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BioGraphyOnline!  作者: ツリー
第二章 割れる大地と海の悪魔
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第七十話 兵士の日記

 

 本日グラフは舞踏会

 きらびやかな舞台、綺麗な曲に美味しいディナー


 しかしそんな物は一部の貴族にしか関係なく、今日も今日とて兵士達は勤勉に励んでいるようで・・・


「やっぱそう簡単には行かないよなぁ」


 明るく照らされる舞踏会場とは裏腹に、薄暗い通路に兵士の笑い声が響く


『聞いたか?今アズリエル様が舞踏会に参加してるらしいぞ?』

『なんだと!?あーあ、今日が警備の日じゃなけりゃこっそりお姿を拝見しに行くってのに』

『ばっか!むしろ警備だから会える可能性が高いんだろ?』

『なるほどな、じゃあ会場の方を重点的に警備・・・おい、今そこに誰かいなかったか?』

『なに!?こんな時に賊でも入ったか!?』


 立ち話をしていた兵士達が槍を手にする

 こういう時どうすれば良いんだったか・・・確か動物の真似だったよな・・・


「キキッ」

『『なんだSARUか』』


 兵士達は安堵の息を吐くと槍を肩に乗せ談笑を再開する

 城の警備って意外とゆるかったりするのだろうか?


「なにはともあれ・・・ここは舞踏会エリア外だからな、見つかったら即アウトだ」


 しかし思ったよりもレベル1縛りのスキルアーツ縛りはきついな

 ドレスの袖で頬を拭うと思ったよりもベチャッとなってしまった


 スタミナゲージも常時減少してるし疲労感がいつもの非じゃない

 せめてどちらか片方縛りだったらもうちょっと楽だったんだが・・・無い物ねだりをしても仕方ないか


「見た感じ今の兵士達は普通だったな、これはドルガさんの勘違いだった可能性も出てきたな」


 とは言っても、クエストを受けたからには何かしらの成果をあげたい


 まずは怪しい所に目星をつけるとして・・・


「やっぱあそこが怪しいよな」


 窓から身をのりだしテラスに踊り出た俺は、学生時代に遠目でしか見る事が無かった部屋を目指して全速前進する


 明るい場所を通るのは発見されるリスクが高い、この道なら光源が松明ぐらいしかないがそこは学生時代に培った土地勘があるから迷う事も無い


 暫く兵士達を避けながら道なき道を進んでいくと少し頑丈な扉が見えてくる


「ふむ、やはりここが怪しいな」


 俺は宝物庫の扉を見ながら確信を持って頷く


 断っておくがあくまで調査の為だ、こんな厳重な扉があれば調べるのは当たり前

 決して宝物庫なんだからレアアイテムがあるんじゃね?とか、私欲が混じったわけでは断じてない


「まぁ鍵がかかってるし開けられないんだろうけど・・・お?」


 何と無しに扉に手を掛けると、大した抵抗もなく扉が開いていく


「ラッキー!見張りが鍵でもかけ忘れたか?」


 高鳴る鼓動にわくわくしながら中に潜入する


 宝物庫の中にはいかにも高そうな物が大量に置いてある


「ほほう・・・これはまた随分と豪華な・・・っち!所有者制限がかかってる」


 手始めに高そうな装飾品を手に取ろうとしたが不思議な力に阻害されてしまう


 しかしここは宝物庫、絶対何かある筈


 不思議な力が及ばない所を手探りで探しながら宝物庫の中を移動する


「宝物庫といえば伝説の剣とか杖とかが定石だよな、なら金目の装飾に拘らず・・・」


 俺は武器に目星をつけて宝物庫の中を物色する


「お!なんか普通の見た目だが剣発見!」


 宝物庫に似つかわしくない、少し小汚い剣を発見

 見た目はあれだが、宝物庫にある剣がただの剣なわけないよな!


 剣を持っている甲冑の置物から強奪しようとした所で、ヌチャっという嫌な音を耳にする


「・・・ぬちゃ?」


 手には赤い物が付着し嫌な臭いが充満している

 見ると甲冑の置物と思えたそれは無残にも首から血を流す兵士の亡骸だった


「わーお・・・まさか本当に手掛かりがあるとは、南無三」


 とりあえず両手を揃えて合掌しておく


 しかし見れば見る程ヤバイ死に方してるな


 兵士の亡骸の顔は恐怖に彩られたまま硬直しており、首には自らが掻きむしったであろう爪痕が見える


「自殺・・・にしては死に場所も死に方もおかしいか」


 まじまじと死体を観察していると胸のあたりに光る物を発見


<兵士の日記を手に入れた!>


「なるほど、ここでホラーとかサスペンス特有アイテムを出してくると」


 血に濡れた表紙に手が触れないように中を確認する


『龍年〇月〇日、ついに我らが国に王子が産まれた』


 BGOで龍年というと・・・少なくとも十年以上前だった筈だぞ?一体何年分読まされるんだ?

 しばらくたわいもない第一王子の話が書き連ねられ、徐々に第二王子の話が加わっていく


『龍年〇月〇日、第二王子には困ったものだ、今日も給仕に隠れておねしょの始末をしていた。少しは第一王子を見習ってもらいたいものだ』


 おねしょか、あの変態にも可愛い時代があったんだな・・・まぁペド野郎の事はどうでも良いや

 王子二人のたわいもない成長記録を斜め読みしていく


『平年〇月〇日、隣国にて超大型魔獣の出現が確認された。勇敢にも第一王子が討伐隊を編成、本日出発された。第二王子は最後まで反対していたが、兄を見習って欲しい物だ』


 何か読んでる限り第二王子の扱いひどくないか?性癖でも露見したのか?


『平年〇月〇日、かの大型魔獣は討伐されたが、第一王子が戦死したとの報告を受けた。第二王子は人を率いる人間とは思えない、この国はこれからどうなってしまうのか』


 しばらく国の未来を憂いた文章が続く


『零年〇月〇日、第一王子が帰ってきた!第二王子は最近学園にえらく執着されて気持ち悪かったし、これでこの国の未来は安泰だ!』


 あのペド野郎が学園に執着?生徒は無事だったのだろうか?


『零年〇月〇日、何かがおかしい、第一王子はあのようなお方だったか?あんな・・・あんな気味の悪い・・・いや、こんな発想は不敬か』

『零年〇月〇日、とんでもない光景を目にしてしまった!第一王子が兵士に向けてちーとこーど※※※!と叫ぶと、兵士が魔獣に変化してしまった!最近怪しい赤髪もよく出入りするようになった、一体第一王子に何があったのだ!?・・・最後に第一王子と目があってしまった気がする』


 第一王子完全に真っ黒じゃないか


『零年〇月〇日、決定的証拠を見つけてしまった、第一王子が仮面をかぶり赤金の鷲の副マスを名乗っていたのだ!これはもう言い逃れ出来ないだろう!はやく国王に報告せねば!』

『失敗した失敗した失敗した!王子はまるでこちらの手を読んでいるかのように動き、逆にこちらの立場が悪くなってしまった!王子のあの目・・・あれは獲物を見つけた眼だ!しばらく安全な場所に隠れるとしよう』

『最近誰かに見られている気がする、そいつはいつも同じくらいの場所から俺を見つめている、見つめているだけだが不気味な事このうえない・・・・それにしても腹が減って来た、だが食べる物も無いし・・・最近からだ あつい』

『かゆい かゆい みはり きた ひどいかおなんで ころし うまかっ です。』

『かゆ・・・うま・・・』


 兵士の日記はその言葉を最後に、真っ白に染まっていた

 ・・・バイオハザード!!!


「え?何?この死体動きだしたりしないよね?」

「大丈夫ですよ~この兵士は失敗品ですからね~ただの死体です」

「ああそうなんですか、なら大丈夫ですね、じゃあ俺はこれで」

「おおっと!これを見られたからには帰すわけにはいきませんよね~?」


 何事も無かったかのように扉を出ようとした所で、第一王子・・・もといグランが日記を片手に笑みを浮かべる

 くそっ!やっぱ見逃してくれないよな!


「いや~、実験の途中経過を見る為にわざわざ泳がせておいたのですが・・・これは失敗でしたね~」


 ニコニコと笑顔を浮かべるグランの手の上で、日記がひとりでに燃えていく


 明らかな高レベル、このままレベル1縛りで勝てる訳ないし・・・相手はチートコードを使うらしいし・・・


 俺は兵士の剣を振りかぶ・・・ろうとして重さでよろめく


「おやおや?貴方はそんな戦い方をするお人でしたかね~?・・・少なくとも剣を持つ筋力も無いようですよ~?」

「余計なお世話だこんにゃろう」


 重量に任せて横薙ぎに剣を一閃するが、剣の腹を掴まれて止められてしまう


「ワタクシとしてはもう貴方に用は無かったんですが・・・本当に縁があるようですね~サトミさん?」

「・・・はぁ?」


 こいつ・・・なんでここでサトミ姉の名前を?

 確かに俺の現在の見た目はサトミ姉に近い物だが・・・サトミ姉のリアルの知り合い?

 いや、こんな悪趣味な野郎と知り合いだとは思いたくないし、最近ストーカーに合ってるっぽい事言ってたからこいつが犯人じゃないか?

 ・・・どちらにせよ後もうちょっと時間を稼ぎたいな


 思考を巡らせる俺の首をグランが掴んできたのでツバをかけておく


「・・・随分と下品になられたものだ~」

「元々だよストーカー野郎」


 グランは「ストーカー?」と首を傾げる


「違ったか?最近リアルで付け回してるやつだろ?」

「ストーカーなんてそんなそんな・・・今のワタクシは精神の大半をゲーム内に取り込んでいますからね、リアルで貴方に会う事は不可能ですよ」


 ストーカーでは無かったか、まぁヤバイやつに変わりはない


「しかし折角お会い出来たのだ~・・・ここはワタクシの実験台になってもらいましょうかね~?」


 0時を告げる鐘の音が鳴り響く中、グランが極悪な表情を浮かべて片手を振り上げる


「チートコード!※※※※ぇ!?」


 しかしグランのチート宣言は途中で困惑の声に変わる


「悪いがシンデレラタイムが終わったみたいでねっと!」


 小さくなって自由を取り戻した俺はインベントリから包丁を取り出しグランの胸元に突き刺す

 不意打ちからのクリティカル、いくら高レベルのやつでも膝をつく程の代物だぜ?


 ドヤ顔でグランを見下ろすと、グランは呆然とした表情で俺を見上げている

 ・・・少し驚かせすぎたか?


「お・・・お前はアズ!?いや、しかしその魂は・・・因果律の果てに世界線が書き換わったとでも言うのか!?」


 グランがぶつぶつと呟きながら頭を抱えている

 こいつ厨二病こじらせすぎだろ!?馬鹿兄と良い勝負だぞ!?


 まぁ今はそんな事はどうでも良い!とりま逃げ・・・・


 突如システムダウンしたかのうに不自然に暗くなる視界の中、グランに何か気味の悪い物を見るような視線を向けられながら意識を手放すのであった


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