第七十一話 城スタートと相成りました
「どうも皆さんこんにちは、アズです」
本日はタイトル通りの城スタートと相成りました
何で城スタートかって?そうだな、そこは俺の自己紹介もかねてあらすじ風に言ってみるとしよう
オレは高校生ゲーマー、青葉大和。幼なじみで同級生のフーキとBGOで遊んでいたんだが、 宝物庫で怪しげな日記を発見した。
日記を見るのに夢中になっていたオレは、背後から近付いて来る、偽王子に気付かなかった。オレはその男に追い詰められ、気がついたら体が縮んでしまっていた!!
とまぁここまで言っといてなんだが悪ふざけはよしておこう、生憎と今はそんな元気は無い
「しかし最近攫われる事が多くないか?」
思えばドラゴンから海賊まで、色んなやつに攫われている気がする
俺はどこぞの桃姫か?だとすると助けに来るのは色々と出番の多い配管工あたりだろうか?
いや、俺の場合はフーキなんだろうな
なんやかんやで毎回あいつが助けに来てるし、すっごーい!フレンズを持ったものだ
やれやれと溜息を吐きながらフーキ棒を磨いていると、どこからか子供の混ざったような声が聞こえてくる
『君は独り言が多いね、多いかな?多いよね!』
「ここに閉じ込められてはや数時間、流石に独り言も多くなるってもんだよ」
『そういうモノかい?綺麗な部屋だと思います、思うんだがなぁ』
「綺麗な部屋だという事には異論は無いぞ?」
俺は部屋の中を一瞥する
天蓋付きのフカフカベッド、豪華な装飾が施されたプチシャンデリア、美味しそうなお菓子
クローゼットの中には伝説級の装備アイテムに、机の中はベリーレアの宝石等々
まるでどこぞの勇者か王族の部屋といった所だろうか
「ただ問題点が多すぎるんだよ」
『問題?問題点?』
不思議そうな声を出す混ざった声に俺は指を三本立てる
「まず一つ、この部屋からはいかなる方法でも脱出できず、ログアウトどころか自傷も出来ない」
壁は破壊不能オブジェクト、窓の外は局所的な未実装エリアにて侵入不可
あげくご丁寧に外部との連絡も封じられているようで、つまり監禁状態なのである
『それは困ったね、でも僕は私はアズと話せて楽しいよ?』
「そこが二つ目だ」
『??』
俺は頭に?でも浮かべてそうな声を出す混ざった声に頭を抱える
この部屋に入ってからというもの、いついかなる時でもこの子供の混ざった声が聞こえてくるのだ
なんだ?ここは呪われた部屋か何かか?
まぁおかげで退屈はしていない
誰かに見られたら何もない空間でブツブツと喋るヤバイやつになるが、生憎とここに来るやつなんていない
「そして最後の一つだが・・・・」
『ゴクリンコ・・・』
「ここにある物は基本ロックが掛かってて持ち出す事はおろか、触る事すら出来ない」
そう、いくらフカフカなベッドがあっても寝る事を許されず
いくら豪華なシャンデリアがあっても電気を消す事は出来ず
美味しそうなお菓子は食べる事も出来ずに良い匂いを蔓延させ
伝説級のアイテムはただ見ている事しか出来ない
「俺は!どこぞの!修行僧かっつの!ギャフン!?」
思いっきりフーキ棒を壁に投げつけたら、何かに反射したかのように跳ね返って来た
俺は恨みがましい視線を壁に向けながら頭をさする
ちなみに壁には傷一つない
「流石の理不尽さに俺の精神力がストレスでマッハなんだが?」
『そんな時はね?僕等と、私達とお話すれば良いと思うな』
「オーケイ、9文字でまとめろ、俺は謙虚だからな」
俺のセリフに子供の声が何を言おうか悩みだし、場に静寂が訪れる
ちょうど良いからこのまましばらく黙らせておこう
しかし・・・
「はぁ・・・頼みの正義のヒーローも流石に今回は厳しいだろうな」
まず俺の異変に気が付くか?まぁそれに関しては一日もログアウトせず、連絡もしなかったら気づくかな?
仮に気づいたとしてこの城に助けに来れるか?そもそもここに居るって気づけるのか?
今までは相手が悪党だったから正義の名のもとに好き勝手していたが、今回はそうじゃない・・・まぁ本当は絶対的に悪なんだが・・・それをフーキが知るすべはないし
今回の相手である第一王子・・・グランはフーキを特別恨んでそうだし、最悪賞金首からのゲームプレイ不可になりかねない
『あ、!ねぇねぇ!』
このどんどん包囲されている感じ・・・まるで将棋だな
だとすると後は俺が自力で脱出する方法だが・・・
『ねぇったら!ねぇ!』
扉を思い切り殴るがビクともせず、鍵を入れようとしたらアクセス不可オブジェクトの文字
「だー!何でこんなに厳重なんだよ!!」
『ねーったら!』
「うるさいなぁ!あと9文字制限超えてるぞ!」
『あっ!そうだった・・・じゃなくて外!外だよ!』
「そと~?」
怪訝な表情を浮かべながらも、言われるがままに窓から外をのぞく
窓の外には、そこら中に松明を掲げる人、人、人
その中には羊の紋章が描かれた旗とかも存在し・・・
「なんだあれ?」
『シープ家がお前を助けに来たのであろう、ありますね』
シープ家?っていうとムーたんか!
なんでムーたんが!?どうやって気づいたんだ!?
というか明らかにこの国に一番逆らっちゃいけない立場の人間だろうに!
俺がアタフタしていると、扉がノックされる
これは手遅れな感じかなぁ!?




