーキの家からこんにちは。

 本日寝ぼけたフーキに襲われた俺は、現在フーキのアパートに籠城中です。

 

 ちなみに間一髪の所でフーキを窓の外に放り出したので、俺の貞操は無事だ。

 ドアの向こうでは今もパンツ一丁のフーキが騒いでいるが、ここは心を鬼にしなくてはいけない。


「寝ぼけていたとはいえ人の体中をまさぐったんだ、これぐらいの罰は軽い方だ」


 俺が心を鎮めて瞑想していると、突如ドアを殴るような音が響く。

 なな!?もしかしてやりすぎちゃった感!?


 ドアから距離をとりフーキの布団から不安気にドアを見ていると、鍵がかかっている筈のドアがガチャリと開く。


「わいのアパートの扉はね、軽い衝動で鍵が外れるんよ」

「欠陥住宅じゃないですかヤダー」


 フーキはやれやれといった様子で部屋に入ると、適当にその辺に置いてあった服に手を伸ばす。


「あ、それまだ乾いてないぞ?今着れるのは学校の制服ぐらいだ」

「なんでわいの服勝手に洗濯しとるん!?」


 フーキはしぶしぶと学校の制服を羽織る。


「それで?なんでわいの家に?・・・別に怒っとらんからそこから出てきいや」

「ラインで送っただろ?フーキの子供服が欲しかったんだよ・・・いやぁ、何か慣れてきたらフーキの汗の匂いも別に悪くないなった!?怒ってないって言ったじゃん!?」

「それとこれとは話が別や!」


 布団の中でもぞもぞしていると、フーキに無理矢理引っぺがされてしまった。なんという理不尽。


「んで目的の物をゲットしたついでにフーキに少しばかり礼をしようと思ってな」

「それで家事をしとったってわけや・・・その服確かアレと同じ場所に保管しとったような・・・」

「そういう事」


 何やら顔を青くするフーキを無視して話を進める。


「んで一通り終わったからフーキの様子を見ようとしたら布団の中に無理矢理いれられて」

「わいは大和の体をまさぐりまわったと?」

「そういうこ・・・寝てた割にまさぐった記憶があるのか?」


 何かを思い出すように手をワキワキさせるフーキをギロリと睨むと、フーキがしまったといった顔をしている、こいつは確信犯ってやつか?


「いやちゃうねん、寝ぼけとったから夢やと思って・・・それに大和から何ていうん?女性の温もり的な・・・わかった、わいが悪かったからマジでドン引きした表情やめてくれへん?」


 うーっわ!フーキのやつマジうーっわ!

 これは友としてやはり通報しておいた方が良いんじゃないか?


 ドン引きしながらフーキを見ていると、フーキも負けじと俺をガン見している事に気が付く。


「・・・何?」

「いや、ほんまに小さなったんやなーって・・・ちょい待ってや!無言でスマホ構えんといて!?」


 いやだってお前今の状況と今までの会話とお前の趣味を全部ひっくるめてみろ、完全にアウトだよ?


「フーキはまったく、とんでもない変態さんですね!」

「面目次第もありません!」


 満面の笑みで言ってやるとフーキが土下座しだしたので、良い加減ロリコン弄りもやめてやろう。


「まぁそういう訳でさ、小さくなって着る服に困ってたんだよ、悪いけどこれ借りてくぜ?」

「ああええよ、別にもうわいには必要無いもんやしそのまま処分してもええで」


 何やら悟った表情を浮かべるフーキ。

 それはいつも俺と会話をしている時のフーキそのままで・・・ 


「なぁ?俺がリアルで小さくなったってのに随分と冷めた反応だな?」


 正直俺かどうか疑うとか、気味悪がったりされたりすると思ったが・・・


 俺の問いかけにフーキは「んー?」と首を傾げる。


「まぁ大和やしなぁ・・・」

「なんだよそれ、答えになってないし・・・でもそっか・・・そっか・・・」


 フーキの答えになってない答えに思わず笑みを浮かべる。


「よし、何か元気出て来た!今日はサンキューな!」

「お・・・おう?元気になったようで何よりや」


 何やら挙動不審になるフーキにニヤリと笑みを浮かべ、俺は玄関で靴に手を伸ばす。


「あ、せやった!ちょい待ってや大和」


 しかし俺が座りこんで靴を履いていると、フーキから待ったがかかる。


「何だ?今日はもう大分遅くなってきたしそろそろ・・・」


 俺は思わず「帰る」という言葉を飲み込んでしまう。

 そんな俺の視線の先では、とあるゲームのパッケージを持ったフーキの姿。


「そ・・・それはまさか・・・!?」

「来月発売予定のゲームの・・・先行プレイ券や」

「当選者10名のあの!?」

「その通りや!しかもこのゲームは2人プレイが出来る・・・この意味わかるやろ?」 


 俺は急ぎ極悪な笑みを浮かべるフーキからプレイ券をひったくり、部屋に置いてあるゲーム機に挿入する。


「・・・」

「ほら!何ボサッと突っ立ってんだ!さっさとやるぞ!」

「せ、せやね・・・」


 若干引かれてる気がするが無視だ!ゲーマーとしてこれは譲れない。

 

 フーキは俺の気迫に若干押されながらも、どっこいしょと床に座る。


「・・・大和?なんでわいの膝の上に座るん?」 

「何でってそんなのフーキの部屋に椅子が見当たらないからだが?」


 何を当然の事を?

 今までの罰も込めて、こいつには今日一日椅子になる罰を与えるとしよう。

 

 若干硬くなっているフーキを無視してゲームのチュートリアルを進めていると、敵シンボルと接触する。


「あ、おいフーキ、何やってんだよ!?お前チュートリアル戦闘で負けるとかありえねぇぞ!?」

「そ・・・それはそうなんやけど大和が動きすぎて・・・」

「はーっ!?人のせいにするとかゲーマー失格ですねぇ!俺の動きが気になるなら両腕でしっかりホールドしとけよ!」

「いや、それは・・・」

「はーやーくー!」

「・・・はい」


 結局この日、何故かよわよわなフーキのせいで、ゲームクリアをする事が出来なかったアズなのであった。


  

            ◇

〖修復率12%〗


「・・・?」


 どこからか聞こえてくる機械的な声に小首を傾げる。


「何ボーっとしてるでありますか!こっちでありますよー」


 少し前を飛ぶ光体の声にハッと我に返る。

 今はそんな事を気にしている場合じゃなかった。


 少女は家の隙間をグルグルと飛び回る光体に集中する。 

 少しでも目を離せば見失ってしまいそうだ。 

 ・・・正直な話、何で追いかけているかは自分でもわかっていないが、勘という物だろうか?アレを失ってはいけないと心の中で何かが叫んでいる。

 驚きながら空飛ぶ自分達を見ている人達を無視して、少女は光体を追いかけながら質問をぶつける。


「ここ どこ」

「ここ?ここは始まりの世界、現実の世界、終わる世界、全てが交わる混沌の世界であります」

「・・・?」


 自分が聞きたかった事とは違う、意味不明な台詞に少女は更に首を傾げる。


「残念ながらアタシには貴方にとっての明確な答えを教えることは出来ないでありますが・・・」  


 光体はそう言いながら急に旋回すると、少女の胸の中にスッと消えてしまう。


「けっきょ く なにも・・・」


 少女は光体が消えた辺りを触りながら、周りの風景に視線を向ける。

 

 少しボロボロな建物と小さな広場。 

 広場には木漏れ日が溢れ、小河のせせらぎが子守歌のように鳴り響く。

 

「ここ 知ってる・・・?」 


 記憶に無いが、知ってる場所。


「かてい ここは 忘れた場所・・・・くぁっ・・・」

 

 少女は現在の状況を頭の中で再整理すると、小さく欠伸をする。


「とっても ねむい」


 フラフラといつもの場所に移動した少女は重い瞼に逆らう事が出来ず、静かに意識をシャットダウンしていく。


「なんとかなる さ」


〖修復率23%〗

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